ファクト ~真実~

華ノ月

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最終章 愛されていた鳥

第5話

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 一人の男がスマートフォンから『女神たちの集い』にアクセスして、そう小さく呟く。

「どうした?賀川かがわ

 会社の食堂で目の前に座る賀川が何かを呟いたので、その声に同僚である辻木つじきがそう声を掛ける。

「いや、なんでもないよ」

 賀川がそう言って豚カツを口に運ぶ。

「ところでこの後の仕事だけど、機械の調子が悪いからまずその原因を調べてくれってさ」

「分かった」

 辻木の言葉に賀川がそう返事をする。

「……やっべっ!急いで食べないと休憩終るぜ?!」

 辻木がそう言いながらご飯をかき込む。賀川も急いで昼食を済ませて二人は慌てて食堂を出た。



「……奏がストーカーに?」

 雫がそう言って驚きの表情を見せる。

 透たちは奏の家にお邪魔していた。父親である俊彦は仕事のため不在だったので、母親である雫に事情を話した。

「……それで、そのストーカーをしていた男が殺されたというわけですね?」

「はい」

 雫の言葉に透が返事をする。

「そして、私たち夫婦も犯人かも知れないという容疑がかかっているという事ですか……」

 雫がそう言葉を綴る。

「まぁ、疑いを掛けられても仕方ありませんね。ですが、そのことが分かればまず警察に行きます。殺人を犯すという事は決してありません」

 雫が凛とした表情と声でハッキリとそう言葉を綴る。

「まぁ、念のため私も奏に何かあってはいけないですから、周囲は警戒しておきます。奏が帰る頃にはこの辺りも暗くなるので、しばらくはバス停まで迎えに行きます」

「よろしくお願いします。ですが!ご安心ください!」

 紅蓮がそう言って雫の手を取る。

「奏さんはこの紅蓮が必ずお守り致します!なのでお母様は安心して奏さんの帰りを待っていてください!!」

 紅蓮がキラキラモードを散りばめながら得意げな顔でそう言葉を綴る。

「あ……はい……」

 その言葉に雫が戸惑った声を出す。

「ちなみに確認ですが、夜の七時半頃は何をしていましたか?」

「その時間は……」

 透の言葉に雫が席を立つ。そして、固定電話の子機を手に取り、何かを確認している。

「……あぁ。その時間は主人の母親から電話があって話していましたよ」

 雫がそう言って電話の通話時間を見せる。

 確かにそこには「19:21 主人の母 通話時間 26分」と表示されていた。


「確認、ありがとうございます」

 透がそう言葉を綴る。

「……では、我々はこれで失礼します」

 透がそう言って席を立ったので紅蓮たちも席を立った。


「両親ではないな」

 奏の家を出て車に乗り込むと槙がそう口を開く。

「あぁ。驚きはしていたが変な動揺は見られなかった」

 透がそう言葉を綴る。

「紅蓮のおちゃらけには困っていたがな」
「うるせぇ!!」
「お前、奏の母親も範疇なのか?」
「んなわけねぇだろ!!」

 槙の言葉に紅蓮がそう吠える。

「とりあえず、一旦署に戻るぞ」

 透がそう言って、車を走らせた。



「戻りました~………」

 奏がそう言いながら特殊捜査室の扉を開ける。

「お帰り♪奏ちゃん♪どうだった?」

 冴子が戻ってきた奏にそう声を掛ける。

「絵美ちゃんと孝君に関してはその時間、二人ともアパートにいたみたいで証明できる人が居ません……。ゆっちゃんに関しては昨日の夜は友達と飲みに行っていたみたいで、その店を教えてくれました。なので、その店に電話して確認したら確かに来ていたという事です……」

 奏がそう説明するが、心の中では不安で一杯だった。絵美と孝にはアリバイが無い。つまり、容疑者から外したくても外すことが出来ない……。

「はぁ……」

 奏が何とか証明できないかと考えるが何も思い付かなくてため息を吐く。

「戻りました~!」

 そこへ、透たちも捜査室に戻って来て捜査してきたことを話す。奏の家に行っていたという事を知り、奏が驚くが「捜査の為だ」と、自分に言い聞かせる。

「……今日の捜査はここまでにしましょう。さっ!そろそろ退勤時間よ?帰る準備をして気を付けて帰ってね♪」

「「「はーい」」」

 冴子の言葉に奏たちが返事をする。

 そして、帰宅準備をして奏たちは警察署を後にした。



 ――――カタカタカタカタ……カタカタカタカタ……。

 賀川がパソコンで何かを打ち込んでいる。

 仕事が終わり、家に着いた賀川はパソコンを起動させると、『女神たちの集い』のサイトを開いた。そして、不気味に笑いながら何かを書き込んでいく。

「邪魔者はもう居ない……くくっ……」

 そう呟きながら投稿を書き込むと、送信ボタンを押す。そして、缶ビールを空けてそれを美味そうに喉を鳴らしながら飲み始める。

「……ぷはっ!!待ってろよ……女神……」

 不気味な笑みを讃えながらそう言葉を綴る。

 その瞳には暗い闇のような黒が潜んでいる……。


「必ず女神を俺のものにしてやる!!」


 賀川がそう叫びながら両手を広げる。

「……まずは、第一段階だ……」

 賀川はそう言葉を綴ると、カッターナイフを取り出した。

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