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第二章 聖杯にまつわるお話

第293話

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 我が家の庭が一気に賑やかになりました。
 なぜかって、クラーケンが番を見つけてからの子だくさん、全身イカな子と、下半身だけイカな子が元気よくダンスを踊っています。
 マンドラゴラと。

 サイズがほぼ同じだからなんかシンパシーを感じたようで、一緒に謎のダンスを始めたと思ったら、そのまま仲良くなったようです。
 もう何がなんだか。

 ただ庭の池の主はトラちゃんとトラちゃんのお嫁さん、クラーケンを始めとした生き物は部下枠。
 実質No.1はお嫁さん、No.2がトラちゃん、No.3がクラーケンと彼らなりの順位があったと最近知りました。

 そのトラちゃん夫婦に水の使い方を習ったクラーケンの子供たちは、最近では果樹園に出張して収穫や水くれを手伝っているんだよね。
 力加減を間違えてイネスに水をぶち当ててしまい、追いかけられている姿をこの間見ました。

「っは! このミニクラーケン、ネリちゃんの所に派遣出来ないかな!?」

 水くれから収穫まで出来ると思うんだよね!

『働きたいかー!?』

 ぴゃーーーー!!

 シャムスの問いにミニクラーケンが一斉に逃げ出し、池へと戻ってしまった。

『いやだって』
「かあちゃ、働きたくないって」
「なんて正直な」

 ダンジョンで出会った魔物が誰もレモン国に派遣されてくれない。
 アー君が子分にしたサハギンも庭に来ようとしていたけれど、ギョロギョロっとした目が怖いので遠慮してもらい、うちの子たちが開拓したキャンプ場で暮らしています。
 自分も番が欲しいとチラチラこちらを見ていたけど、僕、半魚人はちょっと苦手かな。

 うーむ困った。
 ダンジョンに行ったけど、結局二匹の魔物を仲間にして、美味しい物を食べて帰ってきただけなんだよね。

「そんな母様に朗報です!」
「僕らだってただ遊びまわっているだけじゃない!」
「刀羅、鬼羅」

 留学という名目で他国を渡り歩いている双子が座敷に乱入してきた。
 最近はやることが多すぎて実家に寄る暇もなかったらしく、本当に久しぶりの帰宅です。

「今いる国の隣国なんだけど、裏で奴隷売買が行われているんだ」
「もちろんスラムもあるみたい! 全て奪えば労働力!!」
「ひよこ豆のスープの出番だな!」
『国ごと? それとも裏から?』
「正攻法を取る気はない!」
「だって裏の組織が相手だからね! はい母様これリスト!」

 真偽の確認を邪神兄弟に頼んだみたいだけど、あちこちでつまみ食いをしたので調査が遅れたようです。
 国ごと真っ黒ならいい餌場だったんだろうなぁ。

「諜報活動の練習にはちょっと難易度高すぎたかな」
「イグちゃんたちがつまみ食いをしすぎて警戒されたのもあるけどね」
「リストを見る限り、子供が少なすぎませんか?」
「っぴゃ!」

 いなかったのに!
 双子が現れる前も後もいなかったはずなのに!
 突然カイちゃんが現れた!
 驚きすぎて変な声出ちゃったよ。

「ほとんどの子供は某守護神が保護してる。リストに載っているのは親から離れないか、神を拒絶したかどっちかだって聞いてるよ」
「アー君との約束があるから、渋々女の子も保護しているみたい」

 保護した女の子の数が圧倒的に少ないのは、そもそもこの世界は女性が少ない世界でした。
 刀国は女性が普通に暮らしているから忘れてた。

「保護した後はどこへ?」
「僕らの滞在している国に強制的に孤児院を建てさせて、国のお金で経営させてる」
「ただそこまで豊かな国じゃないから国庫を圧迫してる感じかな」
「ではその子供たちは私の方で引き取りましょう、だいぶ余裕が出てきたのでそろそろ後続を育てたいのです」

 冒険者や悪魔、魔人がセティにこき使われた苦労が報われている!!

「大人はシャムスとイネスがダブルでぺかっとすればどうにでもなるでしょう、戦闘タイプがいたらその者も引き取りたいところではありますね」
「分かった。保護したら希望聞いてみる」
「いちいちプロフィール聞くの面倒だし、鑑定スクロール使おうよ」

 不穏な会話を続ける双子とカイちゃん、幼児たちはどうしているかと思ったら、庭でマンドラゴラたちと一緒にお尻フリフリダンスを踊っていた。
 もちろんミニクラーケンも一緒に踊っています、マンドラゴラとも仲が良い上にダンスも上手、涼玉も楽しそうだからこのまま居つくんだろうなぁ。
 でも池で生活すると釣りついでに狩られちゃうので、暮らす場所は別の所にしてもらおう。
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