ファクト ~真実~

華ノ月

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最終章 愛されていた鳥

第16話

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 朝、目を覚ました賀川がそう小さく呟く。

 包丁を持ち出して、喉にまで当てたが、やはり死ぬことが出来なかった。その後、少しでも気を紛らわすために近くのコンビニに走り、いくつかビールとつまみを買い込んでそれを喉に流し込んだ。そして、気が付くといつの間にか寝ていたらしく、朝になってぼんやりと目を覚ました。

「あ……頭イテェ……」

 昨日の飲み過ぎが効いているのか、頭がガンガンと痛む。

「とりあえず……水……」

 そう呟き、コップに水を入れて喉に流し込む。

「今日からどうしようかな……」

 そうポツリと呟く。

 仕事を見つけないと、生活は出来なくなる。このままではアパートを追い出されて野垂れ死ぬ可能性だってある。でも、仕事を探しに行こうという気力が無い。

「このまま餓死した方が楽かな……」

 そう呟きながら目に涙を溜める。

(……助けて……)

 そう心で呟き、その場に項垂れた。



「あ……来てる……」

 男がパソコンを開き、小説投稿サイトのホームを開くと、メッセージが来ていることを確認する。そのメッセージを開き、読み始める。


『レン様

 メッセージ、ありがとうございます。
 とても嬉しいです!!
 近い内に作品を投稿できると思うので投稿した際にはまたお読みくださると嬉しいです。

 後、アドバイスもありがとうございます。
 はい、気を付けますね!!
 お気遣いいただきありがとうございます!

 これからも宜しくお願い致します!      結音』


 男がメッセージを読んで微笑む。

 そして、例のサイト「女神たちの集い」にアクセスして、新たな投稿がないかを確認する。しかし、あれから投稿はされていなくて、男はホッと胸を撫で下ろした。

(もしかしたら、奏を狙うのを諦めたかもしれないな……)

 そう心で呟き、パソコンを閉じる。

(暇だな……)

 特にすることが無く、ぼんやりとベッドに横になりながらタバコを吹かす。

「……そうだ……、久々に……」

 男が何かを思いついてパソコンのスイッチを再度入れた。



「……例の方法で捜査……ということでいいわね?」

 冴子の言葉に奏たちが頷く。

「じゃあ、まずその賀川の住んでいる場所を調べましょう」

 冴子がそう言って槙に賀川の住んでいる場所を調べてもらう。

「奏ちゃん、この前、賀川とお茶をした時、彼がどこに住んでいるとか言う話は無かった?」

「え……えっと……」

 冴子の言葉に奏がその時のことを思い出そうと頭をフル回転させる。

「確か、阿倉川の方って言っていたはずです。近くに川が流れているという事も話していました」

 奏がそう言葉を綴る。

「ちなみに奴は家族と同居しているのか一人暮らしか分かるか?」

 槙がそう尋ねる。

「一人暮らしだって言っていました」

「となると、アパート暮らしの可能性が高いな……。後、川か……」

 槙がそう言いながらパソコンで何かを捜査し始める。


 ――――カタカタカタカタ……カタカタカタカタ……。


「分かりそうか?」

 隣でその様子を見ている紅蓮がそう声を掛ける。

「もう少し待て」

 槙がそう言う。


 ――――カタカタカタカタ……カタカタカタカタ……タンっ!!


「出たぞ」

 槙がそう声を上げる。

「アパートで独り暮らしとなると部屋はそんなに広くないはずだ。そして、近くに川が流れていることから、該当するアパートはこの『コーポ上地うえち』になるだろう」

 槙がそう言ってそのアパートの画像を見せる。そのアパートは洗濯機が外に設置するタイプのアパートで築年数は六十年と書かれてある。

「……多分間違いないと思います。カフェで話した時に洗濯機が外にあるから雨の日とかが大変だと言っていましたし……」

 奏がアパートの画像を見てそう言葉を綴る。

「じゃあ、とりあえずそのアパートに行ってみるか?」

 透がそう口を開く。

「そうね……。じゃあ、透と紅蓮、槙の三人でそのアパートに言って頂戴」

「「「分かりました」」」

 冴子の言葉に透たちがそう返事をすると、捜査しに行くための準備に取り掛かる。そして、準備が出来ると、目的地に向かうために捜査室を出て行った。

「あ……あの……私はどうしたら……?」

 奏は作戦の関係でそのアパートに行くことが出来ないので、ここで待機するのだが、その間、何をしていいのかが分からなくて冴子にそう尋ねる。

「そうねぇ~……。とりあえず、書類整理をしてもらおうかしらね♪」

 冴子がそう言って奏のデスクに書類の束を置く。

「分かりました」

 奏はそう返事をすると、書類一つ一つに目を通していく。

「あの……冴子さん……」

「何?」

 奏の発した言葉に冴子が返事をする。

「例の作戦……、場合によっては賀川さんが危険に晒されるんじゃないでしょうか……?」

 奏が苦しそうな表情でそう言葉を綴る。

「まぁ……、可能性はあるけど……」

「犯人を捕まえるためとはいえ、そんな方法を取っていいのですか……?」

 冴子の言葉に奏がそう言葉を綴る。

「まっ♪今は透たちの連絡を待ちましょう♪」

 冴子が軽快な口調でそう言葉を綴る。

 その言葉に奏はどことなく不安だが、今は他に方法が無いと自分に言い聞かせて、書類整理を再開した。



「……女神に会いたい……」

 賀川がポツリと呟く。

「会いたい……会いたい……会いたい……」

 そう呟き続ける。

 そして、朝だというのに昨日の残りのビール缶を開けて喉を鳴らしながら飲む。

 その表情は暗く、深い闇のような顔をしていた。

 絶望的な黒……。

 沈んでいくような深海の闇……。

 苦しみの感情がグルグルと渦巻き、闇に飲まれていく……。

 そして、窓から外を見て「何をやっているんだろう……」と、自分を責める。

 その時、賀川がある人影を見つけた。

「なんであいつらがここに?!」


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