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第三章 世界に降りかかる受難

第702話

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 女神様が帰還したからいつもの日常パートに戻ると思った?
 僕もそう思ってました、ついさっきまで。

「ここどこだろう?」

 駄々をこねにこねる女神様を鎮めるため、黄金パフェでも作ろうと果樹園に足を踏み入れたら別の場所だった。

 右を見ても左を見ても見覚えはある土地なのに、知っている人が誰もいない。
 刀国、だよね?
 桜並木はいつも通り綺麗だった。
 その先にある噴水も、噴水の中央で子供達と遊ぶ黒龍も、並ぶ屋台も見慣れているはずなのに、ほんの少しだけ違う。
 何が違うのか分からず、怖くて道の真ん中で動けなくなっていたら、後ろから来た人にぶつかった。

「ぬ、すまぬ、足元を見ていなかった。ケガはないか?」
「まおうさま」
「うむ」

 抱き上げられてケガがないかと確かめられ、目をウルウルさせていたら背中を優しく撫でられた。

「家はどこだ? 送ろう」
「おうち」

 僕のおうち。
 異世界転生した僕が暮らすのは邪神様のおうち。

 目の前にいる魔王様は何も変わらない、ただ僕を見知らぬ子どもだと思っている。
 どうしよう、神薙さんも僕を分からなかったら居場所が、帰る場所がなくなっちゃう。

「その子、誰? 生贄?」

 魔王様に連れられて神薙さんのおうちに来たら、やっぱり僕の事は記憶になかった。
 どうしよう、どうしよう、どうしたらいんだろう。

「違う、迷子らしくてな、家を聞いたらここだと言うから連れてきた」
「ふぅん?」

 いつも子供達とゴロゴロしていたクッションコーナーはない、座敷の向こう側にドリちゃんがいる調理場も見当たらない。
 神薙さんの冷たい感じが、まるで初めて出会った頃みたいで不安でぐるぐるする。

「この子、主様の匂いがするし、装備品全てに主様の魔力がぎっちりしているね。凄い執着」

 イケメン孫が手作りしてくれたムササビポンチョ、チート付与をありったけ込めたのは騎士様とか珱さんとかレイアさんとか色々。
 縫ったはずなのに縫い目がない不思議なポンチョです。

「名前は?」
「いつき」
「お前、私を知っているね」
「あい」

 一緒のお家で暮らしてます。

「でも私はお前を知らない、だから記憶を覗かせてもらう」
「む、子供の記憶を覗くなど大丈夫なのか?」
「これが一番手っ取り早い」

 心配する魔王様をスルーして、僕を抱き上げた神薙さんがバクっと僕に噛みついた。

「歯が通らない」
「は?」
「え、薄皮一枚すら傷付かないってなに?」

 記憶を覗くって食べて記憶を覗くって意味だったの!?
 さすが邪神様、おっかない。

 ありがとうポンチョ、ありがとう騎士様、これがなかったら意味が分からない状況で死ぬ所だった。

「じゃあこっちかな」
「みぎゃーー!」

 目の前に巨大な蛇の口が広がり、ぱくん。と食べられた。
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