上 下
196 / 802
第二章 聖杯にまつわるお話

第192話

しおりを挟む
 刀雲が持ち込んだ激辛を超えたソースが原因で阿鼻叫喚の地獄が発生したけど、僕と子供達は室内で平和に食事を終えることが出来ました。
 庭で食事が終わるまで花札やトランプで遊んだけれど、その間ずっとうめき声が聞こえていたのは気のせい、あれは美味しい食事に対する声だと思いたい。

 あとですね。
 子供達に囲まれていたので気付くのが遅れたのですが……アー君、幼児姿。

 姿が逆行するほどの衝撃だったのか、刀雲の特製ソース。
 人に迷惑をかけて申し訳ないと思ったけど、ラッキーな効果もありました!
 本人が気付くまで黙っていよう、最近は精神の揺れ幅が少なくて幼児化することもほとんどなくて寂しかったんだよね。

『んー、右3と下4かな』
「シャムス強いなー」
「ぐあぁ、全然分かんねぇ」
「野生の直感が役に立たない」

 シャムスが皇子やその友人とやっているのは神経衰弱、家でも涼玉やイネスとやっているので強い強い。
 僕は膝にアー君を乗せ、抱っこしながら見学中。
 意外と気付かないものなんだなぁ、そんな所も可愛い。

 こういった勝負事は刀雲がやたら強いのだけど、現在は帝国の将軍と庭の隅に追いやられて二人仲良く特製ソースを楽しんでいるらしい。
 風向きが変わったら悲劇が繰り返されるんじゃと心配したら、どうやら騎士様のパパである珱さんが風向きを調節しているようです。過保護ですね。

「七並べで勝てない」
「選手交代しよう、俺ブラックジャックで全然勝てない」
「大富豪が意味わからない、脳から煙出そう」

 僕の生んだ帝国皇子は脳筋しかいないのだろうか。

「ババ抜きなんで負けるんだろう」
「顔に出てるよ」
「そんなぁ」

 第四皇子が優しく答えを教えてあげたけれど、顔に出さないよう力を入れた反動で全部声に出てた。
 頭脳戦無理みたいです。

「神子様、これはお茶会に入りますか?」
「どちらかと言うと昼食会?」

 首をこてりと傾げて聞いてきたのは多分相談役さんの息子さんかな、あの人の子供は全体的に天使みたいなふわふわ外見の子が多いから分かりやすい。
 中身はやんちゃだけどね。

「女神様がね、お茶会で皇子に媚を売るのは王道って言ってました」
「うん、無視していいよ」

 自分の息子に媚を売れという意味ではなく、そういう場面が見たいだけな気がする。

「媚を売るのお茶会だけでいいのかな?」
「普段はいいのかな?」
「悩むふりしてもお前らの本性知ってるから無意味だと思うんだ」
「神子様の名前に誓う、いつかお前をメロメロにさせてやる!」

 小さな天使が皇子の一人をビシリと指さして宣言した。
 どちらかと言うと女神様はそういう展開の方が好きかもしれない、なんて思った僕は甘かった。

「そんな事しなくてもメロメロだから安心しろ」
「うきゃ」

 甘い笑顔で頭をポン。仕草も行動も甘々、宣言した天使は茹蛸のようになっていました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

召喚された聖女の兄は、どうやら只者ではないらしい

荷稲 まこと
BL
国にほど近い魔境に現れた魔王に対抗するため、国に古くから伝わる"聖女召喚の儀"が行われた。 聖女の召喚は無事成功した--が、聖女の兄だと言う男も一緒に召喚されてしまった。 しかもその男、大事な妹だけを戦場に送る訳にはいかない、自分も同行するから鍛えてくれ、などと言い出した。 戦いの経験があるのかと問えば、喧嘩を少々したことがある程度だと言う。 危険だと止めても断固として聞かない。 仕方がないので過酷な訓練を受けさせて、自ら諦めるように仕向けることにした。 その憎まれ役に選ばれたのは、王国騎士団第3隊、通称『対魔物隊』隊長レオナルド・ランテ。 レオナルドは不承不承ながら、どうせすぐに音を上げると隊員と同じ訓練を課すが、予想外にその男は食いついてくる。 しかもレオナルドはその男にどんどん調子を狂わされていきーーー? 喧嘩無敗の元裏番長(24) × 超鈍感初心嫌われ?隊長(27) 初投稿です!温かい目で見守ってやってください。 Bたちは初めからLし始めていますが、くっつくまでかなり長いです。 物語の都合上、NL表現を含みます。 脇カプもいますが匂わせる程度です。 2/19追記 完結まで書き終わっているので毎日コンスタントに投稿していこうと思っています。 思ってたよりずっと多くの人に読んでもらえていて嬉しいです!引き続きどうぞよろしくお願いいたします。 2/25 追記 誤字報告ありがとうございました!承認不要とのことで、この場でお礼申し上げます。 ちょっと目を離した隙にエラいことになっててひっくり返りました。大感謝!

弟枠でも一番近くにいられるならまあいいか……なんて思っていた時期もありました

大森deばふ
BL
ユランは、幼馴染みのエイダールが小さい頃から大好き。 保護者気分のエイダール(六歳年上)に彼の恋心は届くのか。 基本は思い込み空回り系コメディ。 他の男にかっ攫われそうになったり、事件に巻き込まれたりしつつ、のろのろと愛を育んで……濃密なあれやこれやは、行間を読むしか。← 魔法ありのゆるゆる異世界、設定も勿論ゆるゆる。 長くなったので短編から長編に表示変更、R18は行方をくらましたのでR15に。

転生聖賢者は、悪女に迷った婚約者の王太子に婚約破棄追放される。

克全
BL
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 全五話です。

俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします

椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう! こうして俺は逃亡することに決めた。

処理中です...