24 / 128
第二章 籠の中の鳥は優しい光を浴びる
第9話
しおりを挟む
「あら、いらっしゃい」
日曜日、家に颯希を迎えに来た静也に佳澄が出迎えた。
「ごめんなさいね、迎えに来てもらって……。颯希、パトロールは続けたいというから……」
佳澄が申し訳なさそうに言葉を綴る。
「大丈夫ですよ。俺も心配だし……」
そこへ、準備を整えた颯希が玄関にやってきた。
「おはよう!静也くん!」
颯希が元気な声をあげる。
そして、静也と並ぶと佳澄に敬礼のポーズをしながら言葉を綴った。
「只今より、中学生パトロール隊、出動致します!!」
颯希の隣で静也も敬礼のポーズを取る。
「気を付けてね。静也くん、よろしくお願いします」
佳澄が静也に深くお辞儀をする。
「「行ってきます!!」」
そう言うと、颯希と静也はパトロールを開始した。
「今日は桜東地区をパトロールしましょう!」
颯希が先頭を切って歩きだす。
そこへ、声が聞こえた。
「颯希ちゃん!」
声を上げたのは美優だった。その隣に雄太もいる。
「みゅーちゃん!雄太くん!」
颯希が驚いて声を出す。
「……お前ら、付き合っていたのか?」
静也が美優と雄太が一緒にいるのでデートしているのだと思い、そう問いかける。
「違うよ。これから一緒に図書館に行くだけだよ。この前の美優さんの話を聞きたいと思ってね」
雄太が穏やかに答える。
実は前のお昼休みに美優が言っていた『本当の平和』がどういうことなのか気になった雄太は美優を図書館に誘ったのだという。雄太は研究内容こともあって、美優からその話を聞きたいと思っていたということだった。
「結構興味深い内容だったからね。一度、詳しく話を聞きたいと思っていたんだ。だから、図書館でその話を聞かせて欲しいってお願いしたんだよ」
「ふふっ、びっくりしちゃった。まさかこのことを聞きたいっていう人がいるなんて……」
美優と雄太がいつの間にかこんなに仲良くなっていたことに颯希が驚きを隠せない。手を握り、颯希が嬉しさの言葉を発する。
「これは……なんだか……」
顔を笑顔にしながら颯希が言葉を発する。
「驚きものの木カニのまにまになのです!!」
「訳わからんわ!!」
「別の名を驚きペッコリーノと言うのです!!」
「意味不明だよ!!」
颯希の良く分からない発言にすかさず静也が突っ込みを入れる。そんな二人のやり取りにニコニコしながら美優たちが笑う。
「相変わらず颯希ちゃんと静也くんは面白いコンビだね!」
「うんうん。お似合いだよね」
美優の言葉に雄太が頷く。
「颯希さん、パトロール頑張ってね。静也くんも頑張ってね。い・ろ・ん・な・い・み・で♪」
雄太の意味ありげな言い方に颯希が頭にはてなマークを浮かべる。一方、静也は顔を赤くしながら叫んだ。
「う……うるせぇぇぇぇぇ!!!」
その後、美優と雄太と別れてから颯希たちはパトロールを再開した。桜東地区を中心にパトロールを行う。すると、一つの公園が目に入りそこを清掃活動することになった。
公園といっても、規模は小さくて人はいない。ベンチの近くに吸い殻が落ちていたり、空き缶が転がっていたりしている。颯希たちはそれを分別しながら持っていた袋に入れていく。
その時だった。
「きゃっ!!」
近くで声が聞こえた。その声に驚いて颯希たちが声の方向に顔を向けると、黒いパーカーを着た一人の女の子が尻餅を付いている。
「大丈夫ですか?!」
颯希がその女の子に駆け寄り、声を掛けた。
公園で女の子に声を掛ける一時間前のこと。
理恵は鞄にネットで買ったあるものを忍ばせると、家を出た。そして、颯希たちを探してあてもなく歩く。その時、公園の近くに颯希たちがいるのを見つけて、その様子をそっと窺う。颯希が一人になるのを待ちながら見つからないように木々があるところで身を潜めていた。
その時だった。足に何かが這っているのを感じて目を向けたら、ムカデが足に纏わりついている。虫の苦手な理恵はその状況に声をあげた。
「きゃっ!!」
颯希が理恵に近寄ってきたので、理恵は逃げようとしたが、足に絡みついているムカデをそのままにも出来なくて叫びながら手で掃おうとするがなかなか掃えない。颯希は理恵の足に絡みついているムカデを手で掴むと、草むらにそっと放した。
「もう、大丈夫ですよ!」
颯希が笑顔で言葉を綴る。
理恵が立ち上がろうとしていたので、颯希は手を差し伸べた。
――――パシッ!!
理恵はその手を跳ねのけ、立ち上がると颯希に威圧感を与えるように鋭い瞳で睨む。
「……え?」
颯希がその様子に思わず声を出す。
――――ドンっ!!
急に理恵が颯希を突き飛ばし、颯希はその場に尻餅を付いた。理恵はそのまま後ろを振り向くと逃げるように走り去っていく。
「颯希!大丈夫か?!」
静也が慌てて近寄り、颯希に手を差し出す。
「あの視線……」
颯希は最近感じる視線と似ていることを感じ、小さく呟いた……。
凛花がいる病室では、今日も母親がお見舞いに来ている。愛しい我が子の手を握りながら、祈るように言葉を掛け続ける。
その時……。
――――ピクッ!
微かに凛花の指が動く。
そして、ゆっくりと目を開いた……。
日曜日、家に颯希を迎えに来た静也に佳澄が出迎えた。
「ごめんなさいね、迎えに来てもらって……。颯希、パトロールは続けたいというから……」
佳澄が申し訳なさそうに言葉を綴る。
「大丈夫ですよ。俺も心配だし……」
そこへ、準備を整えた颯希が玄関にやってきた。
「おはよう!静也くん!」
颯希が元気な声をあげる。
そして、静也と並ぶと佳澄に敬礼のポーズをしながら言葉を綴った。
「只今より、中学生パトロール隊、出動致します!!」
颯希の隣で静也も敬礼のポーズを取る。
「気を付けてね。静也くん、よろしくお願いします」
佳澄が静也に深くお辞儀をする。
「「行ってきます!!」」
そう言うと、颯希と静也はパトロールを開始した。
「今日は桜東地区をパトロールしましょう!」
颯希が先頭を切って歩きだす。
そこへ、声が聞こえた。
「颯希ちゃん!」
声を上げたのは美優だった。その隣に雄太もいる。
「みゅーちゃん!雄太くん!」
颯希が驚いて声を出す。
「……お前ら、付き合っていたのか?」
静也が美優と雄太が一緒にいるのでデートしているのだと思い、そう問いかける。
「違うよ。これから一緒に図書館に行くだけだよ。この前の美優さんの話を聞きたいと思ってね」
雄太が穏やかに答える。
実は前のお昼休みに美優が言っていた『本当の平和』がどういうことなのか気になった雄太は美優を図書館に誘ったのだという。雄太は研究内容こともあって、美優からその話を聞きたいと思っていたということだった。
「結構興味深い内容だったからね。一度、詳しく話を聞きたいと思っていたんだ。だから、図書館でその話を聞かせて欲しいってお願いしたんだよ」
「ふふっ、びっくりしちゃった。まさかこのことを聞きたいっていう人がいるなんて……」
美優と雄太がいつの間にかこんなに仲良くなっていたことに颯希が驚きを隠せない。手を握り、颯希が嬉しさの言葉を発する。
「これは……なんだか……」
顔を笑顔にしながら颯希が言葉を発する。
「驚きものの木カニのまにまになのです!!」
「訳わからんわ!!」
「別の名を驚きペッコリーノと言うのです!!」
「意味不明だよ!!」
颯希の良く分からない発言にすかさず静也が突っ込みを入れる。そんな二人のやり取りにニコニコしながら美優たちが笑う。
「相変わらず颯希ちゃんと静也くんは面白いコンビだね!」
「うんうん。お似合いだよね」
美優の言葉に雄太が頷く。
「颯希さん、パトロール頑張ってね。静也くんも頑張ってね。い・ろ・ん・な・い・み・で♪」
雄太の意味ありげな言い方に颯希が頭にはてなマークを浮かべる。一方、静也は顔を赤くしながら叫んだ。
「う……うるせぇぇぇぇぇ!!!」
その後、美優と雄太と別れてから颯希たちはパトロールを再開した。桜東地区を中心にパトロールを行う。すると、一つの公園が目に入りそこを清掃活動することになった。
公園といっても、規模は小さくて人はいない。ベンチの近くに吸い殻が落ちていたり、空き缶が転がっていたりしている。颯希たちはそれを分別しながら持っていた袋に入れていく。
その時だった。
「きゃっ!!」
近くで声が聞こえた。その声に驚いて颯希たちが声の方向に顔を向けると、黒いパーカーを着た一人の女の子が尻餅を付いている。
「大丈夫ですか?!」
颯希がその女の子に駆け寄り、声を掛けた。
公園で女の子に声を掛ける一時間前のこと。
理恵は鞄にネットで買ったあるものを忍ばせると、家を出た。そして、颯希たちを探してあてもなく歩く。その時、公園の近くに颯希たちがいるのを見つけて、その様子をそっと窺う。颯希が一人になるのを待ちながら見つからないように木々があるところで身を潜めていた。
その時だった。足に何かが這っているのを感じて目を向けたら、ムカデが足に纏わりついている。虫の苦手な理恵はその状況に声をあげた。
「きゃっ!!」
颯希が理恵に近寄ってきたので、理恵は逃げようとしたが、足に絡みついているムカデをそのままにも出来なくて叫びながら手で掃おうとするがなかなか掃えない。颯希は理恵の足に絡みついているムカデを手で掴むと、草むらにそっと放した。
「もう、大丈夫ですよ!」
颯希が笑顔で言葉を綴る。
理恵が立ち上がろうとしていたので、颯希は手を差し伸べた。
――――パシッ!!
理恵はその手を跳ねのけ、立ち上がると颯希に威圧感を与えるように鋭い瞳で睨む。
「……え?」
颯希がその様子に思わず声を出す。
――――ドンっ!!
急に理恵が颯希を突き飛ばし、颯希はその場に尻餅を付いた。理恵はそのまま後ろを振り向くと逃げるように走り去っていく。
「颯希!大丈夫か?!」
静也が慌てて近寄り、颯希に手を差し出す。
「あの視線……」
颯希は最近感じる視線と似ていることを感じ、小さく呟いた……。
凛花がいる病室では、今日も母親がお見舞いに来ている。愛しい我が子の手を握りながら、祈るように言葉を掛け続ける。
その時……。
――――ピクッ!
微かに凛花の指が動く。
そして、ゆっくりと目を開いた……。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
Beyond the Soul ~魂の彼方へ~ 第二部 what is it?idol
ぐれおねP
青春
わたしの名前は神咲舞ありさ。弥勒高校に通う二年生。先週、路上でスカウトされて、今日はオーディションの日。スカウトされたのになんでオーディション?っておもうんだけど、その人の話を聞いてちょっとおもしろそうだからいってみようかなって思ったんだ。アイドルのオーディションなんて、この先また受けられるかわかんないし。何事も経験だよね。ぐれおねさんっていったっけ。面白い人だったなぁ。話にうまくてのせられちゃった感あるんだけど。まっ、大丈夫でしょ。
主人公は高校生になっても、人を疑うことをあまりしない。ノー天気で少し子供っぽい女の子。髪の色は赤くそれを右側でまとめているサイドテール。後ろ髪は長い。その髪にはオレンジ色の星の形をしたヘアピンをつけている。スタイルは良く、目もパッチリしている感じの美少女。
そんな彼女がアイドルの候補生となり、その仲間やライバル。一癖も二癖もある事務所の人達との交流をコメディときにはシリアスに綴る。表でははそんなありきたりな物語。しかして隠された真実。その謎を追う探索パート。猟奇シーンありな一粒で多分二度おいしい作品。
※前回にあげた四つの作品が第一部となっております。
あのときは泣きたかった。
さとなか達也
青春
さとなか達也が二年半をかけて、構築した、全くもって、すばらしい、野球青春小説。出版社からも、文庫化のお誘いのあった、作品をモデルに、ストーリーを展開。面白さ、真面目さ、悲しさ、恋愛。すべてを注ぎ込んだ、名作をあなたの元へ。Web発信。頑張ろう!(がんばって!!先生。)さとなか達也
ぜったい、読んで。さとなか 達也
あのときは泣きたかった。
あなたの月 8月
渋谷かな
青春
星座や誕生月、誕生石、誕生花は人気があるのに、干支は人気がない。この物語は干支をいじって人気が出るといいなっという作品です。
干支か。干支をいじった作品を、まだ私は知らないな。星座も誕生花も誕生石も使用されてそうだから干支でがんばってみよう。これ五行に逃げるといくらでも話を膨らますことができるな。
「もっと子供向けで一般大衆でも分かるように。」から始まった。ドラえもんやサザエさんのように。単純な話でなければ、一般大衆は知らない。知っても分からないからである。共感はできても同じ内容ばかりで毎回見る必要はないものなのだけど。目指している所が「放送に穴を開けない」だけなのだろう。
顔と名前を覚えることが苦手な私が出会ったお爺さんは、私とよく似た人を忘れられなかったようです
珠宮さくら
青春
三千華は結婚して家庭を持ってから、思い出深い季節が訪れて大学生の頃のことを思い出すことになった。
家族以外の人の顔と名前を覚えることが苦手な三千華は、そこで自分の顔にそっくりな女性と間違い続けるお爺さんとボランティアを通じて出会うことになるのだが、その縁がより自分に縁深いことを知ることになるとは思ってもみなかった。
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
花さんと僕の日常
灰猫と雲
青春
僕に父親はいない。
いるのは花さんだけ。
これは僕が俺になり、俺が何者なのかを見つけるまでの長すぎる日常。
そして俺を取り巻くたくさんの人達の群像劇。
人は等しく不幸で、不幸と等しく幸福であるべきだ。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
ここは世田谷豪徳寺
武者走走九郎or大橋むつお
青春
佐倉さくら 自己紹介するとたいていクスっと笑われる。
でも、名前ほどにおもしろい女子じゃない。
ないはずなんだけど、なんで、こんなに事件が多い?
そんな佐倉さくらは、世田谷は豪徳寺の女子高生だぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる