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祭事

第121話

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 アー君が騎士様に色々お願いして、騎士様はその色々を全部叶えた。

 結果

 我が家には部屋が一つ増えた。
 アー君の承認がないと入れないその部屋は、騎士様がこれでもかってぐらい厳重に結界に結界を重ね、カーシャさんが大暴れしてもびくともしない空間が完成。
 朝から晩までアー君はその部屋に籠って何かをしている、何をしているか聞いたら「高ランクダンジョンに挑むための修行」と言われた。

 魔力枯渇しないか心配だったけれど、そこは騎士様の御子、魔力量は計測不能、獅皇さんの血も混ざっているから将来的にはレイアさんレベルも夢じゃないそうな。
 僕としてはいつまでも可愛いアー君でいて欲しいけどね。

「うーん、完成したけど味はどうかなぁ? ねぇドリちゃん」

 僕の前には巨大な薪の形をしたケーキ。
 女神様にリクエストされた「ブッシュドノエル」なんだけど、パーティー用と言う事で張り切って作ったらやり過ぎた。
 全長1mはあるよね、これ、どうしよう。
 味の均等とか大丈夫かなぁ、中央とかもうクリームオンリーで胸焼けしそうだな、うん、やり過ぎた!

「イツキ」

 横では涎を垂らさんばかりの神薙さんと子供達、卵はシャムスの頭の上でぴょこぴょこ飛び跳ねている。

「試作品は他にもあるので、並べるまで待ってもらっていいですか?」
「待つ!」
『待つの!』

 はしゃぐ皆の横で一人マシュー君が屍となっている。
 ごめんね、朝からずっと料理手伝ってもらってたもんね、そりゃ瀕死になるよね、せっかくのお休みの日になんかごめん。

 ブッシュドノエルをテーブルの中央に置き、他にもパスタやピザなどを並べる。
 うーんなんだろう何か違うなぁ、味は一級品なのは間違いない、ドリちゃん作だからね。

『ほぁぁぁぁ』

 シャムスと三匹が崇拝するように拝んでいるのは「コカトリス」の丸焼き、どうしても鶏の丸焼きが食べたかった女神様が作った新しい魔物。
 自分の欲望のために新しい魔物生み出す女神様ってどうなんだろう、ファンタジーでお馴染みのコカトリスだけど、確か石化作用持っていたような気がする。
 
 最初は十数メートルの巨体だったけれど、調理するのに解体しなきゃいけなかったので丸焼きを愉しみたかった女神様があれこれ悩み、最終的に炬燵サイズの大きさまでに調節された。
 僕はもうその辺に関しては何もツッコミを入れない、そもそも鶏の丸焼き料理が鶏で作っているのかも怪しいけど、そこはもう無視で、ここは異世界、正解を知る人なんていないんだ!

「試作品だからね、味の感想聞かせてね」
「うんうん」
「まま、まま!」
『ままー』
「あおーん」
「はいどーぞ」

「「いただきます」」

 襲い掛かる勢いで食べ始めた。
 量作ったけど数分で終わったらどうしよう。

 ピザも女神様のリクエストで作ったけど、クリスマス仕様にしたいよね、星とか、ツリーの形のピザってどうだろう、あとパンケーキも間にクリームを入れて重ねてタワーにしたり、うんうん。

「ブラン、焦って食うな、詰まらずぞ」
「むぐむぐむぐむぐ」
「きゅるるるる」
「キーちゃんあれ食べたいの? すみません、丸焼きってどこから捌けばいいですか?」
「もごもごもごもご……ぷは、待ってろ、私がやる」

 水で食べ物を流し込んだアー君が立ち上がった。
 料理ばっかりじゃなく飲み物も考えなきゃなー、大人はシャンパンとかだけど、子供はなんだろう、炭酸系のジュースとかかな?

「さて、切り口が冷えては意味がないから、ただ斬る、出来るかな」

 呟きながら空に向かってアー君が両手を掲げた。

「氷刃」

 刹那、宙に出現した数百の氷の刃が丸焼きを切り刻み、お皿を持って待機していたドリアンによってつつがなく運ばれていく。

「アー君凄いねぇ」
「んー、調節が難しい、断面冷えてなかった?」
「元々冷めてたから大丈夫だよ」
「そっか」

 にぱっと笑ったアー君は鶏肉を食べる為に席に戻っていった。
 僕は味見で胸焼け気味なんだよねぇ、酸っぱい物とかさっぱり系食べたいなぁ、レモンタルトとかお寿司かな、あーあー、シャムスのお腹があんなに膨らんで破裂しそう。

 と思ったら一瞬で引っ込んだ。
 シャムス、君は一体何を覚えたの?
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