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第二章 聖杯にまつわるお話

第433話

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 僕の背後で冒険者とラブラブになっていた貴族の青年Aさん。
 女神様もびっくり、彼は帝国の名門貴族の嫡男だったのです。

「さて問題です! 彼はどんな不憫を背負った人間だったのでしょうかっ!」
「女神様、暇だったらお好み焼きのタネ混ぜてもらっていいですか、具は好きに選んでもらっていいので」
「じゃあ海鮮系にしよう」

 スラム突撃の翌日、午前は子供達と果樹園で果物狩りをして遊び、お昼を食べてお昼寝をした後は夕食のメニューをみんなで考えて鉄板焼きに決定。
 具材だけ混ぜておけば後は焼くだけ、午前採ってきた果物も焼いちゃおうかな。

「あっ、エビがないです! ママどこですか!」
「エビは別に焼けばいいんじゃない?」
「ぶつ切りにして入れれば美味しいです! あと上ものせます!」
「にいちゃのはチーズたっぷりにしてやろう」
『涼ちゃんの炎で焦げ知らずよ』

 わちゃわちゃと子供達が楽し気に作業する中、女神様がやけに静かだと思ったら、勝手にメニュー画面を開いて一緒に飲むお酒を選んでいました。
 ビールかワインかそれとも果実酒か、割と本気で悩みながら「全部飲むか」とか呟いています。
 購入する際は自費でお願いします。

「そう言えば女神様」
「おう?」
「前にメニュー画面の店舗を百貨店で買い物するみたいに改造するとか言ってませんでした?」
「よく覚えてるな」
「今何となく思い出しました」
「あれな、開発する時間がなくて保留中」

 帝国の皇后としてのお仕事に加え、子育てや宅飲み、人々を見守る女神の仕事、他の女神達や他国の妃とのお茶会、実家に帰って美味しいものを食べたり、ゲーム開発、創作活動、サイン会、教会に神託を与えたりなど。まぁ忙しいらしい。
 「人々を見守る」と綺麗ごと言っているけれど、中身はただの閨の覗き見なんだろうなぁ。

「でさぁ、さっきの話! 名門貴族の嫡男君トーク、付き合ってよ~」
『粘るの』
「はしゃいでる」
「ママ、お酒を飲む前に付き合っておかないと、夕食の席で絡まれます」

 それは嫌だなぁ。

「はぁ……仕方がないか」

 言った瞬間に怒涛の勢いで不憫青年のこれまでの人生を語られた。
 両親は体の弱い弟ばかり可愛がり、跡継ぎのはずの青年には見向きもしない。
 弟は数少ない兄のものを片っ端から奪い取り、挙句に婚約者も跡継ぎの座も奪い、絶望して家を飛び出してスラムをさまよっていた所であの騒ぎに巻き込まれたらしいです。

 あれですね、「お姉さまずるいと奪いつくす妹」の性別反転バージョン。
 涼玉が好きそうな案件だなぁ。

 冒険者とでは身分差が。というのも定番だけど、冒険者として長いのでいざとなればアー君が後ろ盾になるし、青年とラブラブを見守りたい女神様もいる。
 前途多難が障害物競走ぐらいの難易度になってますね。

「このまま障害を乗り越える二人を見守るのもいいかなぁって思ったんだけどさぁ、イチャラブを見たくて神託で教皇にお願いしてどうにかした」

 女神様が使った権力は皇后の権力ではなく、女神としての権力だったようです。
 えっ、そこは皇后が後ろ盾になってどうのこうのする場面じゃ……?

『教皇が大暴れしてお兄さんが当主になったの』
「神託の使い方って合ってるのかな?」
「刀国での使い方よりはマシですね」
 
 うん、そうだね。
 刀国では神託って校内放送レベルで気軽に使われてるし、実は国民が神様に馴染みすぎて、神官や司祭などの神職に付いていなくても聞こうと思えば誰でも聞こえるらしい。
 ただ話を聞いてしまうと語りが長いので、建前として神託は神職の人に。となっているらしい。

 分かる。
 すっごい分かる。
 だって現に今も目の前で不憫系に対する語りが長い、騎士様早く帰って来ないかな。

 女神様を押し付けたいです。
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