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優しい人生を
第53話
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僕は今、もふもふに包まれている。
いつもじゃないかって?
このもふは違う、桜並木通りを巡回している第二騎士団所属の熊さんである。
つまり、れっきとした騎士団員なんだ!
第二騎士団は毛皮もふから鱗もふまで様々なもふが揃うもふい職場、騎士団の中でも最大人数を誇るって刀雲が言ってた。
最近は食事目当てに魔物が志願してるって噂も。
それって春日さんが餌付けした魔物さんなんじゃ……この話を聞いて騎士様がキラキラしてたから多分何かしらちょっかいを掛けるのは間違いない。
そうそう、なぜ騎士団の熊さんがここに居るかっていうと、先日ケバブを披露してくれたおっちゃんが神薙さんの境内に出店したんだ。
普通はお守りを売っている社務所、あれが改造されてケバブ店舗になりました。
日本だったら「罰当たりな!」とか言って怒られそうな案件だけど、祀られている神薙さん直々のお願いな上、この世界の女神様が「OK」と神託を下したから全く問題ない。
そしてこちらの熊さん、ケバブに魅了され、この度第二から第五に転属しておっちゃんに弟子入りしたんだって。
本当は騎士団を辞めて弟子入りするつもりだったみたいだけど、熊さんのもふもふに目が眩んだ騎士様が口を出し、副官さんの権力で転属と言う形に納まった。
ぐぉぉぐおぉと何かを訴えられているけど分からない、でも多分お礼を言われているんじゃないかと推測する。
この熊さん、初日にしてすでに身体にケバブの匂いが染みついている。
まだ早朝だから参拝客はいない、熊さんを独占状態。幸せ~。
「樹、樹、次俺!」
「はぁい」
うっとりしていたら騎士様に催促されて場所を譲った。
「おぉぉ」
ちょっとごわっとした毛並みがいいですよね。
騎士団に所属している特典として、忙しい日は非番の団員さんが手伝ってくれたり、騎士団割引が効いたり、神薙さんは無料だったりなど。
あれ?
おっちゃんのお得度が微妙?
むしろ神薙さんに無料な分、赤字なんじゃぁ……個数制限した方が良いな。
「ケバブちょーだい」
「っは!」
言ってる側から神薙さんのご登場です。
「今日はさっぱりな味がいいな」
「承知しました」
「神薙さん、一日十個ぐらいにしてくださいね」
「えー」
「いえ、神子様、そんな」
「そう、ですよね、おっちゃんのケバブ美味しいですものね、ドリちゃんのおやつなんていらないですよね」
「やっ! 食べる」
ぶんぶん首を振りながらもおっちゃんに渡されたケバブを食べています、うーんもう一押しかしらねぇ。
「はー、もふもふだった。おっちゃんに毎日十個ケバブを奉納してもらうのはどう?」
騎士様がすっごいまともな提案をしてくれた。びっくり。
解放された熊さんは今度はシャムスとアー君にもふられている。二人を乗せているもふもふズは熊さんから漂う香りにそれぞれ興味津々みたい。
「むぅ」
「個数制限して皆と楽しくおやつ、個数無制限でおっちゃん赤字で店舗閉鎖、どっちがいい?」
「皆とおやつ」
即答だった。
騎士様もやる時はやるんですね! お礼に夕食のおかずサービスしますね!
『かあしゃま僕も食べたい』
『私も私も!』
「すみません、本日のお勧めデザート三つください、騎士様はどうします?」
「開店直後に食べた!」
一番乗りだったんですね、どれだけ楽しみにしていたんだ。
おっちゃんから果実をスライスしたケバブを渡され、シャムスとアー君にも渡す、食べ物は絶対に落とさないんだよねこの二人。
『あまいのー』
『うふー』
「美味しい」
頬を緩める僕らを見て、神薙さんも最後の一個は同じものを注文していた。
邪神御用達の店か……是非とも末永く営業して欲しいな。
いつもじゃないかって?
このもふは違う、桜並木通りを巡回している第二騎士団所属の熊さんである。
つまり、れっきとした騎士団員なんだ!
第二騎士団は毛皮もふから鱗もふまで様々なもふが揃うもふい職場、騎士団の中でも最大人数を誇るって刀雲が言ってた。
最近は食事目当てに魔物が志願してるって噂も。
それって春日さんが餌付けした魔物さんなんじゃ……この話を聞いて騎士様がキラキラしてたから多分何かしらちょっかいを掛けるのは間違いない。
そうそう、なぜ騎士団の熊さんがここに居るかっていうと、先日ケバブを披露してくれたおっちゃんが神薙さんの境内に出店したんだ。
普通はお守りを売っている社務所、あれが改造されてケバブ店舗になりました。
日本だったら「罰当たりな!」とか言って怒られそうな案件だけど、祀られている神薙さん直々のお願いな上、この世界の女神様が「OK」と神託を下したから全く問題ない。
そしてこちらの熊さん、ケバブに魅了され、この度第二から第五に転属しておっちゃんに弟子入りしたんだって。
本当は騎士団を辞めて弟子入りするつもりだったみたいだけど、熊さんのもふもふに目が眩んだ騎士様が口を出し、副官さんの権力で転属と言う形に納まった。
ぐぉぉぐおぉと何かを訴えられているけど分からない、でも多分お礼を言われているんじゃないかと推測する。
この熊さん、初日にしてすでに身体にケバブの匂いが染みついている。
まだ早朝だから参拝客はいない、熊さんを独占状態。幸せ~。
「樹、樹、次俺!」
「はぁい」
うっとりしていたら騎士様に催促されて場所を譲った。
「おぉぉ」
ちょっとごわっとした毛並みがいいですよね。
騎士団に所属している特典として、忙しい日は非番の団員さんが手伝ってくれたり、騎士団割引が効いたり、神薙さんは無料だったりなど。
あれ?
おっちゃんのお得度が微妙?
むしろ神薙さんに無料な分、赤字なんじゃぁ……個数制限した方が良いな。
「ケバブちょーだい」
「っは!」
言ってる側から神薙さんのご登場です。
「今日はさっぱりな味がいいな」
「承知しました」
「神薙さん、一日十個ぐらいにしてくださいね」
「えー」
「いえ、神子様、そんな」
「そう、ですよね、おっちゃんのケバブ美味しいですものね、ドリちゃんのおやつなんていらないですよね」
「やっ! 食べる」
ぶんぶん首を振りながらもおっちゃんに渡されたケバブを食べています、うーんもう一押しかしらねぇ。
「はー、もふもふだった。おっちゃんに毎日十個ケバブを奉納してもらうのはどう?」
騎士様がすっごいまともな提案をしてくれた。びっくり。
解放された熊さんは今度はシャムスとアー君にもふられている。二人を乗せているもふもふズは熊さんから漂う香りにそれぞれ興味津々みたい。
「むぅ」
「個数制限して皆と楽しくおやつ、個数無制限でおっちゃん赤字で店舗閉鎖、どっちがいい?」
「皆とおやつ」
即答だった。
騎士様もやる時はやるんですね! お礼に夕食のおかずサービスしますね!
『かあしゃま僕も食べたい』
『私も私も!』
「すみません、本日のお勧めデザート三つください、騎士様はどうします?」
「開店直後に食べた!」
一番乗りだったんですね、どれだけ楽しみにしていたんだ。
おっちゃんから果実をスライスしたケバブを渡され、シャムスとアー君にも渡す、食べ物は絶対に落とさないんだよねこの二人。
『あまいのー』
『うふー』
「美味しい」
頬を緩める僕らを見て、神薙さんも最後の一個は同じものを注文していた。
邪神御用達の店か……是非とも末永く営業して欲しいな。
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