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第三章 世界に降りかかる受難

第601話

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 帝国が本格的に戦争準備に入ったみたい。
 とは言ってもですね、もはや人の域を超えた皇帝が率いる軍なので、特に心配はしていないのです。
 彼が率いる軍も日頃から帝国兄弟に振り回され、鍛えられているからね、多少強いぐらいじゃ倒せないと思う。

 あと万が一があったら皇子達が可哀想だから、皇帝に特別製のおやつも渡しました。
 食べたらきっと百人力。

 そういう訳で安心して本日の呼び出しに応じてじゃじゃーん。

 今日のご相談内容は「生まれた子の魔力が強すぎて奥様が亡くなった。あの子が悪いわけじゃないと分かっているのに愛せない」というもの、女神様の像に向かって懺悔するのは父親かな?
 世の中、それを認められずにドアマット展開になることが多いのに、認められるだけ偉い、偉い。

「愛せないのは仕方ない! 孤児院に預けよう!! 距離を開けるのです!」

 ずばーんと!

 父親が目を背けている間に使用人が虐待、というのが王道だからね!
 物理的に距離を離すことから始めよう!

「子供?」
「期間限定で女神様の代理やってる神子です! ここの孤児院は……」

 管理画面を開いて情報を確認したところ、司祭さんはイネスの信者だったのでどうにでもなる。
 財政難とも書いていないし、運営にも余裕がある。何せヴィシュタル教は教会が他国にあっても本国から支援してもらえるからね!
 ついでに言うとシヴァさんが可哀想な子供は積極的に支援するようにってショタ救済基金を設立、子供が増えてもショタ守護神が支援してくれます。ただし不正使用すると死にます。

「神子様っ!!」
「司祭有能、もう来たの」

 スライディングで僕と悩める父親の間に割り込んで来たのはここの司祭、まだやらかして無いから大丈夫、そんな必死な顔でこっち見ないで欲しい。

「かくかくしかじか」
「分かりました! この件はこのじじいが預かりましょう!」

 冗談でかくかくしかじかと言ったら勢いで了承された。
 アー君たち教会の司祭さんたちに何を吹き込んであるんだろう。

「真面目な話、教会で交わされた言葉は聞こえるようになっていますので、事情は承知しているのですよ」
「ほあー」
「伯爵様、貴方のお子は私たちの所で預かりましょう。なに、神に指名されて修行に出ていると言えば周囲は何も言えないでしょう。距離を置き、預かっている間に伯爵様の心が落ち着きますよう、私も神に祈っておきます」

 床に膝をつき、肩を震わせて泣く悩める父親に静かに語りかける司祭、僕が何か言おうとすると「ステイ」と言わんばかりに手で制されるの。
 ここで生まれたばかりの赤ちゃんを守れないとショタ守護神かヘラ母さんに圧力かけられるんだろうな、怖い怖い。

「今、その子はどちらに?」
「馬車の中に……魔力暴走で他の子に危害を加えたら取り返しが付かない」
「えっちゃんお願い」
「キ!」
「神子様……」

 闇からとぷんと赤ちゃん登場、高級なおくるみに包まれたほわほわ頬っぺの健康そうな子です。

「いきなり消えたら責任問題になりますからね?」
「従者近くにないない、馭者と物陰でゴソゴソしてる」
「自分で動けない赤子を放置して、ですか? ほぅ」

 声には出さなかったけど「シヴァ様に」と唇が動いたのはきっと気のせい。

「赤ちゃんセットある?」
「はい、おむつも哺乳瓶も全て揃っております」

 孤児院の院長は司祭だけど、世話や日用品の手配などは孤児院の中でも年上の子が交代でやっているんだって。
 働く場所がないなら孤児院で働けばいいじゃないシステム、でも実際は教会という後ろ盾が職を斡旋してくれるので、仕事にあぶれる事はほとんどないらしい。
 たまにチビ達が心配で残っちゃう子もいるけど、その子も時期が来れば旅立っていくんだって。

 この辺はアー君がシヴァさんに命じて作らせたシステムなのです、シヴァさんは子供を保護するだけで成人したらポイする外道だからね、ヘラ母さんからアー君に苦情が行ったの。
 問題があればそのたびに柔軟に対処するという感じなのです。

 だから基本的に教会付属の孤児院出身の子は非常に逞しい、母親はヘラ母さん!みたいな勢い……あれ、もしや僕、知らないうちに兄弟増えてる?
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