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第二章 聖杯にまつわるお話

第166話

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 皇帝と刀雲、家庭教師のおじいちゃん二人、近衛兵らが力を合わせて作った山のようなピザが離宮の庭園に並べられている。
 世界観を基準に考えるとピザって実は高級品?

「ビール片手にご機嫌の女神様」
「おう!」
「離宮のデザイン迷走してますか?」
「してる」

 前回来た時は子供が遊べる迷路があった。
 それ以前はトレントが森のようにわさわさ群生してて、子供達がどこでも好きなだけ果物を食べれるようになっていた。

 今日は門から和風屋敷が見えて、池と芝生もあってちょっと神薙さんのお家っぽい感じ。

「ほら人間の子供が気軽に出入りするようになったろ、炎ちゃんの神気に中てられても可哀想だから離宮を手前と奥の二つに別けたんだよ」
「なるほど、手前が人間用」
「あの建物は京都市にある桂離宮を参考に作ったし、ついでに庭も回遊式庭園を採用してみた。未完成だけど」

 とりあえず子供達が安全に遊べる広さと、勉強に集中する部屋、お客をもてなすための昼食スペースだけは揃っているそうです。
 未完成だからかざっくりしている。

「建物の横に奥に通じる第二の門があるからそっちを使ってもいいし、転移でも好きな方を使ってくれ。ちなみにこの和風庭園は離宮に通じるなっがい道を潰して作っただけだから、基本的に距離は変わってない。建物があるからちょっと遠く感じるけど」
「えっちゃんにお願いします、自分の足で移動したら時間がかかりそうなので」
「そうしろ」

 奥の離宮に続く道はトレントが常時たむろっているし、門には人間不可侵の結界付きなので侵入者に対する心配はほとんどないそう。

「ここだけの話、隔離された空間なのをいいことに、皇帝が家庭菜園作った」
「わぁ刀雲に触発されたのかな」
「ピザの食材を出来る限り自分で作ってみたいって言いだしたのが発端」
「……ネヴォラのゴブリン父さんと同じようなこと言ってますね、ダンジョン攻略に続き家庭菜園とか、意外と皇帝って多趣味」
「書類仕事が簡略化したし、エリート文官も増えたから自由時間が増えたんだよ」

 腐敗官僚が粛清され手の足らなさに優秀な平民を採用、女神様の改革で定時帰宅、有給、昇給、ボーナスが約束された王城勤務。
 今や帝国における人気職業ナンバーワンだそうです。

 ちなみに嫌がらせやいじめ行為を行うとボーナス査定に響き、最悪降格もあるそうです。
 陰でこっそり意味がない、査定しているの女神様だから。

「地球の庭園を参考にして私が魔力で作ってもいいけどさ、庭師を雇って作らせれば雇用になるとかなんとか大臣が粘ってるんだよ」
「予算使ってあげてください」
「日本の名所を再現したい」
「構想図を作って大臣さんたちにお任せしてみては? 気に入らなかったらダメだしするのはどうです?」
「仕方ねぇなぁ。お仕事回してやるか」
「そうしてあげてください、はい某有名メーカーのビールです」
「まさかの一番搾り!! ありがとう、これで頑張れる!」

 プシュッとプルタブを開けてぐびぐびと一気飲み、一瞬で空になったビールは庭をお散歩中のスライムに渡せば消化してくれます。
 異世界における最弱の便利屋、それがスライム。

 最も離宮にコロコロ、ぽよぽよしているのはシャムスのスライムだけどね。
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