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第二章 聖杯にまつわるお話

第330話

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 古の遺跡が神々の宝物庫に大変身。
 ダンジョン難易度としてはSSS、出入りできるのは断崖絶壁の崖側からのみ、ただし濃い霧に覆われていてまず侵入が難しい。
 霧ちゃんの過保護が限界突破してるから。

 遺跡を守る最強のボスは謎能力やスライムで強化&進化したゴーレム君。
 衛兵として空豆から分離したマンドラゴラ、スライム、スライムで強化された妖精戦士、水辺はアー君の役に立ちたくて抗議し続けていたサハギンやトラちゃんの息子夫婦。

 ここまで過剰に守られていて、それでも侵入を果たせたらお宝を一つぐらい上げたいような気もするけど、半分以上イネスの宝物だからなぁ。
 持ち帰って大丈夫なのは空豆ぐらいかもしれない。

 そんな事を思いながら地上に戻ったら大変なことになっていました。
 小さなオアシスがリゾート地みたいに整えられていた。

 トレントなんてヤシの木の下に長椅子作ってくつろいでいるし、ドリアードはせっせと眷属を増やしてオアシス周りに食べれる植物を増やしている。
 おじいちゃんはどこだろう、木が生い茂げっていて姿を見つけるのはちょっと無理かもしれない、諦めよう。

「かあちゃ、あっちにあった簡易小屋がプール付き豪邸になってた」

 寛ぐトレントに呆れていたら、興奮した涼玉がこちらに走ってきた。
 いや走っているのは涼玉を抱いたマールスだけど、二人で一人みたいなものだし問題ない。

「おじいちゃん生きてるかな、心臓止まってない?」
『うーん』
「あとサボテンがダンスしながら家具作ってた」
「見に行きます!」
「行くぜ!」

 僕らが遺跡探検をしている間にいったい何が……。

「かあちゃん、俺はオアシスに魚放してくるな」

 僕らはどうしよかなと少し悩んだけど、豪邸に興味があったのでシャムスと一緒に移動。
 僕らを出迎えたのは、いつだったか女神様が見せてくれたアルバムに載っていたドバイにある有名ホテル内にあるプール。
 砂漠を臨めるプールがあって、シャムスの名前がホテル名に入っているから覚えてる。

 豪邸はセティの離宮を参考にしたのかな、近くに寄ったらマンドラゴラが冊子片手にサボテンに何やら指示を飛ばしていた。
 後ろから覗いたら女神様に見せてもらったあのアルバムだった。借りたのかな。

 しかもゴーレムも増えてるし。
 僕とシャムスを救出するために目覚めたゴーレム君は遺跡守護のために下に残ったから、僕らの目の前で忙しく働き、マンドラゴラに無茶ぶりをされているのは別のゴーレムだろう。
 なんか、ごめんね、うちのマンドラゴラが横暴で。

「はーこりゃいいな、パラソルどの辺に置くかなぁ。あとは酒に美味いものも食いたいし、食材の仕入れ先はイツキに頼めばいいか」

 マンドラゴラから離れ、プールサイドを一周して戻ったら女神様がいた。
 ふわりと風に揺れるワンピースを着て、サングラスに麦わら帽子、どう見てもリゾート地に遊びに来たセレブにしか見えない。

「女神様」
「うぉっ!」
「なんでここに?」
「あ、ヨムにプール作りたいからアルバム貸してくれって頼まれてさ、話をよく聞いたら面白そうだから遊びに来る権利と引き換えに貸した」

 犯人はヨムちゃんだったか。
 まぁ地球の観光スポットを再現するのに女神様ほど適した情報源はないからね、ギレンもセレブの類に入るけど写真に綺麗なお姉さんが写っていたりするから封印したらしく頼りにならない。
 嫁が怖いんだね、ギレン。

「おじいちゃん、心臓発作で倒れてたので春日しゃん呼びました」
「刺激強かったんよ、オアシスの近くに小屋建てて、そっちに移動させた」

 春日さんを呼んだ……つまり、心臓止まってたんだね。
 死んでも生き返らせて植物を増やし続けさせる、ブラック企業も真っ青な職場です。

 イネスに魅了されているから逃げることも思いつかないだろうし、贖罪って大変なんだなぁ。
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