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刀国学園

第66話

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 正直暇です。

 だって皆転移させられてここに居ないんだもの、シャムスとアー君はアカーシャにおやつを貰って満足してお昼寝モードだし。
 しかもそこにレオ君混ざってるのはなぜ。

「おやつ食べてたから」

 ふらふらっと近寄って一緒に食べていたら周りが騒がしくなり、でも初めて食べるおやつに夢中になっていたらうっかり波に乗り遅れたらしい。
 教室に戻る事も、冒険にも出る事もなかったのってレオ君だけだよ?

「アカーシャここ任せていーい?」
「母様をあまり困らせないでくださいね」
「はいよー」
「っちょっ!」

 僕が巻き込まれるの前提!? ツッコミを声に出す前に騎士様に抱えられ、次の瞬間には豪華な扉の前にいました。

「主様、ちょうど良かったです」
「あれま」

 着いた瞬間、ルネさんに見つかった。

「なにかあったの?」
「小規模スタンピードと勇者襲撃と見学が重なりました」
「それなんて喜劇コント?」

 のんびりしてないで何とかしてください!とルネさんが騎士様を揺さぶる、待って、僕を降ろしてからにして、酔う、酔っちゃうから!

「騎士様降ろして」
「ああごめんね」

 やっと降ろしてもらえて一安心。

「スタンピードは出産ラッシュが重なって魔素が乱れたのが原因です」
「重なるものだっけ?」
「旦那様が私にとても美しいネックレスをプレゼントしてくれたのですが、それが魔物の間で流行りまして、つがいの間でプレゼントが交わされて愛が燃えあがった結果です」

 魔王様がルネさんだけを一途に愛しているので、魔物の間では一夫一妻が当たり前の風潮になっているのだとか、なんかごめんなさい、旦那様が増えたり減ったり寝取られたりしている僕としては非常に耳に痛い話です。

「そこにたまたまテンプレ展開が重なってしまいまして、召喚勇者に王城に侵入されました」
「あー、羅刹が子供連れて来るって通達してあったもんね、張り切った挙句警備がザルになったって言うか元々そんなもんなかったっけ」
「はい」

 ないんだ。

「じゃんけんで決まった四天王も全員産休でして」
「意味ないね!」
「幸いにも勇者一行が侵入したのがイベント用の王座だったので、外から部屋を封印してそのまま放置してあります」

 イベント用王座ってなんですか?
 しかし「魔王覚悟!」とか言って扉を開けたら無人とか、今までにない展開だね!

「羅刹は?」
「通常の予定通り子供達を食堂に案内し、この時間ですと魔物達が演劇と昼食を振舞っています」

 レイアさんが脅した割には平和な展開。

「まぁスタンピードは俺がなんとかしておくよ、今日は子供達を優先してもらいたいし。勇者はもうこのままでいいんじゃない? 王座を次に使用するのは何十年も先だし、その頃にはいい飾りになってるよ」
「それもそうですわね」

 このまま放置……勇者の死因が餓死になるのか……、ご愁傷さまです。

 その後、魔王城の外に移動し、騎士様が一瞬でスタンピードを終了させました。
 チートすげぇ。

 暴走する魔物を飲み込んだ炎が龍に見えて、騎士様に興奮気味に語ったら本当に龍だった、実体がないので物理攻撃無効、倒すには騎士様の内にある核を破壊しなければならないらしい、難易度最強のボスを無傷で倒せって言われた方がまだ希望が見える話ですね。

「ゼノスって防御だけじゃなく、炎の剣になったりも出来るんだよ、かっこいいでしょ」
「……前にそれ使って超巨大魚焼いてませんでした?」

 そうか、あれは騎士様の御業ではなく、炎の龍・ゼノスさんの加減がちょうど良かったのか、ありがとうございました、焦げ目も少なくとても良い焼き加減でした。

「今日の夕食は魚料理をメインにしましょう」
「じゃあ帰って釣りしよう、俺頑張るよ」

 なんやかんやと僕らお昼抜いてるからね、夕食はちょっと豪華にしようかな。

 じゃあ騎士様帰って池でお魚釣りましょうか。
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