313 / 802
第二章 聖杯にまつわるお話
第306話
しおりを挟む
通せんぼしていた理由が判明した。
刀雲達に混ざって久しぶりに入った果樹園、シャムスと一緒に霧に乗せてもらって移動したその先、果樹園の中心地に黄金でも虹色でもない、光り輝くクリスタルの林檎が実る木……え?
「これかぁ」
アー君たち、最近は魔物も作らずいい子にしていると思ったら大間違い、違う方に精を出していたようです。
何をどう研究したらこんな林檎を作れるんだろうか。
『改良中よ、まだ食べれないの』
「食べれなければ意味がないからな、これはただの聖なるクリスタルだ」
ただの聖なるクリスタルってなんだろう?
異世界ってそういうのが木に実るとか?
そう言えば以前に神薙さんに捧げるためとか言って、宝石の生る木を作り出した一族いたね。
うん、人間に作れるんだから、アー君らなら作れるか。
「いつかこれが食卓に載るのか……ちょっと嫌だな」
「効能的に刀雲が強化されちゃうね」
今のところ食べれるのって神薙さんぐらいじゃない?
あの人、邪神としてレベルが天元突破してるから、ヒヒイロカネも噛み砕けるらしい。
騎士様は神薙さんを止めることを諦め、全てを達観した瞳で僕に「神薙のことは任せた」と言ってきました。それでいいのか神々の上司。
参加者の皆さんは聖なるクリスタルを眺めた後、それぞれ収穫をするために散っていった。
こういう時、アイテムボックスがあると楽ですね。
「イグちゃんあれ食べれる?」
「うーん、ちょっとレベルが足りないかなー? 近寄るのもちょっと危ない、俺じゃなくてこいつが」
「ぴぃ」
聖なるクリスタルの木から離れた場所に立つトレントの後ろに隠れながらの返答、これは今までで一番厄介な聖属性なのでは?
いやそれ以前に、なんでトレントが我が家に?
いつ引っ越ししてきたのだろうか、それとも果樹園の木が進化した?
何が何だか。
「弾かれるっていうのかな、一定以上近付けない」
「……それ、結界張られてないか?」
「ああ!」
刀雲の言葉にイグちゃんがそれだと言わんばかりに頷く、どうやらクリスタルの聖属性が高レベル過ぎてイグちゃんは認識できていなかったみたい。
ただ本能でそれ以上近付くのは危険と判断していたようです。
「あの林檎、魔物除けとして使えないか? 常時使えないにしても、スタンピードの時に使えれば悲劇を減らせると思うんだが……アー君に頼んだら譲ってくれるか?」
「あげゆ」
「うむ、ただの林檎だからな、また実る」
アー君にお願いするまでもなく、シャムスの許可が下りたので聖なるクリスタルはその場で収穫されて刀雲の手に渡った。
涼玉がいる限りあの林檎が延々と量産されるとか、異世界って怖いですね。
「刀雲、魔物と融合してなかったっけ?」
「スライムがいい感じに取り込んだから特に問題ない」
「シャムスのスライムすごいね」
『えへへ、いっぱい持っていっていーのよ!』
「シャムスの慈悲だ、好きなだけ持っていくがいい」
聖なるクリスタルの周囲に霧が集ったかと思ったら、刀雲の腕の中に林檎がドサドサーっと降り注いだ。
大盤振る舞いですね、イグちゃんが逃げて行ったよ。
刀雲達に混ざって久しぶりに入った果樹園、シャムスと一緒に霧に乗せてもらって移動したその先、果樹園の中心地に黄金でも虹色でもない、光り輝くクリスタルの林檎が実る木……え?
「これかぁ」
アー君たち、最近は魔物も作らずいい子にしていると思ったら大間違い、違う方に精を出していたようです。
何をどう研究したらこんな林檎を作れるんだろうか。
『改良中よ、まだ食べれないの』
「食べれなければ意味がないからな、これはただの聖なるクリスタルだ」
ただの聖なるクリスタルってなんだろう?
異世界ってそういうのが木に実るとか?
そう言えば以前に神薙さんに捧げるためとか言って、宝石の生る木を作り出した一族いたね。
うん、人間に作れるんだから、アー君らなら作れるか。
「いつかこれが食卓に載るのか……ちょっと嫌だな」
「効能的に刀雲が強化されちゃうね」
今のところ食べれるのって神薙さんぐらいじゃない?
あの人、邪神としてレベルが天元突破してるから、ヒヒイロカネも噛み砕けるらしい。
騎士様は神薙さんを止めることを諦め、全てを達観した瞳で僕に「神薙のことは任せた」と言ってきました。それでいいのか神々の上司。
参加者の皆さんは聖なるクリスタルを眺めた後、それぞれ収穫をするために散っていった。
こういう時、アイテムボックスがあると楽ですね。
「イグちゃんあれ食べれる?」
「うーん、ちょっとレベルが足りないかなー? 近寄るのもちょっと危ない、俺じゃなくてこいつが」
「ぴぃ」
聖なるクリスタルの木から離れた場所に立つトレントの後ろに隠れながらの返答、これは今までで一番厄介な聖属性なのでは?
いやそれ以前に、なんでトレントが我が家に?
いつ引っ越ししてきたのだろうか、それとも果樹園の木が進化した?
何が何だか。
「弾かれるっていうのかな、一定以上近付けない」
「……それ、結界張られてないか?」
「ああ!」
刀雲の言葉にイグちゃんがそれだと言わんばかりに頷く、どうやらクリスタルの聖属性が高レベル過ぎてイグちゃんは認識できていなかったみたい。
ただ本能でそれ以上近付くのは危険と判断していたようです。
「あの林檎、魔物除けとして使えないか? 常時使えないにしても、スタンピードの時に使えれば悲劇を減らせると思うんだが……アー君に頼んだら譲ってくれるか?」
「あげゆ」
「うむ、ただの林檎だからな、また実る」
アー君にお願いするまでもなく、シャムスの許可が下りたので聖なるクリスタルはその場で収穫されて刀雲の手に渡った。
涼玉がいる限りあの林檎が延々と量産されるとか、異世界って怖いですね。
「刀雲、魔物と融合してなかったっけ?」
「スライムがいい感じに取り込んだから特に問題ない」
「シャムスのスライムすごいね」
『えへへ、いっぱい持っていっていーのよ!』
「シャムスの慈悲だ、好きなだけ持っていくがいい」
聖なるクリスタルの周囲に霧が集ったかと思ったら、刀雲の腕の中に林檎がドサドサーっと降り注いだ。
大盤振る舞いですね、イグちゃんが逃げて行ったよ。
30
お気に入りに追加
142
あなたにおすすめの小説
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
貧乏大学生がエリート商社マンに叶わぬ恋をしていたら、玉砕どころか溺愛された話
タタミ
BL
貧乏苦学生の巡は、同じシェアハウスに住むエリート商社マンの千明に片想いをしている。
叶わぬ恋だと思っていたが、千明にデートに誘われたことで、関係性が一変して……?
エリート商社マンに溺愛される初心な大学生の物語。
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
その男、有能につき……
大和撫子
BL
俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか?
「君、どうかしたのかい?」
その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。
黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。
彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。
だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。
大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?
更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる