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第二章 聖杯にまつわるお話

第243話

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 目の前で追放劇かと思いきや、感動系の展開だった。
 アー君は定住する冒険者が手に入ってにやにや、大団円とはこんな感じのことを言うのだろうか。

 面白いからいいけどね。

「でもさすがにアイツらだけじゃ手が回らないよなぁ、どこかに素質ありそうな新人いないか聞いてみようかな」
「クランに入れて安定性を売りに定住を進めるつもりだね」
「うん!」

 基本的に冒険者は根無し草のようなもの、ルールから外れてしまえばただの無法者になってしまう。
 ギルドはそんな者達をまとめ、厳格なルールと引き換えに彼らの身分を保証している。
 でも帰る場所がある者は案外少ないってアー君が前に教えてくれた。

 当然、刀国の冒険者は除外する。
 彼らは根無し草の真逆で刀国に根を張って滅多に離れようとはしない、たまにふらりと他国に行くことがあっても必ず刀国に戻ってくるからね。
 とことんシリアスを踏み潰す国民性です。

「よぉし、ギルドに通達して今の連中をトップクランに押し上げるぞ! 元々ライバルいないけど!」
「そんなのありなの?」
「裏から手をまわしているのがギルド統括であるこの俺なら特に問題なし!」
「それもそうだね」

 今やアー君がギルドのルールだもんね。

「そうなると、鍛冶屋の規模も今のじゃ間に合わないな」
「村の修理屋さんだもんね、冒険者が押しかけたら手が足りないねぇ」
「あれ、そうなると食事も!?」
「そうだね」
「うーんこれ以上人を増やすとなると、誰か村のリーダーが必要になってくるな。ママ知り合いいない?」
「いないかな」

 トップクランを宣伝して人を呼ぶ算段を考えるアー君と並んで村の中を歩いていたら、血相を変えた村人がこちらへやってきた。牛に乗って。

「どうした?」
「デーモン系の魔物の群れが近付いて来ています!」
「カモネギ」

 アー君がボソッと何かを呟いたと思ったら、力強く頷いて村人と牛に休むよう言い聞かせた。

「ママ行こう!」
「僕も行っていいの?」
「当然!」

 意気揚々と転移を発動するアー君、飛んだ先では涼玉達がロデオを楽しみ、村人達は魔物の襲撃に怯えながらも逃げ場所もなく、まして神々が逃げないのに自分達だけが逃げるわけにもいかずに泣きながら回収作業をしていました。
 カオスですね。

「おー、きたきた、アルジュナ様あれです」

 俵を担いだ獣人団のボスが空を指すと、確かにこちらに向かって飛来する群れが遠くに見えた。
 ちなみに朱はその向こう側で岩の狼に乗って爆走しています、皆さんマイペースですね。

「あ、見えた。山羊頭、赤い体躯、蝙蝠の翼、レッサーデーモンかな、知能が高いから会話が通じるな」
『あくましゃん』
「シャムス」
「ままぁ」

 ぴょこっとえっちゃんの闇からシャムスが出てきた。

「可愛い悪魔が出てきたと思ったぞ~」
「きゃぁ~」
「先頭にいるのだけ鎧来てるな、特殊個体ってところか。今日ここに来たのは運命だな、ふはは、会話すらも必要ない、謎能力の前に抵抗できるならしてみるがいい!」
「アルジュナ様、それ悪役のセリフっぽいですよ」
「ぼくはあくまだぞー」
「怖くて震えちゃうなぁ」
「うふふ、がおー」
「もぅシャムスが可愛いぃぃ! こんな可愛い悪魔は食べちゃおうかな!」
『きゃー!』

 シャムスと思う存分イチャイチャして、そう言えば敵襲はどうなったんだろうと顔を上げたら、赤い体を持つ悪魔っぽい集団がアー君の前に跪いていました。
 あれ、もう話し合い終わったの?
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