神様のポイント稼ぎに利用された２

ダンジョン探検

第79話

　嘘のような本当の話。

　持ってきた食糧が食い尽くされた。
　魔物食べ放題は楽しかったらしいけど、手作り料理に飢えていた神薙さんはいつも以上に食欲を発揮し、美味しい美味しいと言いながらおやつの一つも残さず平らげた。

　タイガの分も食べられちゃった……。

　食後のお茶を飲み終えた後、神薙さんはテントに入っていって現在仮眠中、多分テントで寝てみたかったんだろうなと推測する。
　僕は食べるおやつもなく、敷布の上で緑茶を飲みながら暇を持て余していた。

　騎士様はふらっとどこかへ行っちゃったけど、周囲はもふもふズが警戒してくれている。
　卵はスラちゃんが頭に乗せてぴょこぴょこ僕の周りをお散歩中、平和だなぁ、僕もお昼寝しようかなぁと思った矢先、それは現れた。

　3mはあるだろう巨体を持つ、二足歩行の猪頭の魔物。
　獣人とは多分違うんだろうな、ゲームに登場する魔物百科事典があれば絶対載ってそう。

　無理して何か起きなくてもいいのに。思いながら溜息を付きつつお茶セットと敷布を片付ける。
　テントは防音加工されてるから中に居ればこの騒動には気付かない、でも戦闘が始まったら埃は立つだろうからね、すぐまた出せるし。

「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA」

　魔物が雄叫びを上げ、こちらに突進しようとした次の瞬間。


　バグン


　奇妙な音と共に魔物の頭が消失した。

　轟音を立てて地面に倒れた魔物の身体が光になって消失し、アイテムが一つ残された。
　ダンジョンにも女神様の趣味がしっかり反映されている……こんな細かい所に趣味を採用していないで、もっと真面目に世界の管理してほしい、いやそれよりも、僕はあの食べ方を知ってる。

「卵、ちゃん？」

　ぽんぽん！！

　褒めて褒めてと言わんばかりに卵が跳ねる。

　距離あるよね？
　魔物まで十メートル以上の距離あるよね！？

　一口でっか！

　シャムスがせっせと愛情注いだこの子、卵からは全く出てこないけれど、神薙さんと同じ凶悪な食べ方をする事が判明した。
　シャムスちゃん……何育てたの？

「ぐるる」
「持ってきてくれたの？　ありがとう」

　もふもふズが回収してくれたアイテムを受け取ると毛皮だった。
　お約束の鑑定能力とかあったら鑑定とか出来たんだろうけど、あいにく僕持ってないんだよねー。
　女神様が僕にくれたのはBL人生を濃く楽しむスキルばっかりで、心熱くする冒険とかバトルとかは全く無縁、元々の才能もないと前に言われた。
　
　テンプレや王道好きなくせに、どうして盛り込んでくれなかったんだと一度聞いた事がある。真顔で「BL展開の方が好きだからに決まってるだろ」と返されました。