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第二章 聖杯にまつわるお話

第370話

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 体を交換されるというとんでもない初体験を継続中の樹です。

 警備兵さんに続き、帝国兄弟がワラワラと現れ、直後に判明した事実に衝撃を受けております。
 教育に悪そうな事は視界にモザイクが入るはずが、上半身裸のおじさまを見てもモザイクが掛からない!!

 まずい、僕、スプラッター苦手なのに!
 あっ、卑猥な映像も閲覧禁止なんだっけ?

「ママ」
「ママ、が二人?」
「どっち本物?」
「えっちゃんいるな?」
「んー、俺の野生の勘がこっちが本物って言ってる」

 そう言って肉まんを食べていた皇子が僕を指さした。

「食べ歩きは行儀悪いからダメ」
「ほらな!」

 説教したら目をキラキラさせているのですが、いやこんな事で特定されると複雑な気分になる。

「じゃあこっちは?」
「怖い、お願いです助けてください!」

 皇子達の視線を受けて僕の体が警備兵さんに抱き着いた。
 止めて、止めて、僕の顔でヒロインのような言動本当に止めて。

「その人を逃がさないでください、このまま女神様の所に連れて行って後始末させなきゃ!」
「わーママ強い」
「かあちゃん今頃逃げ出す準備してるじゃねぇ?」
「あの、我らはどうすれば」
「逃げられても面倒だからグルグル巻きにして大丈夫」
「多少乱暴にしてもポンチョでダメージ受けないから、逃げられる方が問題」
「ね」
「うん」

 いい子、今度みんなにジャンクフードを大盤振る舞いするからね。

「下手に逃がしてその先で騒ぎ起こされる方がまずいから」
「主に首が」
「物理的に」
「ひぃぃ」
「腰抜かしてないで拘束しろ、あの、本当に強めで大丈夫なんですね?」
「一応ね、暴れられても困るし」
「嫌ですっ、僕が何をしたというのですか! 助けて!」
「あのな、ママはそんなセリフ言わないから」
「もうなんでこんな愉快な事になってるの?」
「人違いと女神様のテンプレ実験が混ざってこんな事になったんだよ、当分差し入れなしかな」

 ふと気付いた事がある。

「僕の本体、たまに口がパクパクしてるけどあれなんだろう」
「……もしかして過保護スキル?」
「え、あれってママを俗世の教育に悪いものから遠ざけるスキルだよな?」
「見聞き出来ないだけじゃなく、実はママも悪い言葉禁じられてた!?」
「知らなかった」
「ママぽわぽわしてるもんな」
「何よりシャムスの教育に悪いからなー」

 つまり今なら乱暴な言葉遣いが出来る!?
 何か言ってみたい、えっと、えっと……。

「お前を蝋人形にしてやろうか」
「……ママ……」

 帝国兄弟が残念そうな表情でこちらを見ている。
 どうやらセリフを間違えたようだ。
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