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第三章 世界に降りかかる受難

第514話

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 昨日は連続で召喚され、午後はドラゴンさんを新居にご案内。
 ゴブリン菜園は他のドラゴンも暮らしているので、卵を奪われ、自ら取り戻しに行ったドラゴンさんを勇者と褒めたたえて受け入れてくれました。

 これでいつでも会いに行けるよ、子が孵ったら抱っこさせてもらおう。
 涼玉より軽いといいなぁ。

「僕はこれでも忙しいので、要件は手短に」

 本日の僕の予定は、朝食を食べたらシャムスと遊びに行って、お昼になったら帰宅してご飯を食べて、午後は涼玉とロデオ、収穫を終えたらそれをイネスの聖地にお届け。
 なかなか忙しいスケジュールだというのに、また召喚されてしまいました。

 呼び出したお姉さんもびっくりしている。
 チラッと後ろを振り向いたら女神像、どうやら神様を呼び出したというより、神に祈りながら愚痴というかお悩み相談というか、まぁそんな感じのことをしていたっぽい。
 女神様なら声だけ聴いていることも出来そうだけど、僕はなぜ呼び出される形になっているのかな?

 うむむ、つまり要件を手短にと言っても、そもそも人に話すつもりはないのだろうか。

 お姉さんと見つめあって困っていたら、この教会の司祭さんが現れた。
 僕を見てちょっとびっくりした後、刀雲の手より大きなペロペロキャンディをくれたので迷わずペロペロ。これはフルーツキャンディ、しかも色ごとに違う味が楽しめる高級品、やるな司祭!

 噛み砕こうとしても無駄だった。
 ただでさえ異世界の食べ物に対し歯が立たないのに、今はいつもより小さくなってさらに顎が弱くなっている。
 これはもう大人しく舐めて食べるしかない。

「あぐあぐ」
「なるほど、なるほど」
「もぐもぐ」
「そうですか、それで……」

 これは舐めるだけでも顎が痛い!
 疲れてきた!

「おじいちゃん顎痛い」
「それはそれは……」

 苦情を訴えたらシャムスのお顔ぐらい大きな肉まんを渡された。
 ほかほかです。
 渦巻きがちょっぴり欠けた飴はアイテムボックスにしまい、肉まんを食べることを優先します。

「あちち」

 作りたてのように温かい肉まん、さてはお主、時間停止のアイテムボックス持ちだな。
 ……刀国では結構普通だった。

 この肉まん、皮は涼玉のお腹のようにふかふか。
 一個は大きいのでえっちゃんと半分こしよう、二つに割った途端に溢れ出す肉汁、みっちり詰め込まれた具がお腹をほかほかと温める。んまんま。

 我が家の肉まんと違ってこれは味付けがちょっぴり甘め、今の僕にはちょうど良い。
 そう言えば刀雲がこっそり激辛肉まんを作っていて、盗み食いしたアー君が酷い目にあっていたなぁ。
 我が家って盗み食いも命がけというか……怖い怖い。

 けふっと一息ついたら司祭さんとお姉さんの会話も終わったようです。
 口を開く前に温かいホットココアをもらった。この世界、ココアって普通には手に入らないよね? 刀国から輸入したのだろうか?

「神子様、こちらの方は婚約者に浮気され、婚約解消を願っても彼女の実家の後ろ盾目当てに拒否されているそうです。浮気相手は定番の男爵令嬢ですよ」
「だめなやつ!」
「きっと初夜の場で「お前を愛することはない」とか言うのでしょうね」
「令息だったらワンチャンあったかもしれない」
「……」

 司祭さんが困ったように微笑んでいる。
 立場的に肯定出来ないか。

「お姉さんを性転換させて相手を調教する?」
「いっそその手も……」
「いえ、それはちょっと」

 拒否された。

「ご両親は健在?」
「いいえ、母は私が五歳の時に」

 パパは再婚もせず、仕事が恋人状態の独身男性。
 じゃあ方針は決まった。

 管理画面を出します。
 お姉さんの婚約者の相手を、お姉さんからお姉さんのパパに変更。一丁上がり。

「元婚約者が新しいママになるかもしれないけど、そこは受け入れてね」
「え?」
「僕帰ります、肉まんごちそうさまでした!」
「いえいえ。これも神に仕える私の仕事ですから」

 一仕事終えた僕は帰宅後、予定を変更してシャムスとは夢の世界で遊びました。
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