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第二章 聖杯にまつわるお話

第353話

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 セティの街に超高級焼肉店が爆誕したので遊びに来ました。

「え、高級なの?」
「竹を内装に使ったら高級店っぽい雰囲気になったから、そのまま高級店にした」
『落ち着く雰囲気よ』
「タケノコ狩り行ったろ、あの時についでに竹も刈り取ったんだ。それを内装に使った」
「洗練されたデザイン、触れたことのない文化、涼ちゃんが興奮したら竹も張り切っちゃったんです」

 建築家として頭角を現した一部のマンドラゴラが、竹のシンプルさを巧みに利用し、芸術的な内装を実現。
 和を極めたような内装に涼玉興奮、調子に乗った竹によって両隣の建物が突き破られ、破損したそちらの建物を買い取り別の店を開店したそうです。

「ツッコミが、追いつかない!」

 久々に情報量が多いね!
 そしてお店の場所は僕が迷子になった時にふらっと中を覗いたあのお店だった。

「右隣は竹を使った雑貨屋」
「左は和食の料理店です!」
『セティのための和食料理店よ』
「タケノコが採れまくって止まらないから、地元民に消費してもらわないと困る」
 
 涼玉の興奮が中々収まらず、好き放題成長した一部の竹は自我を持ったとか持たないとか。
 そこから筍が死ぬほど増えるので、さっさと店を開店させて消費しないと、砂漠の街が竹林の街になる勢いでヤバいそうです。

 和食店の店長に抜擢されたのは、アペプの妊娠中に料理を強制されていた魔人。
 あれこれと試行錯誤する中で和食の奥深さに目覚め、店を持ちたいとセティに相談中だったらしい。

 竹を使った雑貨店を担当するのは年を理由に大臣を引退したがっていたご老人。
 引退出来たと思ったら新しい仕事を押し付けられるという詐欺のような展開、家族も巻き込まれてぎゃぁぎゃぁ言いながら開店準備に追われているようです。
 セティ容赦なし。

「竹かご出来ましたぞ!」
「まぁ合格かな、曲がってるけど売り物にはなんのよ」

 雑貨店で売る竹道具は現在製作中。
 作り方の指導はネヴォラ、魔人はいるけど彼は指導される側ですって。
 店主を押し付けられたご老人と、その家族が必死になって竹を加工、その背後では竹が自らを加工して竹かごを作っているけど……まぁ、働き手は多い方がいいよね。

「開店準備やもろもろに確かにお金はかかったみたいだけど、絶対にこれは豪遊とは違う」
「だよな」
「はいです」
『ママ残念』
「儲かる予感しかしない、セティ御用達は約束されているからな!」

 涼玉の言う通り、セティが通えばセバスチャンや魔人も通うだろうし、赤字にはならないだろうなぁ。
 あと悪魔って何気に和食好きだよね、セバツーは文句を言いつつもお茶の世界から帰ってこれないし。

「店で飲める酒の中で一番の高級なのがこちら!」

 とりあえず焼肉店に入ったらずらりと並んだ竹にお辞儀をされた。
 ねぇ生きてない?
 この竹、普通に生きてない!?

 僕が竹を見上げてあんぐりしていたら、アー君がスパンと竹を斬った。

「これ竹酒、気付けにもなるぐらい強いってとうちゃが言ってた」
「褒めた涼が竹を誉めたら競って作るようになって、仕方ないから店で出したら目茶目茶売れた」
『カイちゃんにも贈ったの』
「あっちでも元気に伸びてるってお返事きました」

 肉は竹が焼いてくれました。
 涼玉の炎で焦げ知らずとはいえ、内装が入ってこないぐらい脳内が混乱したままでした。
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