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第一章 紡がれる日常
第42話
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炎帝さんが女性だったのにも驚いたけど、一番驚いたのは変わり身の早さだろうか。
「いやぁ父君に似て美形! っよ、世界一!」
「ママ助けて」
死んだ目のアー君がこちらを見ている。
この手の人の相手は疲れるから嫌だなぁ。
「僕の顔は知ってたのに、騎士様の御子の顔は知らなかったのですか?」
「奥方様の姿は水帝に水鏡で見せてもらっています」
「子供たちは?」
「その……見せられた映像では「うんどうかい」なるものが開催されていまして、奥方様の御子だと言われても人数が多すぎてどれが誰だか判別が付かず……細かく聞こうとしても応援に熱が入って無視されました」
運動会といえば数年前、帝国の王子がイベント体験してみたいと駄々こねたのがきっかけで、女神様やシヴァさん、ヘラ母さんが企画して、女神様の離宮で開催されたあれかな。
騎士様が超ノリノリで種目をあれこれ挙げてくれたりして、当日は刀雲と皇帝が一番かっこいい父親の座をかけて火花を散らしてたっけ。
参加者はうちの子と邪神兄弟、帝国王子、マンドラゴラ。
その他は子供たちの保護者と知り合いの神々と、神様率が高かったため人間の出入りは禁じられていたっけ。
「一人一人の名前も教えてくれたのですが、その、動きが速すぎて顔と名前も一致せず。最終的にほぼ全員奥方様の御子だとざっくり説明されました」
水帝さん一個も嘘ついてないし、誤魔化してすらいない。
マンドラゴラは飛び入りだから置いといて、その他はほとんど僕が生みました。嘘みたいな本当の話です。
「とりあえず」
「はい」
「暑いから離れたい、頭がぼぅっとしてきた」
「大変! シャムスは平気?」
「ままにくっついてるからへーき」
涼玉は暑さに耐えかねてとっくに戦線離脱、マールスとともに近隣のお散歩に行っています。
「騎士様には黙っていますから、元の世界に帰りましょう?」
「やだ、やだやだやだやだ!! 黙っててはほしいけど、美形を眺め放題のここから離れたくない!」
推しが別の人物とカップリングした時の女神様のような駄々のこねっぷりですね。
「でも炎帝さんがここにいると悪影響が強すぎて人間に迷惑が掛かってます、せめて力抑えられませんか?」
「これでも抑えているんです、でもいい男を見るたびに力が漲ってしまって」
薄々感じていた。
「女神様のご同類」
「それ俺も思ってた」
はふーーと息を吐き出しつつ、幼児姿になったアー君が僕の足にぴたりとくっついている。
どうやら僕の周囲は一定の温度が保たれているみたいです、ポンチョ効果なんだろうか?
「あ、そうだ! 雷ちゃん方式なら悪影響もないんじゃないかな?」
「なるほど、確かに」
「ありがとうございます! 奥方様大好き! 忠誠捧げちゃう!」
「待て、我が家以外で――」
アー君が止める間もなくシュパァンと炎帝さんの姿が消え、同時に周囲一帯から熱が引いた。
燃える岩はそのままだけど、これはもう別の用途を見つけて有効活用してもらうしかない。
「パパの部下ってこんなばっかだな」
「本当にね」
『暑かったー』
とりあえず炎害が去ったことで涼玉の豊穣効果が広がり、その日のうちに僅かな草が生える程度まで復活させることができた。
神様が原因の災害なこともあり、明日からはしばらく涼玉と一緒に通うことになりそうです。
「これでアー君のお友達も一安心だね」
「餓死者が出なくて本当に良かった。さっそく帰宅したら手紙書かなきゃなー」
通ううちに川に水も戻るだろう。
そんな風に一生懸命現実逃避をしながら本日のお出掛けは終了した。
「いやぁ父君に似て美形! っよ、世界一!」
「ママ助けて」
死んだ目のアー君がこちらを見ている。
この手の人の相手は疲れるから嫌だなぁ。
「僕の顔は知ってたのに、騎士様の御子の顔は知らなかったのですか?」
「奥方様の姿は水帝に水鏡で見せてもらっています」
「子供たちは?」
「その……見せられた映像では「うんどうかい」なるものが開催されていまして、奥方様の御子だと言われても人数が多すぎてどれが誰だか判別が付かず……細かく聞こうとしても応援に熱が入って無視されました」
運動会といえば数年前、帝国の王子がイベント体験してみたいと駄々こねたのがきっかけで、女神様やシヴァさん、ヘラ母さんが企画して、女神様の離宮で開催されたあれかな。
騎士様が超ノリノリで種目をあれこれ挙げてくれたりして、当日は刀雲と皇帝が一番かっこいい父親の座をかけて火花を散らしてたっけ。
参加者はうちの子と邪神兄弟、帝国王子、マンドラゴラ。
その他は子供たちの保護者と知り合いの神々と、神様率が高かったため人間の出入りは禁じられていたっけ。
「一人一人の名前も教えてくれたのですが、その、動きが速すぎて顔と名前も一致せず。最終的にほぼ全員奥方様の御子だとざっくり説明されました」
水帝さん一個も嘘ついてないし、誤魔化してすらいない。
マンドラゴラは飛び入りだから置いといて、その他はほとんど僕が生みました。嘘みたいな本当の話です。
「とりあえず」
「はい」
「暑いから離れたい、頭がぼぅっとしてきた」
「大変! シャムスは平気?」
「ままにくっついてるからへーき」
涼玉は暑さに耐えかねてとっくに戦線離脱、マールスとともに近隣のお散歩に行っています。
「騎士様には黙っていますから、元の世界に帰りましょう?」
「やだ、やだやだやだやだ!! 黙っててはほしいけど、美形を眺め放題のここから離れたくない!」
推しが別の人物とカップリングした時の女神様のような駄々のこねっぷりですね。
「でも炎帝さんがここにいると悪影響が強すぎて人間に迷惑が掛かってます、せめて力抑えられませんか?」
「これでも抑えているんです、でもいい男を見るたびに力が漲ってしまって」
薄々感じていた。
「女神様のご同類」
「それ俺も思ってた」
はふーーと息を吐き出しつつ、幼児姿になったアー君が僕の足にぴたりとくっついている。
どうやら僕の周囲は一定の温度が保たれているみたいです、ポンチョ効果なんだろうか?
「あ、そうだ! 雷ちゃん方式なら悪影響もないんじゃないかな?」
「なるほど、確かに」
「ありがとうございます! 奥方様大好き! 忠誠捧げちゃう!」
「待て、我が家以外で――」
アー君が止める間もなくシュパァンと炎帝さんの姿が消え、同時に周囲一帯から熱が引いた。
燃える岩はそのままだけど、これはもう別の用途を見つけて有効活用してもらうしかない。
「パパの部下ってこんなばっかだな」
「本当にね」
『暑かったー』
とりあえず炎害が去ったことで涼玉の豊穣効果が広がり、その日のうちに僅かな草が生える程度まで復活させることができた。
神様が原因の災害なこともあり、明日からはしばらく涼玉と一緒に通うことになりそうです。
「これでアー君のお友達も一安心だね」
「餓死者が出なくて本当に良かった。さっそく帰宅したら手紙書かなきゃなー」
通ううちに川に水も戻るだろう。
そんな風に一生懸命現実逃避をしながら本日のお出掛けは終了した。
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