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第二章 聖杯にまつわるお話

第437話

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 帝国北部、隣国との境目を占領する聖地。

 隣国と通じ、帝国の情報を売っていた北部辺境伯はイネスのぺかぁで心を入れ替えさせられ、今や敬虔なイネス信者の一人。
 隣国と争いの対象になっていた場所はイネスが占領、この地を荒らす者がいたら脳筋信者が地獄の底まで追いかけると思う。

 生きるのが厳しかった北の大地。
 最近は豊穣ドラゴンの涼玉が遊びに来るので豊作続き、北の民が全力を挙げてイネスに捧げる供物を研究しているらしいです。

 そんな中、領主の孫の坊ちゃんがふと思ったらしい。
 どうせイネス様に捧げるなら、食べたい物を捧げた方が喜ばれるよな。と。

 屋台飯からトレントの果実、豪華フルコースまで何でも食べるうちのイネス、好き嫌いは特にないけれど、好物は海老です。
 中でもSランクの特殊個体の伊勢海老で作った料理が一番好きなんだけど、さすがにそれを人間にリクエストする子ではない。

 だからきっと聞かれた時に食べたかったのがそれだったんだろうなぁって。

「聞いても、だれも知らなくてっ、もうみござましかだよれる人がいないんでず」

 鼻水と涙で顔面が大変なことになっている坊ちゃん、こちら領主のお孫さんです。
 あちこち駆け回ってすれ違うのが困難なイネスに何とか追いつき、何を食べたいか聞いた所「ラーメン」と答えが返ってきたと。

 あぁうん、そう言えば数日前に伊勢海老で出汁をとったラーメンリクエストされたなぁ。
 あれって刀国の食堂でなら食べれるけど、他国ではちょっと難しい料理だよね。基本料理文化が中世ヨーロッパぐらいの設定だしねこの世界。

 あちこちで聞いても分からない。
 途方に暮れて追い詰められて、トレントに聞いたら僕を紹介されたみたいです。
 トレントの人選が的確ですね。

 ラーメンの麺って異世界の市民が手作り出来るのかな?
 ヘラ母さんの領地では素麺が量産されてるけど、あれとはちょっと作り方違う? どうだろ?

「かあちゃ、簡単な解決方法があるぞ」
「そう?」
『ダンジョン』
「ダンジョンがあれば何でも出来る! ラーメンダンジョン作ってもらいましょう!」
「わたしの父ちゃんラーメンの麺、作れるんよ」

 これはイネスとネヴォラ、どちらを頼ればいいのだろうか。

「違う違う、そうじゃない」
『違うの?』
「ボスを伊勢海老にして周回しようと思ってました」
「無念」

 思わず真剣に検討し始めた僕を涼玉が止めた。
 どうやらどちらの意見も涼玉の案とは違ったようだ。

「ラーメンの麺、作物として実らせればいいんだよ!」
『その手があったの!』
「みゃ!」
「涼ちゃん凄いな」
「そう言えばチーズも収穫できる世界だったね」

 あれはシヴァさんの功績だけど、涼玉なら同じことを出来るという訳だ。

「うん、何とかなりそう。君のお父さん呼んできてくれるかな、イネスが呼んでるって言えばいいから」
「は、はい!」

 涙を拭いた坊ちゃんは、頬を赤く染めて元気よく返事をすると走り去っていった。

「涼ちゃんの背中に植える麺を選びます」
『パパ用に激辛ラーメン味も欲しいね』
「かあちゃメニュー画面開けてー」
「生産が安定したら父ちゃんの店にも卸して欲しいなぁ」

 メニュー画面を開き、麺を選ぼうとしたら種類が多くてびっくりした。
 極細麺から極太麺まで6種類もあるのか、味によって合う麺も分かれてくるとは奥深い。
 
 とりあえずドリちゃんがいつも作ってくれる中華麺サイズを選び、イネスに渡した。

「聖なるラーメン、聖なるラーメン、ぺっかぺかぁ」
『お腹が浄化されますよーに』

 すぐに涼玉の背に投げると思いきや、シャムスと一緒になって聖属性を込めているのですが。
 成功したら魔王様にも卸そうかと思ったけど、これは無理かなぁー?
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