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第二章 聖杯にまつわるお話

第361話

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 どうやらこの世界、全体的に女神様の妄想力が支えているだけあって、強い願いや思い込みがあれば弱々しくとも神の一体ぐらい生み出すことはできるらしい。

「例えばの話、綺麗な形の石が一個あるとしよう。一人の人間がそれに神が宿っていると思い込み、何十年祈りを捧げ続け、その中で一つの幸運に巡り合う。それを石に宿った神の力だと信じ込み、周囲の人間ももしかしたら……という思いから石に祈りを捧げる。それを百年以上続ければ意思の一つも宿るってもんよ」
「石だけに」
「私のセリフ取らないでよー!」

 ようは付喪神になったものが祈りを受けて進化するみたいな感じだろうか、そう言えば前にいた砂漠の神様がそんな感じの存在だったなぁ。
 もういないけど。

 僕の知っている神々と違う最大の点は自分を信仰する人間、つまり信徒がいなくなると消滅する。
 何せ妄想と思い込みの力で成り立っている神様なので、祈りを捧げる人間の数が多いほど力が強くなるらしい。
 
 そういった感じの神様は自分が消えないために人間を栄えさせようとし、よくある感じの腐敗した国家まで一直線なことが多いようです。
 騎士様の箱庭を荒らす神。
 つまり邪神にとっての排除対象。

「人間を良い方向へ導くタイプはいないんですか?」
「元がか弱い存在だからな、どうしても人間の欲望に引きずられるんだよ。妄想の力は侮れないぜぇ」
「それは常々身に染みています」

 何せ妄想の力で男が子供を産める世界を実現する女神が目の前にいるんで。

「じゃあ女神様の管理下にない神様がいたら摘んだほうが良いんですか?」
「そりゃそうだ。他の世界なら好きにさせておくけど、ここは主様の世界だからな、そこで好き勝手させるわけにはいかねぇのよ」
「双子の無差別な留学も役に立つんですね」
「選ぶ基準があみだくじって聞いたことあるけどマジかなぁ」

 僕が聞いたのはルーレットだったので、もしかしたら毎回選び方違うかもしれない。
 
「微弱と言えど神は神だからな、邪神にとっては神聖耐性を付ける良い機会みたいで、次回もよろしくって言われてるんだ」
「邪神に力を付けさせる女神……」
「お前に言われたくないわぁ」

 ボソッと呟いたら言い返された。
 まぁ確かに。
 僕の謎能力の影響なのか、邪神がかつてなく増えまくってますね。
 数年前は騎士様が増える邪神に頭を抱えているのをよく見たものです、最近は諦めているのか遠い目をして遠くを見るだけだけど。

 一番の懸念は食糧不足からくる邪神の暴走だったけど、涼玉の愉快なパワーで解決、あとダンジョンの設定変更という手もある。
 この世界にいる限り飢えることはないと分かっているから、神薙さんも神薙さんの家族も世界の外に興味は示さないのはきっと良いことなんだろう。

「そろそろ秋の味覚ダンジョンに一狩り行きたい時期ですね」
「あぁいいな、あそこに行くなら弁当も特に必要ないし……ないよな?」
「人数によると思います、大人数で行くなら屋台や食事処で食べるより、採取したものを自然の中で調理してバーベキューが喜ぶと思いますよ。でもおやつとしておにぎりやサンドイッチはあった方が安心ですね」

 あれこれ会話しながら何とか大量のサンドイッチを完成させることが出来ました。
 刀雲と騎士様にはサンドイッチとは別にお揃いのお弁当も作ってみた。きっと喜ぶだろう。

「じゃあそろそろ行きましょうか」
「あっち行ったら酒飲んでいい? もう疲れた」
「はいはい」

 女神様にしては真面目に作ってくれたので、まぁこの辺で解放してあげよう。

「サワー系よりビール飲みたい、ビール」
「はいはい」

 完成したサンドイッチをアイテムボックスに入れ、枝豆も食べたいと言い出した女神様と一緒にキャンプ場へ出発します。

「冷ややっこもいいなぁ」

 おっさんみたいな事を言い出した。
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