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第二章 聖杯にまつわるお話

閑話 ギルドに届けるまでが救援です①

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 俺たちはBランクパーティー、いつかドラゴンとか倒してカッコイイ感じの二つ名が付く事を夢見てあちこちのダンジョンを渡り歩いている。
 ただし命大事にをモットーにしているため、自分達では敵わない敵には挑まないし、厄介ごとに巻き込まれたくないので貴族にも関わらない。

 そう、俺たちは一獲千金を夢見てはいるが、それ以上にヘタレ根性の持ち主が集まったパーティーだった。

「洞窟から出たら地形変わっているとかシャレにならねぇな」
「雨宿りに入っただけなのに、こんな目に合うなんて」
「木の実は豊富だから食うには困らないけど、若干遭難してるよね俺たち」
「薬草見つけましたー! 水場探してポーション補給しましょう!」
「確実に言えるのは、ロイが新メンバーとして加入してなかったら俺ら死んでただろうな」

 突然の豪雨に見舞われ、偶然見つけた洞窟に避難したまでは良かった。
 濡れた服を乾かすために火をおこし、冷えた体を温めあううちに別の熱が付いて、雨が止んだのも気付かず盛っていたら突然地面が揺れて洞窟が崩壊してそれに巻き込まれた。

 一寸先も見えない闇の中に全裸で放り込まれ、本来なら絶望して生を諦めるしかなかっただろう、だが俺たちのメンバーにはこのやたら明るいロイがいた。
 ガサガサ音がすると思ったら焚火に火をともして野営料理を作り始め、煮込んでいる間にバラバラに落ちた俺たちを回収、火の回りに集めて一人一人にポーションを配ってくれた。

 あの時点で俺たちにはロイが天使に見えていた。いや嫁か?

 当然服はどこにあるか分からなかったし、荷物もまとめて失ったと思っていたが、「落ちる前に収納しておいてよかったー」と笑顔でどこからともなく取り出し、俺たちに装備と荷物を渡してくれた。
 初見の相手にはアイテムボックス持ちだと本来なら明かさないけれど、緊急事態なので特別処置だったらしい。

 落ちた際に折れた足も、腕も、全部元通りになったのだが……あのポーション、ただのポーションではなく上級ポーションだったんじゃ。
 俺らの稼ぎじゃ手が届かない高級品なんだが、どう恩に報いればいいのだろう。

 全員生存していて荷物も装備も無事、奇跡的な状況の中で休息をとって一寝入りした後、起きたロイはあれでもないこれでもないと言いながらアイテムボックスを漁り、取り出したのはロープとロイの腕ほどの太さのある張り型だった。
 それをどうするんだよと思いながらも見守っていたら、突然メンバーでも一番図体がデカくて毛が濃い奴を脱がせ始めたのには驚いた。
 抵抗をものともせずに裸に剝いて、さらにロープで複雑な縛り方をしたと思ったら、嫌がる奴の尻にポーションをドバドバかけた挙句に張り型をぶち込んで言葉責めを始めたのは引いた。

 謎の責め苦は奴の目が雌になるまで執行され、蚊帳の外に置かれた俺たちは巻き込まれないように体を寄せ合ってガクブルするしか出来なかったのは仕方ないと思う。
 あれは本当に怖かった。

 最終的にロイの足を舐めるほどに従順になった所で地獄の光景は終わり、仲間を解放したロイは次に洞窟の壁に耳を当て、ひたすらトントン叩き続けた。

「来た」

 ポツリと呟かれると同時に天井が揺れて土がドカドカと落ちてきて、これでもう終わりかと思って覚悟を決めた俺たちにロイが「もうちょっと壁際に寄ってください」と指示を出してきたので大人しく壁際で肩を寄せ合った。
 やがて天井に穴が開き、ビカビカ光る小さな獣が顔を出した。

「ヤッホーです。ネヴォラお願いします」
「分かった!」

 子供の元気な声が聞こえると同時に目の前に小さな影が現れ、一瞬後には俺たちは地上にいた。

「わたしとイネス、最強のコンビなんよ!」
「エッヘン、エッヘン」

 日の下で見た救援の正体は、得意げに光る小さな豹とダークエルフの子供だった。
 ロイが騎士のように膝をついて礼を述べ、眼光鋭くこちらを見て「早く礼を!」と小声で怒鳴られた。
 言われるがまま頭を下げて礼を言うと、「気を付けて帰るんですよー」と言いながら帰っていった。

 嵐のような二人組だったが――え、このまま森の中に置き去り!?
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