上 下
559 / 802
第三章 世界に降りかかる受難

第548話

しおりを挟む
 昨日白い子、今日は白い鬼。

「鬼さんこちら」
「いい度胸だなガキ」

 人間が白いと弱弱しいのに、鬼が白いと強さが桁違い感があるのはなぜだろう。
 筋肉?

 頭を掴まれ、体が浮いているけどノーダメです。
 これには鬼さんもびっくり。

 筋肉モリモリ。
 腕が僕の胴体ぐらいあるんじゃない?
 さすが異世界、鬼は初めて会う……いや前にエンラに求婚してた鬼がいたな、あの子誰だっけ?

 うんうんと頭を悩ませていたら、体がボトッと下に落ちた。
 いきなり手を離されて驚いて鬼さんを見たら、天を衝く紅い角ごとえっちゃんの巨大な手に握りこまれていた。

 騎士様にプロレス技かけるレイアさんぐらいの容赦のなさで、ギリギリ音がするぐらい握ってます。
 プチっといかない辺り、この鬼さんはなかなか防御力が高いと見た。
 でもえっちゃんには敵わないみたいで悲鳴も闇に飲み込まれてる感じ。

 今日は召喚ではなく、お困りの村人が神様にお願いしてそれに呼ばれちゃったのです。
 これが代理の弊害……。

 村の近くにある山に恐ろしい魔物が住み着いて困っているから助けて。という願いだったので、見に来たらこの白い鬼さんが小屋を作ってる最中でした。
 住み着いていると言うより、これから住み着こうと準備してた?

 筋肉モリモリだし、角は真っ赤に燃えるような紅、半裸で腰蓑一丁、黄金の金棒、顔は般若みたいに怖いけど、マールスで慣れているからそれほど怖くは感じないかも。
 マールスどんだけ顔怖いんだろう。

 あと鬼さんの名前判明しました。
 真相はこちら!

「うちのバカがご迷惑をおかけしました」
「いーのよ」

 えっちゃんに掴まれていた頭を奪い取り、地面にめり込ませて無理やり謝罪させているこちらのシュッとしたお兄さん、このおっかない顔の鬼さんの知り合いなんですって。
 調教師じゃなくて?

「酒呑童子(しゅてんどうじ)は声がでかくて乱暴な馬鹿ですが、美形が弱点で案外ちょろいんです」

 ここに住み着こうとしている理由もお兄さんのそばにいたいから。だった。
 うーんこれは無罪。

「お兄さんはあの村の人?」
「いいえ」
「あれ?」
「人が多い所で暮らすと王侯貴族が愛人になれと煩くて、静かに暮らせる土地を探して旅をしています。これはただのストーカーを兼ねた番犬ですね」

 伴侶ではないらしい。

「だーから、俺が守ってやるから一緒に暮らせばいいだろ!」
「私は山暮らしは嫌です、自然が豊かで食事が美味しく、それなりに人とも関わっていたいですから」

 鬼さんこと酒呑が大型犬に見えてきた。
 飼い主大好き、独り占めしたい的な?

 対するお兄さんは衣食住の水準をなるべく高く保ちたい派。

 僕は村人のお願い聞いても聞かなくてもどっちでもいい、鬼退治したいならえっちゃんに一言お願いすればいいだけだけど、今回の場合はお兄さんにリード持ってもらっていれば無害かな。
 つまりお兄さんの希望を叶え、その場所で酒呑と暮らせれば大団円。

「物件たくさん、カタログどうぞ」
「おやいいのかい? では遠慮なく」

 一件目はネリちゃんのいる国。
 レモンの収穫から加工、研究、などなど人手は幾らあっても足らない、レモン溢れるレモン国。

 二件目はマシュー君が治める領地。
 稲刈りから始まり、米を使った酒や料理の研究が盛んです。

 三件目はゴブリン菜園。
 子供の食わず嫌いをなくそうをモットーに、様々な野菜を育てています。
 最近は弱い魔物が逃げ込み、雑用と引き換えに平穏な暮らしを手に入れているとか。むしろ僕が住みたい。

 四件目は刀国。
 就職先はお城から城下まで、何でもあるよ。
 衣食住用意するからお城で働こうキャンペーンやってます。

 五件目はアー君の領地。
 世界一の農村地帯を誇るけど、収穫する人手が足りないから滅びた国から積極的に人材引き抜いてます。
 死は救済ではない、魔物に変えてでも労働力として働かせたい。たまに豊穣ドラゴンがロデオするからその収穫もお願いね。

 どこも涼玉が遊びに行くから満遍なく豊穣でね、人手が足りてないんです。
 僕としては魔王城がお勧め、定時帰宅のホワイトな職場だよ。ここに載ってないけど。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

自己評価下の下のオレは、血筋がチートだった!?

トール
BL
一般家庭に生まれ、ごく普通の人生を歩んで16年。凡庸な容姿に特出した才もない平凡な少年ディークは、その容姿に負けない平凡な毎日を送っている。と思っていたのに、周りから見れば全然平凡じゃなかった!? 実はこの世界の創造主(神王)を母に持ち、騎士団の師団長(鬼神)を父に持つ尊い血筋!? 両親の素性を知らされていない世間知らずな少年が巻き起こすドタバタBLコメディー。 ※「異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ」の主人公の息子の話になります。 こちらを読んでいなくても楽しめるように作っておりますが、親の話に興味がある方はぜひズボラライフも読んでいただければ、より楽しめる作品です。

異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ) 安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると めちゃめちゃ強かった! 気軽に読めるので、暇つぶしに是非! 涙あり、笑いあり シリアスなおとぼけ冒険譚! 異世界ラブ冒険ファンタジー!

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

扇屋あやかし活劇

桜こう
歴史・時代
江戸、本所深川。 奉公先を探していた少女すずめは、扇を商う扇屋へたどり着く。 そこで出会う、粗野で横柄な店の主人夢一と、少し不思議なふたりの娘、ましろとはちみつ。 すずめは女中として扇屋で暮らしはじめるが、それは摩訶不思議な扇──霊扇とあやかしを巡る大活劇のはじまりでもあった。 霊扇を描く絵師と、それを操る扇士たちの活躍と人情を描く、笑いと涙の大江戸物語。

攻略対象5の俺が攻略対象1の婚約者になってました

白兪
BL
前世で妹がプレイしていた乙女ゲーム「君とユニバース」に転生してしまったアース。 攻略対象者ってことはイケメンだし将来も安泰じゃん!と喜ぶが、アースは人気最下位キャラ。あんまりパッとするところがないアースだが、気がついたら王太子の婚約者になっていた…。 なんとか友達に戻ろうとする主人公と離そうとしない激甘王太子の攻防はいかに!? ゆっくり書き進めていこうと思います。拙い文章ですが最後まで読んでいただけると嬉しいです。

その男、有能につき……

大和撫子
BL
 俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか? 「君、どうかしたのかい?」  その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。  黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。  彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。  だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。  大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?  更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!

続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん
ファンタジー
⭐︎書籍化決定⭐︎  『拾ってたものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜』  第2巻:2024年5月20日(月)に各書店に発送されます。  書籍化される[106話]まで引き下げレンタル版と差し替えさせて頂きます。  第1巻:2023年12月〜    改稿を入れて読みやすくなっております。  是非♪ ================== 1人ぼっちだった相沢庵は小さな子狼に気に入られ、共に異世界に送られた。 絶対神リュオンが求めたのは2人で自由に生きる事。 前作でダークエルフの脅威に触れた世界は各地で起こっている不可解な事に憂慮し始めた。 そんな中、異世界にて様々な出会いをし家族を得たイオリはリュオンの願い通り自由に生きていく。 まだ、読んでらっしゃらない方は先に『拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜』をご覧下さい。 前作に続き、のんびりと投稿してまいります。 気長なお付き合いを願います。 よろしくお願いします。 ※念の為R15にしています。 ※誤字脱字が存在する可能性か高いです。  苦笑いで許して下さい。

巻き込まれて気づけば異世界 ~その配達員器用貧乏にて~

細波
ファンタジー
(3月27日変更) 仕事中に異世界転移へ巻き込まれたオッサン。神様からチートもらってやりたいように生きる… と思ってたけど、人から頼まれる。神から頼まれる。自分から首をつっこむ! 「前の世界より黒くないし、社畜感無いから余裕っすね」 周りの人も神も黒い! 「人なんてそんなもんでしょ? 俺だって黒い方だと思うし」 そんな元オッサンは今日も行く!

処理中です...