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第三章 世界に降りかかる受難

第618話

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 転生&転移特典は勝手に取得できるものではない、必ず与える誰かがいる。
 与えるのが女神様なら今回は無理です、だって長期休暇でこの世界にいないから。

 もしかしたら彼らの信仰する女神が違う女神である場合、転移特典が貰える可能性はゼロではないけどサラリーマンは会ってないという。
 じゃあ学生の方はというと、あちらも特典なしだった。えっちゃんが僕の代わりに確認済みです。

「現状、社畜戦士はただの一般人なのよ」
「社畜戦士、何か強そうだな」
「地球に戻りたいなら方法はあるよ」

 女神様はいないけど、その上司ならいるので呼び出せば喜んで来てくれると思う。
 その方に地球まで送ってもらえば安心、次元が違うとか戻る日付がズレるなどの心配はないよ。

「戻る……あの夕方五時にタイムカードを切って、サービス残業が暗黙の了解の世界に……」

 多分だけど僕の長年の勘だとサラリーマンが神子になるはずだったんだろう、城で冷遇されたり追放された先で真価を発揮するルートの可能性がとても高い。
 そしてそこで攻めと出会って愛を育むんだよね、女神様が好きそう。

「剣と魔法と魔物もいるよ」
「有給取ったのに会社にいる現実とどっちが怖いかな」

 ごめんね、働いたことないから分からない。
 転生前はまだ学生だったんだ。

「王様」
「はい!」
「このお兄さん?」
「まだ二十代だからお兄さんで大丈夫だ」

 目の下の隈が酷くて年齢不詳だったので、思わず疑問形で本人に聞いたらまだ二十代だと力強く主張された。

「お兄さんの目の下の隈を無くす事が出来たら、僕が国の問題を今回は解決します」
「お、おおお」
「お兄さんに付ける護衛はこの三人で」
「「ゲッフ」」

 不敬罪を恐れず僕を最優先する姿勢を示した兵士さん二人、ついでに仲良さげなツッコミ担当っぽい兵士さんを一人指名したら吐血された。
 この国の人は胃が弱い。

「王様から特別手当出してもらいます、ついでにアー君にお願いして指名依頼料も付けます」
「いやいやいやいや」
「俺らまだCランクにも届かないですから! お前も固まってないで何か言え!」
「私はギルドに登録してません!」
「じゃあ今手続するわ」

 混沌とした場に響いたのは毎日聞いている声。

「これ仮登録だから後でギルドの受付で手続きしてこい、行かない場合は王都支店のギルマスがお前の所に乗り込んでくるよう手配しておくから」
「アー君!」
「ぴゃーーー!!」
「閣下、私は急な腹痛と陣痛で早退させていただきます!」

 アー君の登場で場が収まるわけもなく、余計に混沌としました。いつものことである。

「えっちゃんに呼ばれてサポートに来たよ」

 優しい! アー君大好き!
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