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第三章 世界に降りかかる受難

第638話

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 屋上があると聞いてやって参りました。

「飛び降りしようとしている人がいるよ」
『止める?』
「自死希望なら他の場所でやってほしいですね、ここ開校したばかりの学校です」
「俺らが遊びに来たばかりに、大テンプレ祭りだな」
「父ちゃんに下で口開けて待っててもらう? ただの神隠しになるぞ」

 屋上と言えば授業をサボっている不良が定番だと思っていた。でも違ったようだ。
 高級そうな生地で作られた制服を着た少女が飛び降りようとしている。だが誰も止めない! いや止めようよ、開校したばっかりなのに!
 女の子の心配をしろって? それはちょっと……だってアー君の学校の評判落とそうとしてるんだよ?

「少年だったら神様来たのに」
『……っは!』
「見捨てたらばーばに怒られるどころじゃない!」
「わわわわ、主食が野菜になっちゃいます!」
「俺止めてくる!」

 そうだったレディにはお優しく!
 ヘラ母さんに怒られる!
 あとあそこの領地の女の子怖い! 

 止めようと思ったけど、こういう時ってどう声をかけるんだろう?
 オーソドックスに「力が欲しいか」とか?
 多分違うよね。

「話、聞こうか?」

 キラキラキラ~っと鱗粉か何かを振りまきながら声を掛けたのは、綺麗な男性? んー? なんだろう、男性と言うには何か違う気がする。
 オネェでもない、そうあれは熱狂的なファンを抱える伝統的なアレ、男装の麗人!!

 邪魔をしちゃダメだねと目で会話をし、それぞれのお口を自分で塞ぎながらコソコソと壁際に移動、見守ることにしました。
 僕らって基本的に人間に優しくない事が発覚した今、人間の厄介ごとは人間同士で解決してもらった方が平和だろう。

 麗人に話しかけられ、暫くはぼぅっとしていたレディ、その内ぽつりぽつりと口を開き始めた。
 霧ちゃん、下から見えないように認識阻害と、万が一に備えて足元に霧を発生させておいてね。

 しかしあの麗人、何だろう、カッコイイ感じがレイアさんを彷彿とさせる。
 怒らせたら怖そうだから見捨てようとしていた過去はなかった事に、僕らは最初から助ける気でした。うむ。
 ごめんよ、今度ロリコンの神様探しておこうか? でもなぁそんなのいたらシヴァさんと戦争になりそうだからやっぱりなしで。

「希少な光属性に覚醒した義理の妹に家族も婚約者も友人も盗られた。ですか」
「テンプレだな、最近流行ってんのかな?」
『女神様の愛読書を変えれば救済出来るよ』
「王様の国ってトラブル多いね、もしかして婚約者って王子の一人だったのかな?」
「そうだったらイネスのぺかぁで解決だな!」

 ズルいズルいと全てを奪っていったり、お姉さまがーと全てを姉のせいにしたりと、パターン色々。
 敵がテンプレならば僕らで何とか出来るよね。

 という事で麗人が相手をしている間に事象弄っちゃおうか、管理画面オープン!
 ふむふむなるほど、父親が侍女に手を出して生まれた庶子の妹が家に来て以来、あれもこれもテンプレ通り奪われて、耐え忍んでいる所に妹が光属性に目覚めてさらに立場を失い、唯一の支えだった婚約者すらも妹に奪われて――本当にテンプレのオンパレードだった。

 でも実の母親は生きているんだね、それも男性。
 ふむなるほど、侍女に手を出したのは酔っ払った弾み、と。妹を引き取ったのを切っ掛けに離婚紛争が起こって現在別居中……父親が全部悪いな。

 じゃあですね、まずレディのお母様にお便りを出します、えっちゃんの闇の力で小鳥を作ってもらい、屋上での出来事を伝えてもらいます。
 お父様の家庭内権威をぐいぃぃぃっと低下させ、お母様のを上げます。
 立場も権力も閨での上下も入れ替わるけどその方がきっと平和、弟が数人生まれれば元婚約者と妹がくっつこうが爵位乗っ取りは出来ないね!

 あれ、でも元婚約者に何か状態異常のマークが出てる。
 ……魅了されてますねー、イネス、イネスー、お出番ですよー。
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