上 下
506 / 750
第二章 聖杯にまつわるお話

第496話

しおりを挟む
 ところで連日遊び歩いている僕ですが、女神様の代理は続行中です。
 孫と遊び倒した数日間は騎士様が代理をしてくれたけど、えっちゃんからの希望で再び交代です。

 騎士様この世界の持ち主だし、代理もなにもそれ本職なんじゃ……。

 慈愛の微笑みを浮かべるカイちゃんが孫を迎えに来て、帰る前にお子様大好きメニュー尽くしの夕食を振舞った昨日、今日は賑やかさが半減でちょっと寂しい。
 また砂漠の国に遊びに行こう。

 そして本日、一件目。
 目の前には闇落ち寸前の成人男性、「俺は愛されずに育った。不幸だ。世界を恨んでやるぜ」というたまに見かけるタイプです。

「愛されずに育ったならこれから愛されればいいんじゃない?」

 死んだ目で「それが出来たら世の中恨まない」と返された。
 えー、そうかなぁ、女神様は不憫系大好物だけど、その先にハッピーエンドがあるのが約束されてこそ不憫系が輝くとか言ってる人だから、不幸なままではないと思うんだけど……。

「とりあえず好み聞いてもいいですか?」
「は?」

 人を呼び出しておいて対応が塩すぎる。

「男女どちらがいいか、筋肉の有り無しとか、自分を虐めてくれる人がいいとか、そういうの」
「虐める相手を求める訳ないだろ」
「えっ、そういう性癖もあるって聞いたけど? 虐待受けているうちに何かそれが気持ち良くなって戻れなくなるとか聞いた」
「ねぇよ」

 そちらの扉は開いていなかったようだ。女神様残念。

「俺を愛してくれるなら誰でもいい……」
「何でもいいが一番困るんだよね、我が家でそれ言うと謝るまで野菜尽くしになるよ」

 ヘラ母さんが手伝いに来てくれた日にアー君がそのセリフを言ってしまい、泣いて謝るまで数日間本当に野菜しか出てこなかった。
 ハンバーグすらひき肉なしの豆腐ハンバーグだった。

 今回の場合は脂ぎったおっさんオンリーかな?
 いやそれは最早罰ゲームな気がする。でも誰でもいいって言ったのこの人だし、じゃあいいか。

「女は嫌だ!!」
「おおー」
「俺を死ぬほど追い詰めたのはそもそも女!」
「ふむふむ」

 不穏な空気を察知したのか、大声で主張を始めた。
 その調子で頑張ってください。

「俺はずっと監禁されていたので読み書きが出来ない、できればそれを馬鹿にしない相手がよい、です」

 じゃあ刀国民なら誰でもいいかもしれない、人を馬鹿にしたり虐げたりすると、人間を食べたくて粗探ししてる邪神に狙われるから……。

「ショタボーイと筋肉だるまどっちがいい?」
「なんでその二択?」
「知っている独身者がその二択なの」

 ショタはシヴァさんが他国から次々連れて来るため、常に新しい子がいます。
 他国なので当然言葉が通じない場合もあるけれど、そこは刀国民、神様にお願いしてどうにかしてるらしい。

 筋肉だるまは冒険者の皆さんです、日頃から神薙さんやアー君に嫁が欲しいと叫んでいるし、一人ぐらいなら不憫系を受け止める器のあるおっちゃんいるだろう。
 あー、でも、監禁されてたなら家事全般出来ない?
 練習すればいいか。いざとなったらヘラ母さんの所で花嫁修業だ!

「よし、じゃあ行き当たりばったりでいこう」
「……は?」

 すっごい低い声で返されたけど気にしない、ではえっちゃん刀国の冒険者ギルドまでお願いします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

悪役令息に憑依したけど、別に処刑されても構いません

ちあ
BL
元受験生の俺は、「愛と光の魔法」というBLゲームの悪役令息シアン・シュドレーに憑依(?)してしまう。彼は、主人公殺人未遂で処刑される運命。 俺はそんな運命に立ち向かうでもなく、なるようになる精神で死を待つことを決める。 舞台は、魔法学園。 悪役としての務めを放棄し静かに余生を過ごしたい俺だが、謎の隣国の特待生イブリン・ヴァレントに気に入られる。 なんだかんだでゲームのシナリオに巻き込まれる俺は何度もイブリンに救われ…? ※旧タイトル『愛と死ね』

追放されたボク、もう怒りました…

猫いちご
BL
頑張って働いた。 5歳の時、聖女とか言われて神殿に無理矢理入れられて…早8年。虐められても、たくさんの暴力・暴言に耐えて大人しく従っていた。 でもある日…突然追放された。 いつも通り祈っていたボクに、 「新しい聖女を我々は手に入れた!」 「無能なお前はもう要らん! 今すぐ出ていけ!!」 と言ってきた。もう嫌だ。 そんなボク、リオが追放されてタラシスキルで周り(主にレオナード)を翻弄しながら冒険して行く話です。 世界観は魔法あり、魔物あり、精霊ありな感じです! 主人公は最初不遇です。 更新は不定期です。(*- -)(*_ _)ペコリ 誤字・脱字報告お願いします!

甥っ子と異世界に召喚された俺、元の世界へ戻るために奮闘してたら何故か王子に捕らわれました?

秋野 なずな
BL
ある日突然、甥っ子の蒼葉と異世界に召喚されてしまった冬斗。 蒼葉は精霊の愛し子であり、精霊を回復できる力があると告げられその力でこの国を助けて欲しいと頼まれる。しかし同時に役目を終えても元の世界には帰すことが出来ないと言われてしまう。 絶対に帰れる方法はあるはずだと協力を断り、せめて蒼葉だけでも元の世界に帰すための方法を探して孤軍奮闘するも、誰が敵で誰が味方かも分からない見知らぬ地で、1人の限界を感じていたときその手は差し出された 「僕と手を組まない?」 その手をとったことがすべての始まり。 気づいた頃にはもう、その手を離すことが出来なくなっていた。 王子×大学生 ――――――――― ※男性も妊娠できる世界となっています

愛されなかった俺の転生先は激重執着ヤンデレ兄達のもと

糖 溺病
BL
目が覚めると、そこは異世界。 前世で何度も夢に見た異世界生活、今度こそエンジョイしてみせる!ってあれ?なんか俺、転生早々監禁されてね!? 「俺は異世界でエンジョイライフを送るんだぁー!」 激重執着ヤンデレ兄達にトロトロのベタベタに溺愛されるファンタジー物語。 注※微エロ、エロエロ ・初めはそんなエロくないです。 ・初心者注意 ・ちょいちょい細かな訂正入ります。

俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね?〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜

明太子
BL
伯爵令息のエスメラルダは幼い頃から恋心を抱いていたレオンスタリア王国の国王であるキースと結婚し、王妃となった。 しかし、当のキースからは冷遇され、1人寂しく別居生活を送っている。 それでもキースへの想いを捨てきれないエスメラルダ。 だが、その思いも虚しく、エスメラルダはキースが別の令嬢を新しい妃を迎えようとしている場面に遭遇してしまう。 流石に心が折れてしまったエスメラルダは離婚を決意するが…? エスメラルダの一途な初恋はキースに届くのか? そして、キースの本当の気持ちは? 分かりづらい伏線とそこそこのどんでん返しありな喜怒哀楽激しめ王妃のシリアス?コメディ?こじらせ初恋BLです! ※R指定は保険です。

逆ざまぁされ要員な僕でもいつか平穏に暮らせますか?

左側
BL
陽の光を浴びて桃色に輝く柔らかな髪。鮮やかな青色の瞳で、ちょっと童顔。 それが僕。 この世界が乙女ゲームやBLゲームだったら、きっと主人公だよね。 だけど、ここは……ざまぁ系のノベルゲーム世界。それも、逆ざまぁ。 僕は断罪される側だ。 まるで物語の主人公のように振る舞って、王子を始めとした大勢の男性をたぶらかして好き放題した挙句に、最後は大逆転される……いわゆる、逆ざまぁをされる側。 途中の役割や展開は違っても、最終的に僕が立つサイドはいつも同じ。 神様、どうやったら、僕は平穏に過ごせますか?   ※  ※  ※  ※  ※  ※ ちょっと不憫系の主人公が、抵抗したり挫けたりを繰り返しながら、いつかは平穏に暮らせることを目指す物語です。 男性妊娠の描写があります。 誤字脱字等があればお知らせください。 必要なタグがあれば付け足して行きます。 総文字数が多くなったので短編→長編に変更しました。

主人公に「消えろ」と言われたので

えの
BL
10歳になったある日、前世の記憶というものを思い出した。そして俺が悪役令息である事もだ。この世界は前世でいう小説の中。断罪されるなんてゴメンだ。「消えろ」というなら望み通り消えてやる。そして出会った獣人は…。※地雷あります気をつけて!!タグには入れておりません!何でも大丈夫!!バッチコーイ!!の方のみ閲覧お願いします。 他のサイトで掲載していました。

処理中です...