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第三章 世界に降りかかる受難

第686話

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 ダンジョンには行かず、どこかの国の小さな町のお祭りに来ております。
 こちら豊穣祭の現場に到着しましたー。

 お祭りの内容は歌って踊りながら豊穣ドラゴンへの感謝を捧げるというもの。
 つまり涼玉を称えるお祭りだね。
 それは来るよね、ただでさえうちの子はお祭り好きだから。

 ただ収穫祭と言っても刀国や帝国のように屋台が派手に立ち並ぶほどではない、踊る舞台もないし、町中が飾り立てられている訳でもない。
 いつもよりちょっと良い料理とたくさんのお酒、子供にはジュース。
 基本的に世界設定が厳しめの異世界だからね、税の取り立てとかそういう事情もある。

 飢饉で餓死者が出そうになったその時、為政者の手の中にあったのは涼玉呼び出しチケット。
 かつて稲刈り大会で手に入れた名誉の一枚。
 それを迷いなく使って涼玉の力を借りることが出来た結果、今日のお祭り開催となったようです。

 お祭りを行って涼玉を喜ばせる事で豊穣を願うというのが本来想定していた使い方、でも飢饉で明日の食べ物もなく、お祭りどころではなかった。
 事情を酌んだ涼玉がお祭りを行う事を前提として豊穣を振りまいた。結果が前後したけどお祭りさえ楽しめれば良いから特に問題はなし。

 問題は食事事情が厳しすぎて、お祭りに並ぶ料理がとても質素なこと。
 涼玉に助けを求めた人が出資するにも、倉庫がすでに空になって資金も底を尽き、祭りに出資するどころか自分の明日の食事さえどうしたら……というのが現状。
 でも豊穣とお祭りはワンセット、やらないと祟るんだなぁこれが。
 そんな領主の事情を知った町民が自主的にお祭りを開いたんだっけ?

「でもお祭りならお祭りで、屋台食べたいなぁ」
「難しいですなぁ、横領を疑われたら平民は貴族に抵抗出来ません」
「肉とかさぁー、そういうの一切ないってどうよ、俺肉目当てなのに」
「平民が肉を食べれる機会というのはそう滅多にないものですよ」
『司祭さまのいいところ見てみたいなぁ』
「ほほほ、肉球アタックされても何も出ませんぞ」

 お祭りが知っているものの規模に対してあまりに質素だったので、町にある唯一の教会に殴り込みにきて、司祭に子供達が一斉におねだり攻撃。
 それを穏やかに笑いながらかわす司祭。

「町民がやっと余裕を持って生活出来るようになったとしてもあれはないです」
「パンがモソモソなのは嫌だな」
『ふわふわパンを所望するの』

 要は感謝の気持ちを表したいならもっと良いもの食わせろ。
 人間が精いっぱいのもてなしをしたからと言って、神様、それも幼児が受け入れるとは限らない。
 すみませんね、うちの子って案外ワガママだし食通なのよ。

「祭りならさぁ、いつもと違うもの食べましょうよぉ」
「しかし領主の懐は空ですぞ」
「じいちゃん意地悪言うなよ、本国から資金、出てるだろ?」
「ほほほほ」
『許可がないと使えないお金なのかなぁ?』
「神様のワガママ叶えるのも教会のお仕事なのである」
「おやおやこれは神託ですかな」
『ママの神託!』
「かあちゃが正義!」
「教会が祭りを主催して、民がそれに参加する形にしましょう!」

 それなら町の負担は軽くなり、僕らに提供する料理のランクも上がって互いにハッピーなのである。

「ほほほほ、これも布教ですなぁ」

 神様のワガママに答えるスキルを必要とする宗教、それがヴィシュタル教なのである。
 魔力で作った鳥さんに伝言を載せて解き放ち、待つこと数十分、商業ギルドが町民を引き連れて教会前にやってきて祭りの再設営をしている。
 仕事が早すぎてびっくり。

 教会前だけ華やかに飾り立てられ、お祭りらしく神様リクエストの綿あめや焼きそば、串焼きがずらり、人手も基本的に商業ギルドから、中身は町民だけどそれはそれ。
 どこかから役人が文句を言ってきても、全部教会の資金から出したので文句は言わせない。
 教会の後ろ盾は神々と邪神一家である。

「ひょーー!!」
「涼ちゃん、人混みで見にくいですけど、あっちに踊り櫓ありました!」
「ひょぉぉぉ!!」
『テンションが天元突破してるの』

 ほら今も町の人が教会前に捧げたお礼の花がぶわっと満開に。
 料理に添えてある果物が加工物じゃなかったら増殖してただろうなぁ。
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