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第四章 青い炎は恵みの雨を受ける

第12話

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「……で、なんで君たちがここにいるんだ?」



 声を掛けてきた颯希たちに友成は「場所を変えよう」と言って、近くの喫茶店に来ていた。テーブルに座り、颯希と静也の前に友成も腰を下ろす。そして、飲み物を注文して、運ばれてきてから、友成が口を開いた。



「この件には首を突っ込むなと言ったはずだぞ?」



 友成が明らかに迷惑そうな表情で颯希たちに言う。



「それは謝ります。でも、私たちは放っておくことができなかったのです……」



 颯希が謝罪と共に言葉を綴る。



「それは、あの女を庇うためか?」



 友成がそう問いかける。



「いえ、むしろその逆なのです」



「逆?」



 颯希の言葉の意味がよく分からなくて友成が聞き返す。



「俺も颯希もあなたが悪い人には見えないんですよ……。むしろ、俺にはあの玲奈さんの方が悪い人に見えるんです……」



 静也の言葉に友成は驚きつつも何も言わない。そこへ、颯希が言葉を綴る。



「これは私たちの推測ですが、もしかして、玲奈さんに何かをされて、その復讐のために何かをしでかそうとしているのではないかと思って心配になったのです。静也くんがさっき言ったように、私たちはあなたが悪い人には見えません。だからこそ、復讐なんかしてあなたが捕まってしまう可能性があるのなら、それを止めようとしたかったのです……」



「なんで赤の他人のために……」



 颯希の言葉に友成が不思議そうな顔をする。



「私たちは中学生パトロール隊です!苦しんでいる人を放っておくわけにはいきません!」



 颯希が強い瞳でそう言葉を綴る。



「……なんていうか、今どき珍しい子だな」



 颯希の言葉に友成は息を吐く。



「自己紹介がまだだったな。俺は青木友成。あの女とは中学の同級生でもあるし、あいつのせいで俺は人生を滅茶苦茶にされた。それが――――」



 友成が玲奈にされたことをゆっくりと話し出す。



「――――これが、あの女にされたことだ。このせいで俺は仕事を失った。それにこういったことで被害を受けたのは俺だけじゃない。他にも被害に遭った人たちがいる……」



 話し終わり、友成が深く息を吐いた。話を聞き終わった颯希たちは話の内容に驚きを隠せない。



「じゃあ、その裏アカウントの中にその時のことも書かれているのですか?」



 颯希が愕然としながらそう問いかける。



「あぁ。ああいうことをする度にそれを自慢げに書いてあったよ。あの女はそういう女だ……」



 友成がそう言葉を綴る。



「……悪い人なんじゃないかとは思ったけど、そこまであくどい人だったとはな……」



 静也が「何だよそれ……」と言う表情で苦痛の顔を見せる。



 玲奈の裏の顔を知り、颯希の中で「許せない……」と言う思いが膨らんでくる。



「じゃあ、青木さんはやはり復讐のために……」



 颯希が苦しむような表情で言葉を綴る。



「あぁ。あの女を社会的に抹殺するためだ。それが、自分の為でもあり、被害を受けた人たちを救うためでもある」



 友成の言葉に颯希たちは言葉が見つからない。本来なら「復讐なんてダメです!」と言うところだが、友成がされたことを考えたらその言葉を掛けるのは違う気がする。



「あの、工藤さんは玲奈さんがしたことを知っているのですか……?」



 颯希が恐る恐る聞く。



「例の裏アカウントにあの女が書き込みした内容をコピーしてさっき渡した。……きっと、全部読むはずだ……」



 友成の言葉に颯希たちは何も言えないでいた。







「大河さん、お茶が入りましたよ」



 和香子がリビングにいる大河にお茶を運んできた。



「あら?仕事の資料でも読んでいますの?実家に来ているときくらい仕事のことは忘れてのんびりなさればいいですのに……。それにしても、玲奈さんが来られなくて残念ですね。今日はお茶のたて方を教えようと思っておりましたのに……」



 和香子がそう言って残念な顔をする。



「……あのさ、母さん。この前玲奈さんに会った?」



 大河が読んでいた資料のようなものから顔を上げて和香子に尋ねる。



「えぇ。お茶会の帰りにお会いしましたよ。玲奈さんは工藤家の嫁になるのですからね。ちゃんとその心得を伝えておきましたわ」



「へぇ、そうなんだ……」



 大河が和香子の言葉を聞いて、その資料に目を落とす。



(……じゃあ、やはりこれは母の悪口か……)



 その資料は友成が大河に渡したあの書き込みのことだった。



「そうですよ。あの日はお茶会の後で大河さんのところに行く予定でしたから、丁度玲奈さんに会って『一緒に行きましょう』って言ったのですが、その日は大河さんの帰りが遅いからまた後日でと断られましたの。せっかく久々に大河さんの好きな鰆の塩焼きを作ろうと思っていましたのに……」



「え……?」



 和香子の言葉に大河が驚いたような声を出す。



「どうしました?」



「いえ、何でもないですよ……」



 大河が咄嗟に誤魔化す。



(母を来させないために嘘をついたというわけか……)



 大河の中で玲奈に対する不信感が膨らんでくる。



(玲奈さんが男と会っているという話も本当かもしれないな……)



「母さん、ちょっと電話をしてくるね」



 大河がそう言って席を立つ。



 そして、廊下に出るとある人物に電話を掛けた。







 その頃、玲奈は彰人とレストランに来ていた。



「カラオケ、楽しかったですね」



 彰人がステーキを口に運びながら今日のことを話す。



「そうですね!歌う曲が知っているのって嬉しかったわ!デュエットも出来たし!」



 玲奈が嬉しそうに彰人と一緒に歌えたことを話す。



「趣味が同じで好きな曲が一緒っていうのはいいわね。久々に楽しかったです!」



 玲奈が楽しそうに語る。



 その後も、二人で話に盛り上がりながら楽しそうに食事をしていく。





 しかし、計画は着実に進んでいた……。





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