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第三章 世界に降りかかる受難

第582話

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 元軍人の人、今はこの国の英雄だった。
 僕の予想ではここで王子と元軍人の人がくっつくかと思ったんだ。今まで高確率でそんな感じの流れが多かったしね。

 でも違った。

 運命の出会いは別の相手だったのです。
 ほら、婚約破棄を食らって王子から存在スルーされていたあのお嬢さん、の後ろにいた背の高い人、あの人とお互いに一目惚れしたっぽい。

 ここで女性とくっつくと違和感があるでしょう?
 でも大丈夫、お嬢様の命令で女装させられていただけの綺麗なお兄さんだった。
 つまりBLなので何の問題もないのです、女装男子だろうと男同士でくっつけば女神様大喜び。

 ステータスを見て性別に「男」ってあった時は二度見したね。
 下手な女性より綺麗だから何の違和感もなかった。

 まぁそれは置いといて。
 ここに元軍人の人がいる理由を知りたいな、でもスルーされているお嬢様が怒り狂っていて事情を聴けないのです。迷惑。

「王子、そもそも何であの人と婚約破棄をしようと思ったの?」
「外面はいいのですが、気に入らないとすぐにヒステリーを起こすわ、私の人格否定するわ、友人は選べと煩く口出しするわ、婚約者の義務として贈ったドレスが気に入らないと紅茶をかけてダメにした挙句、自分で買ったドレスの請求書を送ってきたと思ったら趣味が悪くてドン引きとか、ああ後は本当は兄の婚約者になりたかったといつも言っているのも気に入らないです」
「それは……あのお嬢さんが悪いの」

 ストレス溜まってたんだろうなぁ。
 そんな酷い相手なのに婚約破棄出来ないのは、政治的バランスがどうのこうの。難しい事は良く分からないけども、とりあえず同情したから相手有責で婚約破棄しておくね。
 あっ、お嬢さんにお兄さんいるじゃない、ふむふむ、前妻の息子で冷遇されている……もうこの人とくっつくしかないじゃない。アー君? アー君は普通に諦めてください。

「新しい相手と政略結婚組んでおいたの」
「?」
「相手はあのお嬢さんのお兄さん、体が弱いなら強くすればいいじゃない。ひよこ豆で全て解決です」
『ママの神託よ』
「王子おめでとうな、にいちゃの事は諦めてくれ」
「見る目があるのは認めます、でもアー君の伴侶になるにはモフみが足りませんね」
「くっ、獣人になりたい!」

 ここで問題になるのがフリーになったお嬢さん。
 大勢の前で本性ばらされてなければどうにでもなったけど、パーティー中だからね、ただでさえたくさんの人が僕らに注目する中での暴露大会。
 もうお嫁にいけないかもしれない、諦めて冒険者とか…………無理そうね。

 とりあえず、えっちゃんにお願いしてサイレントかけてもらって静かになってもらいました。
 さぁ事情を。

「あ、父上、また黄金の麦採れたそうです」
「いらない、もういらない……」

 事情を聴こうとしたら胃を押さえたおじさま登場、黒髪に白髪が混じったろまんすぐれぇ。ハリウッド並みの美形だけど、苦労性が伝わる顔色です。
 黄金の麦を押し付ける時にひよこ豆つけておこう。

「おっちゃん、この間ぶり!」
「涼玉様……お願いですから、別の国に配りましょう?」
「配ろうとしても普通の麦がいいって断られるんだよ」
「王様に毎食食べさせて消費させればオッケーです!」
「陛下も最初は喜んで消費に付き合ってくれていたのですが、数日間光る羽目になった日からあまり食べてくれなくなってしまいまして」

 王様光ったんだ……。
 アー君の体をよじ登り、王座を見たら目が合った。
 
 王様、頭つるつるだった。
 あれが光ったのだからさぞかし眩しかっただろう。
 反省して頭がふさふさになる豆でも紹介してあげたい、そんな豆ないけど。
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