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第二章 聖杯にまつわるお話

第189話

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 クロワッサンがずらりと並んだ食卓を見て嘆くエンラを見てふと思い出した。

「そう言えばエンラに言い寄っている鬼、いなかったっけ?」

 もはやあの子が自分の子なのか養子だったのか、通りすがりの子だったのか良く思い出せないけど。
 小説で三桁以上子供がいるのに、全員の名前と生んだ人数を覚えている主人公がいるけど、あれって凄いことだよね。僕無理だった。

「あいつなら細マッチョになるため武者修行に出てる」
『今どこだっけ?』
「修行なら滝! とか言って、雷ちゃんのとこだった気がする!」
「あいつの愛も重いんだよな」
「エンラはヤンデレに愛されるタイプなんですね」
「イネス、サラッと人の心にとどめ刺さないでくれ」

 サクサクして美味しいけれど、一個か二個あれば十分なんだよと嘆いている。
 一応他のパンもあるし、刀雲が作ったオムレツも並んでいるよ。

「刀雲、このオムレツ、ナイフを入れたら中からチーズが!!」
「喜んでもらえると練習した甲斐があったよ」
「パパちょうだい、一口ちょうだい!!」
「アー君のもあるから」
「!!!!」

 刀雲特製オムレツを同時に口に入れた騎士様とアー君が瞳と空気をキラキラさせている。
 リアクションが同じでほっこりするなぁ。

「パパ今日は一日お休み?」
「うん」
「じゃあ鬼ごっこやろう」
「……え?」
「イネス、ネヴォラ誘ってきて」
「はいです」
「えっちゃんはイグちゃん達に声かけてな」
「キキ」
「シャムスと涼玉はどうする?」
『ママとお留守番、お料理作るの』
「俺は参加する! ロデオに声かけてこなきゃ!! マールス、転移できたっけ?」
「えっちゃんにお願いすれば大丈夫だから、よしじゃあ今日はパパを巻き添えに遊び倒すぞ!」
「待って、不参加じゃだめかな、刀雲と釣りに――」
「俺は帝国の皇帝から正式な招待状が届いている」

 そうか、今日は皇帝も参加するのか……むさ苦しいし、血は流れるし、荒い言葉も飛び交うだろうからどちらにしろ僕は近付けないなぁ。
 大人しくシャムスと女神様の離宮に行って料理しよう、ドリちゃんがいなくても料理が出来るようになったと思うなよ、えっちゃんを通して全面的に支援してもらってるに決まっているじゃない。

 でも今日ってうちの子と帝国皇子の相手するの帝国騎士団だけじゃなく、帝国の教会を守る聖騎士、アー君の募集に手を挙げた冒険者、邪神兄弟、荒野の戦士などなどが参加するらしい。
 鬼ごっこもきっと僕の知る鬼ごっこと違うんだろうなー、参加者を聞くだけで分かる。

「よっしゃ行くぜー!」
「いやぁぁ、樹とゆっくりしたいぃぃ!!」
「ママは後方支援だから」
「俺の休日ぅぅぅーー」

 僕の方手を伸ばしたものの、そのまま騎士様はアー君に連れて行かれました。
 刀雲達も一緒に出発したので僕らもそろそろ行かないとね、一緒に行っても良かった気がするけど、行き先が違うしお昼まで別行動だから仕方ない。

 出張料理サポーターとして我が家のドリアンとスラちゃん、ヘラ母さん、ネヴォラのパパさんとゴブリン達など大勢が手伝ってくれることになっていて、あちらにはすでに行っているはず。
 もちろん、こんな大人数が料理する場所などあの離宮にはないので野外料理です、イネスはこの話を聞いてどちらに参加するか最後まで迷っていたけど、エビ愛が勝って朝からヨムちゃんと海にエビ狩りに出てます。
 きっとお昼には悪夢のような量のエビが離宮に届くでしょう、その時はスーパースラちゃんにお願いする予定です。

『うふふ、ママと一緒』
「じゃあドリちゃん行ってきます」
『行ってきまぁす』

 ドリちゃんと打ち合わせしてメニューは決めてある。
 決めてあるけど……参加者と人数を考えると不足が出そう、主に邪神兄弟辺りで。

 いっそ川を作ってそこにカレーを流してしまいたい。
 それか流しそうめんみたいに流しカレーとかどうだろ、だめかな、だめか、邪神兄弟がはしゃいで被害が大変なことになりそう。
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