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第三章 世界に降りかかる受難

第675話

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 当日限定の入場フリーパスを手に入れ、まずはクエストボード確認である。
 うむ、冒険者っぽくてとても良い。

「マールス、なんかいい依頼あるか?」
「商業ギルドから調味料の納品依頼が出ております」
『達成率低そうね』
「これ金策クエストなんよ、おみくじで金欠になった冒険者向け」

 さすが初級ダンジョンの巡回ボス、ダンジョンの事情に詳しい。

「おみくじ破産する人いるの!?」
『おばかさんなのよ』
「本殿と違ってストップかけてくれる優しい人がいないからな」
「調味料のドロップ率はあまり高くないんよ、うちの松茸ほどじゃないけど、そこそこレアだって」

 刀国でこそ一般家庭まで普通に出回っているけれど、この世界では調味料は高級品。
 このダンジョンでドロップする調味料が天ぷら向けのものばかりなので、よほどお金に困っていない限り自分達で消費しちゃうと思っていたら、おみくじを引きたいがために売り払う人が結構いるらしい。
 おバカですねー。

「調味料は一律高めの買取設定ですな」
「このガイドブック、少々高かったですが情報は有用です」

 僕らがわちゃわちゃしている間、霧ちゃんとマールスは受付でガイドブックを買ってきたらしく、真面目に読み込んでいた。
 初級ガイドだと出現魔物、ドロップ品、基本買取価格などが書いてあるみたい。

 他にも中級、上級があるらしいけれど、どんな情報が書かれているんだろう。
 アー君とアカーシャの高笑いが聞こえる気がする。

「父ちゃんは塩狙いたいって」
「なら施設使うよりシャムス兄にお参りした方が効果高いぞ」
『今なら幸運値上げちゃうのよ』
「ぎゃうぎゃぅ」
「ぎぃぎぃ」
「朝もぎたての熟成トマトとチーズをかけて焼いたトマトグラタンだって」
『あーい』

 ネヴォラと一緒に来たゴブリンたちが持ち物からそれぞれ食べ物を取り出し、シャムスに捧げては祈りを捧げて下がっていった。
 調味料への情熱がガチである。

『霧ちゃん預かってー』
「分かった」

 効果は本物で、この後ゴブリンたちは天ぷら用塩やポン酢、天つゆなどを次々ドロップして周囲の冒険者に尊敬の眼差しで見られたのだった。
 ダンジョンの本命、天ぷらや揚げ物はネヴォラが狩ってました。

「ではいよいよダンジョン突入である!」
『おー!』
「イネスどの辺かな?」
「無双ちょっと見たかったんよ」
「一階層は難易度が低いにも関わらず、突破が困難らしいですな」
「多数の冒険者が入り浸って中々先に進まないと受付が愚痴っていた」

 広めの階段を降り、出た先はどこまでも続く草原。
 だからあちこちで円陣を組んで座り込む冒険者がよく見えた。何やってるんだろう。

「皆同じもの食べてるんよ、んー、たまご?」
「俺聞いてくるー!」

 目のいいネヴォラがそう言うや否や涼玉が近場にいた冒険者たちに向かって行った。
 その後ろをマールスが当然のようについていく、さすが黒子、足音すら聞こえなかった。

「ただいまー」

 話を聞いてすぐ戻ってくる涼玉、背後ではマールスが冒険者にお礼のおやつを渡している。
 主の代わりにお礼を渡す黒子の鑑である。

「なんか玉子の天ぷら食ってた! 半熟から固ゆでまで色々!」

 天ぷらダンジョン第一階層、出現魔物はDランクの鶏。
 ドロップ品は中がとろりな玉子の天ぷら。

 生卵を食べるという概念がなかった異世界にカルチャーショックを起こしたみたいで、この玉子にドはまりし、先に進まずに攻略が一階層で止まる冒険者多数。
 突破が困難、その実態は……玉子天ぷらに魅了されて先に進めないだけだった。
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