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第二章 聖杯にまつわるお話

第193話

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 帝国で週末を過ごし、賑やかでちょっと忙しいいつもの朝がやってまいりました。

「樹、アー君が起きない!」
「ちょっと熱めのお風呂に入れてきてください」
「イツキ、シャムスがいやいや期に入った」
『いやーん』
「甘えてるだけだと思う」
「かあちゃ、俺の殻の衣替えしたい」
「ちょっと無理なかなぁ。脱いだほうが早いと思うよ」
「ママー、今日はラーシャがいないのでダンジョンに遊びに行きましょー」
「分かった。ドリちゃんにお弁当お願いしておいて」
「はぁーい」

 嵐のような忙しさをやり過ごし、アー君らを送り出して座敷に戻ったら、期待に満ちた目をしたイネスが重箱弁当の横にお座りして待っていました。
 休む暇はないようです。

「今日はどこに行く?」
「うーんどこがいいですかねー?」
「おなべ」
「神託がおりました! 鍋を求めて三千里です!」
「俺知ってる。鍋ダンジョン、最近混ぜ込みご飯始めたんだよな」

 ダンジョンで混ぜ込みご飯?
 ちょっと意味が分からないですね、アー君のダンジョン迷走してない?

 そういう訳でやってまいりました鍋ダンジョン。
 こちらの領地にも正式名称あったはずだけど、今は鍋領地で有名です。

「いぇーい、梅、桜、筍!!」
「おにぎり、デザート、天ぷら!」
「騎士様には竹を土産に持って行ってやるか! あるか知らんけど!」

 現地ついたらネヴォラが混ざっていた。
 ネヴォラの隣ではイネスが料理名を叫んでいるけど、二人が揃うと賑やかさが倍になるよね。
 あと涼玉、お土産に竹はやめてあげて、自宅の目の前に生えているからさすがに可哀想。

「ああ春の匂いが満ちているね、見えない僕も春を感じるよ」
「薄いとは言え、四季を感じられるのは良いですね。砂漠にも何か春を告げるものがあるといいのですが」
「女神様が冬嫌いだからね……それでも温かい料理を美味しく食べたい誘惑に負けて、ちょっとだけ寒くなってたけど」

 本当にどの時点で混ざったんだろうか、家を出発する時点で綺麗処三人衆はいなかったはずなんだけどなぁ。

「野郎どもいいか、今日はとにかく春っぽいものを狙うんだ!」
「おーーっす!」

 何気に朱にべったりだよね、獣人傭兵団の皆さん。
 行くところに美味しい物があるのを分かっているから同伴率がとても高いです、仕事は良いのだろうか?

 鍋ダンジョンは今日も盛況のようです、特に近くに展開している露店が前より増えている。
 入口はただの洞窟の入口だったのが煉瓦で補強され、木の扉も取り付けられて防犯機能がアップしていた。

 つい最近も来たけど気付かなかったなぁと思ったところで思い出した、ダンジョンの中に直接転移すれば気付くはずがないですね。

「とうちゃんが茶屋で出すから天ぷらの食材死ぬほど刈って来いって言ってた」
「森の主から採取すればいいんじゃないのか?」
「森に遊びに行って戻って来ない!」
「遭難してないよな?」
『森に同化しちゃった?』
「のんびり屋だから仕方ないんよ」

 一つ目親分と子分らに見送られ、ダンジョンに足を踏み入れる。
 階段一つをとっても滑り止めが施されていたり、壁に灯りが取り付けられていたりと、一昔前より設備にお金がかかっているのが分かった。
 儲かってますね!

 そんな風にピクニック気分でダンジョンに足を踏み入れた僕を出迎えたのは、活気に溢れる魔物達の声だった。

「らっしゃぁぁい!!」
「米あるよ米! 魔素をたっぷり含んでるから魔力回復にどうだい!」
「こっちはきのこたっぷりきのこご飯!」
「春のちらし寿司あるよ! どうだい、冒険前に!」
「春の天ぷら始めたよぉぉぉ!!」

 ……あれ、ここダンジョンだよね?
 上の露店より熱気があるんだけど!
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