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優しい人生を

第31話

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 騎士様に名前を認められては取り消す事も出来なくて、白い子は正式に『アルジュナ』を名乗る事になった。
 ちょっと遠い目してたけどね。

 朝起きてご飯あげようとしたらいなくて驚いた。

『自立、自立するんだ! 娶られる前に!』

 みゅみゅみゅと可愛らしい声を頼りに姿を探したら、二本足でとてとてと走っていた。
 そっかー、もう走れるんだね、産まれてから数日で走るとかそれが普通じゃないって気付いているんだろうか。

「アルジュナ、体が出来る前に無理をすると身体が傷むよ」

 そう言って優しく抱き上げたのは刀雲。
 簡単に捕獲されて本人は不満そうだ。

「ご飯の時間だよ」
『っぐ、屈辱! キスをするな、やめよ、俺にそんな趣味はない!』
「アルちゃんは可愛いなぁ~」

 でれんでれんしながらアー君にキスを降らせる刀雲は、肉球で押し返される程度では怯むような男ではない。むしろ肉球パンチが可愛くて目尻が下がり切っている。

『アー君ご飯よ』
『アー君言うな!』
「アっちゃん」
『貴様らぁぁぁ!』
「仲良いなぁ、神薙さんが待ってるから早く行こうね」
『あい』
 
 ハイハイで近付いてきたシャムスが足元で僕を見上げる。かーわーいーいーなー!
 刀雲に負けずデレデレしながらシャムスを抱き上げ、ぶちゅーっとすればキャッキャッと笑いながらぶちゅっと返してくれた。

「まま僕も」
「はぁい」

 ぴょんと肩に飛び乗ってきたイネスに催促され、ちゅっと鼻先にキスを落とせばくすぐったそうにしながらも返礼された。うちの子ってどうしてこう可愛いんだろうか。

「イツキ、お腹空いた」
「ごめんなさい、すぐ行きますね」

 しばらくは喜んで魔物を踊り食いしてた神薙さんだけど、すぐに飽きちゃったんだよね。曰く、一人で食べるのつまらないとの事。
 そんな訳で三食とも前のように皆で食べるようにして、魔物の踊り食いはおやつ代わりに利用してるみたい。

 前にやった狩り競争して勝負を兼ねてみたりと、子供達も協力してくれている。
 好奇心からだろうか、アー君も参加しようとして顎が外れそうになっていた。まぁそうだよね、魔物部屋がまさか部屋の中にあるとは思うまい。
 部屋と廊下を何度も見比べて呆然としながら僕を見上げて来た時、可愛い瞳が零れ落ちそうなほど大きく見開かれていた。

 他にも。
 スライムと戯れるイネスを見て最初は我慢していたものの、本能が抑えきれなくて一緒になってスライムに襲い掛かっていた。

 たまに神薙さんがじっとアー君を見ている時がある以外は、おおむね僕らの日常はいつも通り平和です。
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