ファクト ~真実~

華ノ月

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最終章 愛されていた鳥

第9話

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 賀川はそう言うと電話を切る。

「見て、電話終って変な笑い顔してるよ?気持ち悪~」
「あの様子だと女に電話してたんじゃない?」
「えぇ~?あんな奴に電話番号教える女の気が知れないわね」
「相手の女も不細工なバカ女じゃないの?」

 女性社員からわざと聞こえるような悪口が聞こえてくる。

(女神を侮辱するんじゃねぇよ……)

 賀川がそう心で呟き、女性社員たちを睨みつける。

「うわっ……。睨んできたよ?」
「本当の事なのにねぇ~」
「気にしないで行きましょうよ」

 そう言って女性社員たちがその場を去って行く。

(ちくしょう……ちくしょう……。昔から顔のせいで馬鹿にされる……)

 賀川がそう言ってお手洗いに向かい、鏡で自分の顔を確認する。

 垂れた目に潰れ気味の鼻。それに付け加えて、口だけはやたらでかい。そのせいか顔も大きい方なのに、身長はそこまで高くない。少し太り気味な容姿にまん丸の手……。賀川にとってこの容姿は子供の頃からコンプレックスだった。この容姿のせいでいじめに遭ったり、女子に馬鹿にされたりと散々な目に逢い、初めて好きになった人からは「気味悪い」と言われて、更にいじめもエスカレートしていった。

 そんな環境で育ったせいか、勉強は身に入らず、成績は悪く、高校もかなりレベルの低い高校しか入れなかった。その高校はヤンキーが多く、賀川はあっという間にいじめやパシリの被害に遭った。それでも、高校はなんとか耐えて卒業はこじつけたが、就職先がなかなか見つからず、ようやっと入社できたのが今の会社だった。

 しかし、環境はやはり過酷で女性社員には陰口を叩かれて、与えられた仕事場は夏は暑く、冬は寒いという環境で仕事をすることになり、毎日が疲弊していた。

 そんな時、偶然ネットで見つけたサイト「女神たちの集い」を知り、「癒しの女神」と言う部屋で奏の事を知ったのだった。しかし、そのサイトで他にも癒しの女神を狙っている輩がいたのでその様子をずっと伺っていた。

(女神ならこんな俺でも微笑みかけてくれるはずだ……)

 賀川はそう心で呟いた。



「……これだな」

 紅蓮がスーパーマーケットの防犯カメラを見てそう呟く。

 アリタスーパーマーケットにやってきた透たちは守衛室の防犯カメラの映像を見せてもらっていた。その映像を確認すると夕方の六時ごろに孝が食品売り場で買い物をしている様子が映っている。

「……あれ?」

 そこへ、一人の年配の男が孝に声を掛けたような映像が流れた。そして、孝とその年配の男は店から出て行く。

「知り合いか?」

 紅蓮がそう声を出す。

「すみません。この年配の人はご存じですか?」

 守衛室にいる男に透がそう尋ねる。

「あぁ。この人ならよく見かけるよ。四階の憩いのスペースに来てそこで買ってきたお菓子を食べたりしているお爺ちゃんだ」

 守衛の男がそう答える。

「そうですか……」

 透はそう言うと、「ちょっとそこに行ってみよう」と言い、紅蓮たちと憩いのスペースに向かう。

「……あの人じゃないか?」

 槙が憩いのスペースに座ってせんべいのようなものを食べている年配の男を見てそう声を発する。

「すみません。ちょっといいですか?」

 透がその年配の男に声を掛ける。

「なんじゃ?」

 男が透たちを見て不思議そうな声を出す。

「この人のこと、ご存じですか?」

 紅蓮がそう言って孝の写真を見せる。

「おぉ!孝君じゃろ?知っとる知っとる」

 年配の男がそうカラカラと笑いながら言う。

「……この日もこちらに来ていてこの写真の人と会っていますよね?ここを出た後、何処で何をしていたのかを知りたいのですが……」

 透が日付を伝えて、孝とスーパーを一緒に出た後に何処に行ったのかを聞き出す。

「その日は確か……」

 男がその日を思い出しながら言葉を発する。

 しばらく考えると、「おぉ!思い出した!」と言って話し始めた。

「あの日は確か近くの公園で喋っておったんじゃよ。まぁ、喋っていたというかわしの愚痴を聞いて貰っていただけなんじゃがな……。あの日、ちょっといろいろあってな……。それで話を聞いて貰ってたんじゃ……。孝君はこんなおいぼれの話を嫌な顔一つせずに聞いてくれる優しい子でなぁ~……。最初会った時もわしがいつものようにこの憩いのところであられを食べていたらその袋を落としてしまってな……。中身を床にばらまいてしまって拾っていたら孝君が「大丈夫ですか?」と言って拾うのを手伝ってくれたんじゃよ。それからよくここで会うようになってな、わしの話を聞いて貰っているんじゃ……。独り身になるとどうも寂しくてな……」

 男がそう言って、少し寂しそうな顔をする。

「ちなみに話していたのは何時くらいまで話していたのですか?」

 透がそう尋ねる。

「夜の七時までじゃよ。公園の時計が七時を知らせるチャイムが鳴ったからな。それでその時間にはさよならしたんじゃ」

 男がそう言葉を綴る。

「そうですか……。ありがとうございます」

 透が男にお礼を述べる。

「そういや、あんさんらは孝君の友達かえ?」

「まぁ、そんなところです」

 透が男にそう言って笑いかける。

「そうかそうか!これからも仲ようしたってな!」

 男が笑いながら嬉しそうにそう言葉を綴る。

 そして、透たちはその場を後にして、車に乗り込む。

「……七時まで一緒だったという事だから犯行は無理だな」

 槙がそう口を開く。

「あぁ。孝君の疑いは晴れたな。次は絵美ちゃんだ」

 紅蓮がそう言葉を綴る。

「……にしても、孝って人は優しいのかお人よしなのか……。まぁ、奏の友達って言うだけの事はあるな」

 槙が先程の年配の男の話を聞いてそう言葉を綴る。

「多分、困っている人を見ると放っておけないんだろうな。確かに奏の友達だって言うのは納得できるよ」

 透がそう言葉を綴る。

「でも、友だちじゃないのになんであの爺さんには友達ですみたいな事を言ったんだ?」

 紅蓮が先程の男と透の会話を聞いてそう尋ねる。

「うーん……。あの人、かなりの年齢な感じしたからな……。それに孝君の事をとてもいい子みたいに思っているだろ?だから、警察官って言ったらあの人、驚きと同時にもしかしたらショックで心臓が止まらないかと思ってさ」

「なんじゃそら」

 透の言葉に紅蓮が半分呆れたように声を出す。

「とりあえず、次は絵美って人の足取りを調べよう」

 槙が淡々とそう言葉を綴る。

 こうして透たちは次に絵美の足取りを調べる事にした。



「……何か分かった?」

 警察署の屋上で冴子がフェンスにもたれ掛かりながら隣にいる本山にそう声を掛ける。

「いや……。今のところ特に収穫はない。奴に関しては今の段階で表立って捜査することはできないしな。他の事案も抱えているからこの捜査はなかなか難しいだろうな……」

「そうね……。私も立場上、外で単独行動は難しいものがあるし……。はぁ~……参ったわね……」

 冴子がそう言って落胆のため息を吐く。

「どうする?奴に関しては俺とお前でしか今の段階では捜査できないぞ?」

「そうね……。でも、疑いがある以上調べなきゃいけないわ……」

 本山の言葉に冴子がそう答え、どうやってその人物の動きを調べるかを考える。

「……杉原に協力してもらうか?」

「それは難しいんじゃない?例の言葉もあるし……」

「そうだな……」

 冴子と本山がそう言って、どうやって捜査していくかを話し合う。しかし、やはり良い案は出ず、屋上を後にした。



「はぁ?まただと?」


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