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第三章 世界に降りかかる受難

第725話

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 ある日森の中、熊さんに出会った。
 川でめちゃくちゃ魚を狩っていたので、釣りが出来なかった。

「リザママ、お昼どうしよう」
「いやいやいや、なんでそれだけで終われるの!? あれ、Bランクの魔物も真っ青な子育て中の野生熊だからね? そりゃイエティの方が上位だけど、子連れだから凶暴なんだよ!?」

 今日は森で釣りをしたり果物を探したりして遊ぶ予定だった。
 でも先客がいたのでがっかりしたらリザママから強力なツッコミが入りました。

「リザママ、熊さんが声でっかくて煩いって」
「すみません!」
『うちのバカがすまん』

 リザママの声に反応して威嚇されたのでめってしたらイエティも一緒に謝ってました。
 なんだろう、熟年漫才コンビの貫禄がある。

「熊さん一緒に遊びましょ」
「ぐおー!」
「がおー!」

 四匹ほどいた子熊がよちよち近付いて来たので、遊びに誘ったら乗ってくれました。
 じゃぁ僕らはこのまま遊ぶのでリザママとイエティは食料確保よろしく。

「適応能力高すぎねぇ?」
『あれは適応能力とかではなく、もっと別の力だろう。ほら母熊に挨拶しろ』
「GOAAAAAAAA!!」
「こえぇぇぇ、無理無理無理無理!!」
『情けない』

 子熊ちゃんたちとお相撲もどきしたりして遊んでいたら、リザママがイエティに背中を押されながら割と本気で泣いていた。
 あれは能力的な問題とかではなく、母親に攻撃したらイエティにどつかれる恐怖とかそういうのもあるようなないような。

「あわわわ、リザママアァァーー!」
「なに!? 今度はな――!」

 お相撲ではなく水辺でママさんの真似をして魚とりをしていた子が、浅瀬で足を滑らせてコロンコロンと川に流されていた。
 水はそこまで深くないし、何よりえっちゃんガードがあるので溺れる心配はしてなかった。

 でも別の脅威は計算外だった。

 水に流されたその先、何だかボロボロな人間の集団が森から出てきて、子熊に気付いた大人の一人が剣を抜いたんである。
 処刑案件待ったなし。
 えっちゃんにお願いすれば速いけど、リザママに無茶ぶりするのが当たり前になっていたのでついリザママに助けを求めてしまった。

 結果、リザママが状況を把握すると同時にえっちゃんがリザママをぶん投げました。
 後で謝らないと駄目なやつかもしれない、でも放たれた矢より早いリザママもかっこよかったです。はい。

「天誅!」
「ぐわっ!」

 リザママの飛び蹴りが華麗に決まり、剣を抜いた大人が川の深いところに落ちてそのまま流されていった。
 しかも同時に怒り狂った母熊が突進を受け、他の人たちは悲鳴を上げて逃げて行った。

 本来ならばお話を聞いて保護とかそういうフラグを立てるべきなんだろう、でもごめんね、熊親子と先に出会ってお友達になっちゃったから、そちらの命が優先なの。
 あと母熊さん、謎能力の影響受けたっぽくて野生熊【極】的な称号付いた可能性がとても高い、僕と出会った時点ですでに人間に勝てる存在じゃなかったのである。

 この後、ママさんが狩った魚を焼いて皆で食べました。
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