123 / 140
最終章 愛されていた鳥
第5話
しおりを挟む
一人の男がスマートフォンから『女神たちの集い』にアクセスして、そう小さく呟く。
「どうした?賀川」
会社の食堂で目の前に座る賀川が何かを呟いたので、その声に同僚である辻木がそう声を掛ける。
「いや、なんでもないよ」
賀川がそう言って豚カツを口に運ぶ。
「ところでこの後の仕事だけど、機械の調子が悪いからまずその原因を調べてくれってさ」
「分かった」
辻木の言葉に賀川がそう返事をする。
「……やっべっ!急いで食べないと休憩終るぜ?!」
辻木がそう言いながらご飯をかき込む。賀川も急いで昼食を済ませて二人は慌てて食堂を出た。
「……奏がストーカーに?」
雫がそう言って驚きの表情を見せる。
透たちは奏の家にお邪魔していた。父親である俊彦は仕事のため不在だったので、母親である雫に事情を話した。
「……それで、そのストーカーをしていた男が殺されたというわけですね?」
「はい」
雫の言葉に透が返事をする。
「そして、私たち夫婦も犯人かも知れないという容疑がかかっているという事ですか……」
雫がそう言葉を綴る。
「まぁ、疑いを掛けられても仕方ありませんね。ですが、そのことが分かればまず警察に行きます。殺人を犯すという事は決してありません」
雫が凛とした表情と声でハッキリとそう言葉を綴る。
「まぁ、念のため私も奏に何かあってはいけないですから、周囲は警戒しておきます。奏が帰る頃にはこの辺りも暗くなるので、しばらくはバス停まで迎えに行きます」
「よろしくお願いします。ですが!ご安心ください!」
紅蓮がそう言って雫の手を取る。
「奏さんはこの紅蓮が必ずお守り致します!なのでお母様は安心して奏さんの帰りを待っていてください!!」
紅蓮がキラキラモードを散りばめながら得意げな顔でそう言葉を綴る。
「あ……はい……」
その言葉に雫が戸惑った声を出す。
「ちなみに確認ですが、夜の七時半頃は何をしていましたか?」
「その時間は……」
透の言葉に雫が席を立つ。そして、固定電話の子機を手に取り、何かを確認している。
「……あぁ。その時間は主人の母親から電話があって話していましたよ」
雫がそう言って電話の通話時間を見せる。
確かにそこには「19:21 主人の母 通話時間 26分」と表示されていた。
「確認、ありがとうございます」
透がそう言葉を綴る。
「……では、我々はこれで失礼します」
透がそう言って席を立ったので紅蓮たちも席を立った。
「両親ではないな」
奏の家を出て車に乗り込むと槙がそう口を開く。
「あぁ。驚きはしていたが変な動揺は見られなかった」
透がそう言葉を綴る。
「紅蓮のおちゃらけには困っていたがな」
「うるせぇ!!」
「お前、奏の母親も範疇なのか?」
「んなわけねぇだろ!!」
槙の言葉に紅蓮がそう吠える。
「とりあえず、一旦署に戻るぞ」
透がそう言って、車を走らせた。
「戻りました~………」
奏がそう言いながら特殊捜査室の扉を開ける。
「お帰り♪奏ちゃん♪どうだった?」
冴子が戻ってきた奏にそう声を掛ける。
「絵美ちゃんと孝君に関してはその時間、二人ともアパートにいたみたいで証明できる人が居ません……。ゆっちゃんに関しては昨日の夜は友達と飲みに行っていたみたいで、その店を教えてくれました。なので、その店に電話して確認したら確かに来ていたという事です……」
奏がそう説明するが、心の中では不安で一杯だった。絵美と孝にはアリバイが無い。つまり、容疑者から外したくても外すことが出来ない……。
「はぁ……」
奏が何とか証明できないかと考えるが何も思い付かなくてため息を吐く。
「戻りました~!」
そこへ、透たちも捜査室に戻って来て捜査してきたことを話す。奏の家に行っていたという事を知り、奏が驚くが「捜査の為だ」と、自分に言い聞かせる。
「……今日の捜査はここまでにしましょう。さっ!そろそろ退勤時間よ?帰る準備をして気を付けて帰ってね♪」
「「「はーい」」」
冴子の言葉に奏たちが返事をする。
そして、帰宅準備をして奏たちは警察署を後にした。
――――カタカタカタカタ……カタカタカタカタ……。
賀川がパソコンで何かを打ち込んでいる。
仕事が終わり、家に着いた賀川はパソコンを起動させると、『女神たちの集い』のサイトを開いた。そして、不気味に笑いながら何かを書き込んでいく。
「邪魔者はもう居ない……くくっ……」
そう呟きながら投稿を書き込むと、送信ボタンを押す。そして、缶ビールを空けてそれを美味そうに喉を鳴らしながら飲み始める。
「……ぷはっ!!待ってろよ……女神……」
不気味な笑みを讃えながらそう言葉を綴る。
その瞳には暗い闇のような黒が潜んでいる……。
「必ず女神を俺のものにしてやる!!」
賀川がそう叫びながら両手を広げる。
「……まずは、第一段階だ……」
賀川はそう言葉を綴ると、カッターナイフを取り出した。
「どうした?賀川」
会社の食堂で目の前に座る賀川が何かを呟いたので、その声に同僚である辻木がそう声を掛ける。
「いや、なんでもないよ」
賀川がそう言って豚カツを口に運ぶ。
「ところでこの後の仕事だけど、機械の調子が悪いからまずその原因を調べてくれってさ」
「分かった」
辻木の言葉に賀川がそう返事をする。
「……やっべっ!急いで食べないと休憩終るぜ?!」
辻木がそう言いながらご飯をかき込む。賀川も急いで昼食を済ませて二人は慌てて食堂を出た。
「……奏がストーカーに?」
雫がそう言って驚きの表情を見せる。
透たちは奏の家にお邪魔していた。父親である俊彦は仕事のため不在だったので、母親である雫に事情を話した。
「……それで、そのストーカーをしていた男が殺されたというわけですね?」
「はい」
雫の言葉に透が返事をする。
「そして、私たち夫婦も犯人かも知れないという容疑がかかっているという事ですか……」
雫がそう言葉を綴る。
「まぁ、疑いを掛けられても仕方ありませんね。ですが、そのことが分かればまず警察に行きます。殺人を犯すという事は決してありません」
雫が凛とした表情と声でハッキリとそう言葉を綴る。
「まぁ、念のため私も奏に何かあってはいけないですから、周囲は警戒しておきます。奏が帰る頃にはこの辺りも暗くなるので、しばらくはバス停まで迎えに行きます」
「よろしくお願いします。ですが!ご安心ください!」
紅蓮がそう言って雫の手を取る。
「奏さんはこの紅蓮が必ずお守り致します!なのでお母様は安心して奏さんの帰りを待っていてください!!」
紅蓮がキラキラモードを散りばめながら得意げな顔でそう言葉を綴る。
「あ……はい……」
その言葉に雫が戸惑った声を出す。
「ちなみに確認ですが、夜の七時半頃は何をしていましたか?」
「その時間は……」
透の言葉に雫が席を立つ。そして、固定電話の子機を手に取り、何かを確認している。
「……あぁ。その時間は主人の母親から電話があって話していましたよ」
雫がそう言って電話の通話時間を見せる。
確かにそこには「19:21 主人の母 通話時間 26分」と表示されていた。
「確認、ありがとうございます」
透がそう言葉を綴る。
「……では、我々はこれで失礼します」
透がそう言って席を立ったので紅蓮たちも席を立った。
「両親ではないな」
奏の家を出て車に乗り込むと槙がそう口を開く。
「あぁ。驚きはしていたが変な動揺は見られなかった」
透がそう言葉を綴る。
「紅蓮のおちゃらけには困っていたがな」
「うるせぇ!!」
「お前、奏の母親も範疇なのか?」
「んなわけねぇだろ!!」
槙の言葉に紅蓮がそう吠える。
「とりあえず、一旦署に戻るぞ」
透がそう言って、車を走らせた。
「戻りました~………」
奏がそう言いながら特殊捜査室の扉を開ける。
「お帰り♪奏ちゃん♪どうだった?」
冴子が戻ってきた奏にそう声を掛ける。
「絵美ちゃんと孝君に関してはその時間、二人ともアパートにいたみたいで証明できる人が居ません……。ゆっちゃんに関しては昨日の夜は友達と飲みに行っていたみたいで、その店を教えてくれました。なので、その店に電話して確認したら確かに来ていたという事です……」
奏がそう説明するが、心の中では不安で一杯だった。絵美と孝にはアリバイが無い。つまり、容疑者から外したくても外すことが出来ない……。
「はぁ……」
奏が何とか証明できないかと考えるが何も思い付かなくてため息を吐く。
「戻りました~!」
そこへ、透たちも捜査室に戻って来て捜査してきたことを話す。奏の家に行っていたという事を知り、奏が驚くが「捜査の為だ」と、自分に言い聞かせる。
「……今日の捜査はここまでにしましょう。さっ!そろそろ退勤時間よ?帰る準備をして気を付けて帰ってね♪」
「「「はーい」」」
冴子の言葉に奏たちが返事をする。
そして、帰宅準備をして奏たちは警察署を後にした。
――――カタカタカタカタ……カタカタカタカタ……。
賀川がパソコンで何かを打ち込んでいる。
仕事が終わり、家に着いた賀川はパソコンを起動させると、『女神たちの集い』のサイトを開いた。そして、不気味に笑いながら何かを書き込んでいく。
「邪魔者はもう居ない……くくっ……」
そう呟きながら投稿を書き込むと、送信ボタンを押す。そして、缶ビールを空けてそれを美味そうに喉を鳴らしながら飲み始める。
「……ぷはっ!!待ってろよ……女神……」
不気味な笑みを讃えながらそう言葉を綴る。
その瞳には暗い闇のような黒が潜んでいる……。
「必ず女神を俺のものにしてやる!!」
賀川がそう叫びながら両手を広げる。
「……まずは、第一段階だ……」
賀川はそう言葉を綴ると、カッターナイフを取り出した。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
旧校舎のフーディーニ
澤田慎梧
ミステリー
【「死体の写った写真」から始まる、人の死なないミステリー】
時は1993年。神奈川県立「比企谷(ひきがやつ)高校」一年生の藤本は、担任教師からクラス内で起こった盗難事件の解決を命じられてしまう。
困り果てた彼が頼ったのは、知る人ぞ知る「名探偵」である、奇術部の真白部長だった。
けれども、奇術部部室を訪ねてみると、そこには美少女の死体が転がっていて――。
奇術師にして名探偵、真白部長が学校の些細な謎や心霊現象を鮮やかに解決。
「タネも仕掛けもございます」
★毎週月水金の12時くらいに更新予定
※本作品は連作短編です。出来るだけ話数通りにお読みいただけると幸いです。
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
※本作品の主な舞台は1993年(平成五年)ですが、当時の知識が無くてもお楽しみいただけます。
※本作品はカクヨム様にて連載していたものを加筆修正したものとなります。
友よ、お前は何故死んだのか?
河内三比呂
ミステリー
「僕は、近いうちに死ぬかもしれない」
幼い頃からの悪友であり親友である久川洋壱(くがわよういち)から突如告げられた不穏な言葉に、私立探偵を営む進藤識(しんどうしき)は困惑し嫌な予感を覚えつつもつい流してしまう。
だが……しばらく経った頃、仕事終わりの識のもとへ連絡が入る。
それは洋壱の死の報せであった。
朝倉康平(あさくらこうへい)刑事から事情を訊かれた識はそこで洋壱の死が不可解である事、そして自分宛の手紙が発見された事を伝えられる。
悲しみの最中、朝倉から提案をされる。
──それは、捜査協力の要請。
ただの民間人である自分に何ができるのか?悩みながらも承諾した識は、朝倉とともに洋壱の死の真相を探る事になる。
──果たして、洋壱の死の真相とは一体……?
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
眼異探偵
知人さん
ミステリー
両目で色が違うオッドアイの名探偵が
眼に備わっている特殊な能力を使って
親友を救うために難事件を
解決していく物語。
だが、1番の難事件である助手の謎を
解決しようとするが、助手の運命は...
母からの電話
naomikoryo
ミステリー
東京の静かな夜、30歳の男性ヒロシは、突然亡き母からの電話を受け取る。
母は数年前に他界したはずなのに、その声ははっきりとスマートフォンから聞こえてきた。
最初は信じられないヒロシだが、母の声が語る言葉には深い意味があり、彼は次第にその真実に引き寄せられていく。
母が命を懸けて守ろうとしていた秘密、そしてヒロシが知らなかった母の仕事。
それを追い求める中で、彼は恐ろしい陰謀と向き合わなければならない。
彼の未来を決定づける「最後の電話」に込められた母の思いとは一体何なのか?
真実と向き合うため、ヒロシはどんな犠牲を払う覚悟を決めるのか。
最後の母の電話と、選択の連続が織り成すサスペンスフルな物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる