109 / 128
~番外編~ 夏の花は優しい日差しに包まれる
第3話
しおりを挟む
朝、芹香が教室に入ると透を見つけて思わず視線を向けてしまう。透がその視線に気づき、睨み返してくる。その様子を近くにいた真奈美が言葉を発する。
「いかにも熱視線を送ってくんじゃねーよって視線で訴えているわね、透くん」
そこへ、教室のドアが開いて芽衣が入って来る。芽衣は透を見つけると透の傍まで近寄って行った。そして、透と芹香の様子で何かを感づいたのか、芹香に振り向く。
そして、ドヤ顔を浮かべると透に向き直して仲良くおしゃべりしていた。
その様子に胸が締め付けられる思いに駆られる。隣にいる真奈美が言う。
「ホントに告白して想いが実ったってことかしら……?でも、あれ?」
真奈美がどこか腑に落ちないような表情をする。芹香は透と芽衣の様子にぽつりと呟く。
「そっか……、付き合うことになったんだ……」
放課後になり、芹香は未だに気持ちが沈んでいるのを感じながら家に帰った。家に着くと部屋に行き、ベッドに倒れ込む。そこへ、階段の下から母親が声を掛けた。
「芹香ー!良かったら夕飯後に透くんの家に行ってくれるー?」
母親の言葉に芹香は「はーい」と返事する。そして、部屋に置いてある姿見用の鏡の前に立って、自分の顔が鬱蒼としていることに気付く。
「こんな顔してたら駄目だよね……」
パシッ!と、顔を叩いて自分で自分に喝を入れる。
(透にこんな顔を見せたくないよ……)
そう心で呟き、いつも通りの笑顔を姿見の前で作った。
夜になって、芹香は母親に野菜を届けるように言われて透の家にやってきた。
インターホンを鳴らすと、玄関から透の妹である中学二年生の颯希《さつき》が顔を出す。
「いらっしゃい!芹香ちゃん!!」
「やっほー、颯希ちゃん!」
そう言って、颯希は芹香を家に招き入れた。
「あら、芹香ちゃん、いらっしゃい」
透の母親に野菜を渡す。
「いつもありがとうね~。お母さんにお礼を言っておいてね!」
「はい!」
芹香が笑顔で返事をする。そして、リビングに透がいないことをおずおずと聞いた。
「あの……、透は?」
「あぁ、透なら自分の部屋にいるわよ。行ってくる?」
そう言われて、透の部屋に行きノックする。
――――こんこんこん……。
部屋をノックするが応答がない。おかしいなと思ってそーっと部屋のドアを開ける。
透はベッドでスヤスヤと寝ていた。机を見ると開いたままの本とノートとペンが置いてある。おそらく、趣味の考察をしていて疲れたから少し休むことにしてベッドに横になったら寝てしまったのだろう。
「……寝顔、かわいいな~」
小さく囁く……。サラサラのストレートの髪、長いまつ毛、綺麗に通っている鼻筋。本当に綺麗という表現が似合う透。芹香はぼんやりと透を見つめる。
(キスしたくなっちゃうな……)
そんなことを考えてしまう。そして、無意識のうちに寝ている透の顔に自分の顔を近づける。
――――ぱちっ!!
突然、透の目が見開いた。芹香の顔がすぐ近くにある事に対して、静かに低い声で怒るように言う。
「……芹香、お前、何しようとしてやがるんだ?」
透の声色に、芹香は慌てて顔を離す。
「ごめんなさい~!!その、えっと、ナニをしようと……。いや!ナニしようなんてこれ~っぽっちも考えてないですよ~!!あはは!!」
変な日本語と笑いで誤魔化そうとする芹香。透が起き上がり芹香を睨みつけるように言う。
「お前は油断も隙も無いな……」
そう言い放つ透。芹香がその背中に抱き付きたい衝動にかられるが、ぐっと抑える。
(透は芽衣の彼氏なんだから……)
分かっているけど、気持ちがごちゃごちゃする。透はそんな芹香の様子に言葉を投げかけた。
「で?いつまでここにいる気なんだ?」
透が「とっとと出てけ」と言わんばかりのオーラを放つ。でも、芹香はそこから動こうとしない。
「あのさ、透……」
芹香の声の雰囲気がいつもと違うことに気付き、透が芹香の方を向く。芹香はちょっと悲しそうな顔をしながら、でも、笑顔を作って言葉を話した。
「芽衣ちゃんとお幸せにね!」
絞り出すようにその言葉を言う。透がその言葉に言葉を返す。
「は?何のことだよ?」
「え??」
透の返答に目が点になる芹香。透は何のことを言ってるんだ?という顔をしている。
「え……?だって、芽衣ちゃんと付き合ってるんでしょう??」
「は?付き合ってないけど??」
「え?だって芽衣ちゃん、透に告白するって……」
「されたけど、断ってるが?」
「え?」
「……」
「……」
しばらく沈黙が流れる。そして、その沈黙を芹香が破った。
「えぇぇぇ~~~~~~!!」
「いかにも熱視線を送ってくんじゃねーよって視線で訴えているわね、透くん」
そこへ、教室のドアが開いて芽衣が入って来る。芽衣は透を見つけると透の傍まで近寄って行った。そして、透と芹香の様子で何かを感づいたのか、芹香に振り向く。
そして、ドヤ顔を浮かべると透に向き直して仲良くおしゃべりしていた。
その様子に胸が締め付けられる思いに駆られる。隣にいる真奈美が言う。
「ホントに告白して想いが実ったってことかしら……?でも、あれ?」
真奈美がどこか腑に落ちないような表情をする。芹香は透と芽衣の様子にぽつりと呟く。
「そっか……、付き合うことになったんだ……」
放課後になり、芹香は未だに気持ちが沈んでいるのを感じながら家に帰った。家に着くと部屋に行き、ベッドに倒れ込む。そこへ、階段の下から母親が声を掛けた。
「芹香ー!良かったら夕飯後に透くんの家に行ってくれるー?」
母親の言葉に芹香は「はーい」と返事する。そして、部屋に置いてある姿見用の鏡の前に立って、自分の顔が鬱蒼としていることに気付く。
「こんな顔してたら駄目だよね……」
パシッ!と、顔を叩いて自分で自分に喝を入れる。
(透にこんな顔を見せたくないよ……)
そう心で呟き、いつも通りの笑顔を姿見の前で作った。
夜になって、芹香は母親に野菜を届けるように言われて透の家にやってきた。
インターホンを鳴らすと、玄関から透の妹である中学二年生の颯希《さつき》が顔を出す。
「いらっしゃい!芹香ちゃん!!」
「やっほー、颯希ちゃん!」
そう言って、颯希は芹香を家に招き入れた。
「あら、芹香ちゃん、いらっしゃい」
透の母親に野菜を渡す。
「いつもありがとうね~。お母さんにお礼を言っておいてね!」
「はい!」
芹香が笑顔で返事をする。そして、リビングに透がいないことをおずおずと聞いた。
「あの……、透は?」
「あぁ、透なら自分の部屋にいるわよ。行ってくる?」
そう言われて、透の部屋に行きノックする。
――――こんこんこん……。
部屋をノックするが応答がない。おかしいなと思ってそーっと部屋のドアを開ける。
透はベッドでスヤスヤと寝ていた。机を見ると開いたままの本とノートとペンが置いてある。おそらく、趣味の考察をしていて疲れたから少し休むことにしてベッドに横になったら寝てしまったのだろう。
「……寝顔、かわいいな~」
小さく囁く……。サラサラのストレートの髪、長いまつ毛、綺麗に通っている鼻筋。本当に綺麗という表現が似合う透。芹香はぼんやりと透を見つめる。
(キスしたくなっちゃうな……)
そんなことを考えてしまう。そして、無意識のうちに寝ている透の顔に自分の顔を近づける。
――――ぱちっ!!
突然、透の目が見開いた。芹香の顔がすぐ近くにある事に対して、静かに低い声で怒るように言う。
「……芹香、お前、何しようとしてやがるんだ?」
透の声色に、芹香は慌てて顔を離す。
「ごめんなさい~!!その、えっと、ナニをしようと……。いや!ナニしようなんてこれ~っぽっちも考えてないですよ~!!あはは!!」
変な日本語と笑いで誤魔化そうとする芹香。透が起き上がり芹香を睨みつけるように言う。
「お前は油断も隙も無いな……」
そう言い放つ透。芹香がその背中に抱き付きたい衝動にかられるが、ぐっと抑える。
(透は芽衣の彼氏なんだから……)
分かっているけど、気持ちがごちゃごちゃする。透はそんな芹香の様子に言葉を投げかけた。
「で?いつまでここにいる気なんだ?」
透が「とっとと出てけ」と言わんばかりのオーラを放つ。でも、芹香はそこから動こうとしない。
「あのさ、透……」
芹香の声の雰囲気がいつもと違うことに気付き、透が芹香の方を向く。芹香はちょっと悲しそうな顔をしながら、でも、笑顔を作って言葉を話した。
「芽衣ちゃんとお幸せにね!」
絞り出すようにその言葉を言う。透がその言葉に言葉を返す。
「は?何のことだよ?」
「え??」
透の返答に目が点になる芹香。透は何のことを言ってるんだ?という顔をしている。
「え……?だって、芽衣ちゃんと付き合ってるんでしょう??」
「は?付き合ってないけど??」
「え?だって芽衣ちゃん、透に告白するって……」
「されたけど、断ってるが?」
「え?」
「……」
「……」
しばらく沈黙が流れる。そして、その沈黙を芹香が破った。
「えぇぇぇ~~~~~~!!」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
産賀良助の普変なる日常
ちゃんきぃ
青春
高校へ入学したことをきっかけに産賀良助(うぶかりょうすけ)は日々の出来事を日記に付け始める。
彼の日々は変わらない人と変わろうとする人と変わっている人が出てくる至って普通の日常だった。
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件
水野七緒
BL
一見チャラそうだけど、根はマジメな男子高校生・星井夏樹。
そんな彼が、ある日、現代とよく似た「別の世界(パラレルワールド)」の夏樹と入れ替わることに。
この世界の夏樹は、浮気性な上に「妹の彼氏」とお付き合いしているようで…?
※終わり方が2種類あります。9話目から分岐します。※続編「目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件」連載中です(2022.8.14)
Lv.
雪鳴月彦
ミステリー
本州から離れた場所にひっそりと存在する孤島、那鵙島(なげきじま)。
そこに集められた、九人の男女。
その内の一人に依頼され、共に島へと向かった主人公、白沼 恭一とその妹白沼 マリネ。
誰もいない無人島へと招かれた彼らは、正体のわからない殺人鬼、〈CONVICT〉により次々と死体へと変えられていく。
脱出不能、通信不能の島の中で行われる、理解不能の皆殺しゲーム。
果たして、全員が断罪されてしまう前に犯人の正体を暴くことは可能なのか――?
‡登場人物‡
白沼 恭一 (24) 便利屋
白沼 マリネ (19) 恭一の妹・浪人生
絵馬 詩織 (26) 高校教師・恭一の友人
笠島 健次 (51) 映画評論家
美九佐 行典 (64) 音楽指揮者
花面 京華 (25) 心理カウンセラー
貴道 勇気 (58) 元料理長・料理評論家
伊藤 和義 (36) 部品製造業者
月見坂 葵 (26) 海外ボランティア団体会員
木ノ江 明日香 (33)医師
川辺 久 (65) 世話人
※この作品はフィクションです。登場する人物・団体・地名等は全て架空のものとなっています。
光へ、と時を辿って
サトウ・レン
青春
一九九〇。
にこやかにほほ笑んだまま頷く老人の顔を見ながら、僕は停車ボタンを押した。
「いってらっしゃい」
僕は限りなく三十年近く前の過去へと足を踏み出した。
〈参考書籍、作中に登場する本〉
村上春樹『ノルウェイの森』(講談社文庫)
東野圭吾『卒業』(講談社文庫)
怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う
もぐのすけ
青春
神童と言われた天才サッカー少年は中学時代、日本クラブユースサッカー選手権、高円宮杯においてクラブを二連覇させる大活躍を見せた。
将来はプロ確実と言われていた彼だったが中学3年のクラブユース選手権の予選において、選手生命が絶たれる程の大怪我を負ってしまう。
サッカーが出来なくなることで激しく落ち込む彼だったが、幼馴染の手助けを得て立ち上がり、高校生活という新しい未来に向かって歩き出す。
そんな中、高校で中学時代の高坂修斗を知る人達がここぞとばかりに部活や生徒会へ勧誘し始める。
サッカーを辞めても一部の人からは依然として評価の高い彼と、人気な彼の姿にヤキモキする幼馴染、それを取り巻く友人達との刺激的な高校生活が始まる。
[完結]私を巻き込まないで下さい
シマ
恋愛
私、イリーナ15歳。賊に襲われているのを助けられた8歳の時から、師匠と一緒に暮らしている。
魔力持ちと分かって魔法を教えて貰ったけど、何故か全然発動しなかった。
でも、魔物を倒した時に採れる魔石。石の魔力が無くなると使えなくなるけど、その魔石に魔力を注いで甦らせる事が出来た。
その力を生かして、師匠と装具や魔道具の修理の仕事をしながら、のんびり暮らしていた。
ある日、師匠を訪ねて来た、お客さんから生活が変わっていく。
え?今、話題の勇者様が兄弟子?師匠が王族?ナニそれ私、知らないよ。
平凡で普通の生活がしたいの。
私を巻き込まないで下さい!
恋愛要素は、中盤以降から出てきます
9月28日 本編完結
10月4日 番外編完結
長い間、お付き合い頂きありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる