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第一章 紡がれる日常

第46話

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 さてここで問題です。

 人が踏み入ることを許されない聖なる山々が連なる場所、それが霊峰。
 険しい崖が続き、気候の変動も厳しく、樹海あり、滝あり、ドラゴンの巣あり、中には雷が大地を走る場所や氷に閉ざされた場所などあったりと、人間が暮らすには厳しい環境。

 そんな過酷な場所にどうやって人間が侵入し、ドラゴンの卵を盗むことが出来たのか。

「水も綺麗だし、米作ったら絶対美味いと思うんだ」
「霊気が強すぎて人間が暮らせる場所じゃないから魔物頼りになるし、指導はお前がやれよ?」
「麓に小さな村があるんだよ、霊山信仰をする人間たちで、彼らにやってもらうのはどうだろ」
「神様の言うことなら聞いてくれるか、問題は誰を代表にするかだよな。それも併せて長老たちと打ち合わせしておけよ」
「分かったー」

 卵の話題より食が優先だった。
 宙に浮いた僕の疑問は誰が答えてくれるのだろうか。

「採れた米でカツカレー食べたい」
「サクッとジュワッと熱々のやつを空の下で食べるのもいいな」
『キャンプ!』
「今のうちに肉を溜めこんでおこう!」

 深刻な話のはずが気付いたらキャンプの予定に話が変わっていた。
 それはもう楽しそうに飯盒炊飯のやり方やカレーの作り方、カツは現地で作るか、家で作って持っていくかなどを真剣に話し合っている。

 ドラゴンの卵の話より真剣なのは気のせいだろうか。
 まぁあっちはアー君の親衛隊が動いてくれているから、子供達の意識が他に向いているのは都合がいいかもしれない。

「黄金の牛ならぬ黄金の豚とかどっかにいないかな」
『ラミアちゃんの所は黒豚よね』
「あれはあれでブランドだし、美味いんだけど、もう一つ上のランクの豚肉食いたい」

 子供達の話し合いが脱線を繰り返しながらも続いているので、ここで今更ながら我が家の食糧調達方法でも解説しようかな。

 まずお米。
 我が家の食卓を支える柱の一つである無限にご飯を出す炊飯器、これは騎士様に何かのご褒美に貰ったものだったような記憶が薄っすらと残っている。
 ドリちゃんがメンテナンスをしているので、故障知らずで毎日元気に稼働している。
 この子がいなかったらご飯を炊くだけで一日終わるドリアンもいただろうなぁ。

 次にお肉。
 これは主にもふもふズとワンコ親子が狩りで調達してくれています。
 なので肉の種類は夕方にならないと分からないけど、大所帯なのでどれだけ量があっても困らない、神薙さんがいるからほとんど保存が出来ないのが困りもの。
 一応、無くならない高級肉もあるけど、一塊がさほど大きくないので大量に料理を作るのには向いてないと気付いたのいつだったろうか。

 お魚は庭の池。
 トラちゃんとお嫁さんの子供はほぼ鮭、とても食べやすい、他にも伊勢海老やクラーケンがいたり生態系は謎に包まれている。
 刀雲と騎士様が釣ってきたり、ギレンが差し入れた魚の中で、活きが良かったりシャムスに気に入られた子が池の住人になってます。
 あとはヨムちゃんに身を捧げた魚の魔物もたまに食卓にあがる。

 野菜は神薙さんの家からさらに奥に行った所にある隠れ家の裏手にある木から採取したり、本殿の裏手にいつの間にか出来ていた裏庭菜園から調達してます。
 果物は子供達の遊び場でもある果樹園に行けば大抵手に入る。ただし広いので一人で行くのは危険、僕は一度遭難しかけたことがある。

 ざっくり言えばこんな感じかな?
 全てを管理して食卓に提供しているのがドリちゃん、僕は下ごしらえなど簡単な作業を手伝っています、ほぼ専業主婦なのになんか申し訳ないねぇ。
 餃子や肉団子、ハンバーガーみたいなものは子供達も手伝ってくれるからとても楽しい、そう言えば手巻き寿司とかも作るの好きだよねぇ、今日の夕食はそれにしようかな。

「カジキマグロの串焼きとかどうだろ」
「でっきゃい」
「ちょっと冒険だと思うぞにいちゃ」
「せめて鮭の串焼きにしようよ」

 意識を子供達に戻したら、焚火でどんな串焼きをやるかに話が変わっていた。
 カジキマグロの串焼きやったら神薙さんは喜ぶと思うよ。
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