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第二章 聖杯にまつわるお話
第269話
しおりを挟むさて霧ちゃんがどんな存在か大体分かった所で、暴走を止める方法を改めて考えることになりました。
「雷、何かいい案ないか?」
『雷ちゃん』
「うむ……いっそ暴走させてしまうのも一つの手だと思う、その際の生死は不明だが」
「夢の世界なら俺らのイメージでどうにでもなるしな」
「じゃぁじゃぁ、猪サイズの伊勢海老が可能なんですね! むぅぅぅん!!」
アー君の呟きにイネスがぴかーんと目を輝かせ、僕の膝に飛び乗ったと思ったら何やら念じ始めた。
僕にくっついたのは謎能力の恩恵を受けるためかな?
『伊勢海老出たよー』
「でけぇ、ただの猪じゃなくて、山神サイズだぞ、しかも激おこ状態」
「狩りましょう!」
楽しく安全に遊ぶため、足首までしか深さがないはずの川から一トントラック並みの大きさを持つ伊勢海老が出現した。
凄いね、イネスの想像以上に大きいの出たよ。
でも被害がね、伊勢海老こっち来たぁ!
「イネス、今お話合いの最中! 雷、あれやっつけちゃって!」
「あい分かった」
バグ
アー君にお願いされた雷ちゃんが動くより先に、川から出現した黒い鱗を持つ蛇が巨大伊勢海老に食いついた。
夢の世界とは言え、あの川の構造どうなっているんだろう。
「ラン、そのまま食っちまえ!」
「あー! ランちゃんダメーー!!」
アー君の言葉に暴れる伊勢海老を踊り食いする巨大蛇の正体は、夢の世界で生まれ育ったラミアちゃんの息子であるランちゃんだった。
体が大きすぎる上、その姿を見ただけで災いを振りまいてしまうため現世に出すことは出来ない。ここまでなら本来悲観してもおかしくない生い立ちだけど、当のランちゃんは夢の世界でのびのびと過ごしている。
伊勢海老を横取りされたイネスがぷりぷり怒りながら、ランちゃんの鱗に猫パンチをしているけど、大きさの関係もあってダメージは入っていないっぽい。
そもそもランちゃんはイネス大好きだから、猫パンチはだたのご褒美です。
「あー……それで、どうする?」
『スライム!』
「ん?」
イネスが呼び出してしまった伊勢海老に気を取られて気付くのが遅れたけど、何やらシャムスが肉まんサイズのスライムを一匹作っていた。
いつも作るスライムよりちょっと小さめかな?
『いけー』
「ぽよよよん」
気の抜けた音を発しながらスライムが霧ちゃんに飛び掛かり、小さなサイズから一瞬で投網のように広がって霧ちゃんを覆い隠した。
霧ちゃんも霧ちゃんで、抵抗どころか逃げるそぶりすらなくスライムに丸呑みされちゃったし、あれはすでに力関係がハッキリしてるって事なのかな?
「その手があったか」
「うん、真面目に解決しようとした俺らが悪い!」
もごもごされて、スライムが溶けるように霧ちゃんと一体化したら全て解決してました。
髪の毛の色が黒から白へと変わったこととか小さな事だと思う、だってどう見ても霧ちゃん、体が一回り小さくなってる。
憤怒の荒ぶる筋肉ゴリラが、進化してクールタイプの細マッチョになったよ。
「さすがシャムス! 凄い凄い!」
「シャムス兄が世界一!」
『えっへん!』
「解決した所で伊勢海老もう一回!」
イメージの仕方を覚えてしまったイネスがドヤ顔で伊勢海老を追加召喚した。
しかも今度は二匹。
その後、新しい遊びを覚えてしまったイネスが満足するまで伊勢海老狩りをしました。
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