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優しい人生を

第24話

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 ある事に気付いた騎士様は「やっちまったかなぁ」と一人頭を抱えた。

 神薙は邪神だ。
 それも本来なら討伐か封印しなければならないタイプの、そりゃもう悪夢の再来と言っても過言ではないぐらい過激な邪神である。

 それが家族を持ったうえ、子供まで出来た。
 一人人間の血が濃く出たが他の二人は神薙の血をそのまま引き継いだ立派な邪神だった。
 このままだと世界の均衡とかまずいんじゃないかなーって、ちょっと今更だけど気付いたのだ。

 どうしたもんかと樹に相談してみた。

「いまさら……」

 生温い目でお茶と菓子を出された。
 こんな適当な扱いするのは樹だけな気もする。

「それより白ちゃんからハガキ届いたんですよ」

 見てくださいと差し出されたのは、神薙の初子である白と嫁がちゅーをしている周りにハートマークが飛び散っている写真だった。

「孫世代も早そうです」

 食糧事情がね! 泣き言を言ったら同じように黒の写真が差し出され、元気に魔物を追いかけまわしていた。

「凶悪な魔物が増えて笑うしかなかったのに、黒ちゃんが間引きまくっているおかげでバランスが元に戻りつつあるそうです」
「そ、そっか」
「カメラは春日さんが地球で買ってきた最新型で――」

 ちょいちょい居ないと思ったら……。
 資金(おこづかい)はギレンが喜んで提供したんだろう。

「翡翠くんは毎日勉学に励んでいるそうです、春日さんは見守る相手が多くて大変だと笑っていらっしゃましたよ」
「生き生きしてるんだろうなぁ」

 元々子供好きな春日ゆえ、子供達は全て孫みたいなものなのだろう。

「一番平和な解決方法は白ちゃんと同じようにお嫁さん与える事ですね」
「増えない?」
「女神様の腐パワーを信じましょう、愛があれば大抵なんとかなりますよ」
「それは、ちょっと、都合が良すぎないかな?」
「女神様の口癖の一つにこんな言葉があります『ご都合主義万歳ってやつだよ』」

 世界の均衡が危ないなら女神様の力を強化すればいい、つまり男同士のあれやこれやをもっと溢れさせればいいと……そんな感じでいいのだろうか。

「国民が愛し合う、それだけで強化される女神って凄いですよね」
「本当にね」
「他国にも腐女神様の愛を布教すれば、邪神が増えても揺るがないかもしれませんよ」
「ありえる、否定できない」

 何せ女神ヴィシュタルは腐の力で世界を浄化した実績がある。

「騎士様が一言『お願いね』と囁くだけで万事解決すると思います」

 言いながら樹がスラちゃんに餌をあげている。
 シャムスが増産した中でも知恵のあるスライムを選別して飼い慣らしているらしい、ぷるるんボディに何でも消化する無害な子のため、城下の特に料理店を営んでいる者から是非欲しいと乞われているとか。

 このスライム、樹は知らないけれど実は凄い。
 何が凄いって獅皇の直系であるシャムスが作った存在なので、神獣もびっくりなほど神聖な気をまとっているのである。
 それを踊り食いする邪神。

「俺が知る中でも今の歴史がダントツでカオスだわ」

 呟いたら「そうですねー」と言いながらスライムを高い高いしている。
 ぷるぷる震えながら喜んでいるスライムを、背後でイネスが狙っているけど大丈夫なのだろうか。
 
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