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刀国学園

第70話

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 宴の席でびっくりな事が判明した。
 何がって女神様、騎士様にいいとこ見せるチャンスなのに出張らないからおかしいなーと思ったら、ずっと召喚勇者を監視と言う名の鑑賞をしていたんだって。

 餓死一択しか残されていなかったあの勇者、今はもうこの世界にいないそうな。
 死ぬの早っ!と思ったら、女神様を満足させたので褒美に地球に帰還させたらしい、そう言うのありなんだ。

「今日は最高だった、良い物をみせてもらったぜ」

 おしゃれなカクテルを片手にうっとりと語る女神様、いつの間にレシピを渡したんだろう……ドリアン達が知らない間に未知のスキルを手に入れている。
 部屋数未知数だし、もしかしたら書斎とか作ってあったりして。

 勇者が召喚された際、いつもなら魔物に神託を下して強くなる前にプチっと潰すのだけど、今回は某事情によって勇者を魔王城まで導いたらしい。
 ルネさーんここにお仕事の邪魔をした犯人がいましたよー。

 杯を重ねるうちにカクテルでは物足りなくなったのだろう、カクテルが果実酒に代わり、今は某メーカーのビールを飲んでいる。
 質より量な女神様ですからね。

「でも今回の勇者さん、今までの人と何が違ったんですか?」
「アイツなぁ、うへ」

 あ、嫌な予感。

「巻き込まれた友人がいたんだけどさ、ふ、ふふ、そいつの事、好きだったんだよ」

 女神様がここまで喜ぶって事は男同士のあれこれか。

「魔王を倒したら元の世界に戻れる。そう言われて友人だけでも元の世界に還そうと、一人で旅立とうとしたけど、友人も一緒に行くと譲らなくてよぉ、あのシーンは痺れた」

 この話も後々ゲームのストーリーに採用したりするんだろうか。

「つっても、友人の方はスキルの一つも持ってなかったんだけどな、そこで私の出番」
「何したんですか……」
「魔物知らずっていうスキルをプレゼントしたんだ。効果は抜群、魔物と一匹も遭遇する事なく魔王城に辿り着き――」
「閉じ込められたと、微妙なお話ですね」
「終わってねぇって」

 聞けよーと肩を組み、コップを持たされてジュースを注がれた。
 お酒じゃないんですね、そこは常識があるのか、保護者からの圧があったのかは不明だね。

「魔物の一匹も討伐出来ず辿り着いたとなると、旅の過程でのレベルアップとか皆無?」
「おうよ、召喚した王国が監視も兼ねて付けた護衛もいたけど、役に立つ立たない以前に出番なんて与えなかったぜ!」
「その人達も解放したんですか?」
「いや、今存在思い出したぐらいだから、多分そのまま王座だわ」

 主要人物以外の扱いが相変わらず雑ですね。
 そろそろシャムスとアー君をお風呂に入れて寝かせたいなぁ、早めに話を切り上げさせよう。

 女神様のお酒をビールから焼酎にすり替えると、いつもの要領で話を聞き流しながらお酒を遠慮なく飲ませて行く、アルコール中毒? 女神様にそんなものあるわけないじゃない。

「魔力が尽きても扉を破壊しようとする勇者、護衛達はゴミでな、勇者が死んでも自分達が助かればいいと思って止めようともしない、そんな中、泣きながらもう止めてくれ、君が死んでしまうと泣く友人――クライマックス……だったのに、主様の気配感じてうっかり気が逸れた」

 あの時かぁ。
 魔物達が演劇をしていると同時刻に、そんなシリアスシーンがあの中で行われてたなんて。


『俺はどうなってもいい、お前だけは、絶対に元の世界に戻してやる!』
『もういい、もういいから』
『――この世界には人間を見守る女神がいるらしい』
『急に、なに?』
『勇者の命と引き換えなら、願いの一つも叶えてくれるかもしれない』
『なんで、なんでそこまで!』
『お前が好きなんだ、出会った時からずっと』
『そんなの、僕だって一緒だ! 僕も、僕も君が好き――』


 一連のやり取りをポテチ片手にガン見していた女神様は、一部うっかり見逃したものの、告白シーンは見逃さずに済み、二人のやり取りを乙女のように頬を染めながら語ってくれた。

 いや、これはお酒で赤くなってるだけか。

 抱き合い愛を告白し合う二人、「魂だけでも地球に」そう願い心中しようとした二人の前に慌てて女神様が姿を現し、愛に心を打たれたとか何とか言って二人を地球に戻したようだ。騎士様の力を借りて。

「あの二人が死んだらぜってぇえこの世界に転生させる、主様にもお願いしといたからきっと大丈夫に違いない」

 うわぁ、うわぁ。

 騎士様も……ちょっと甘すぎやしませんかね。
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