ファクト ~真実~

華ノ月

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最終章 愛されていた鳥

第2話

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「なんだと?!」

 杉原の言葉に本山が声を上げる。

 次の日、朝早くに署に通報があった。通報したのは犬を散歩中の女性で「人が刺されている!」と言って、慌てふためきながら急いで警察に通報したという事だった。

 そして、本山と杉原が現場に駆け付ける。

 現場に着くと、鑑識課の警察官が遺体の写真を撮影したり、何か怪しいものが落ちていないかを探している。

「……どういう状況だ?」

 近くに居る鑑識課の警察官に本山が尋ねる。

「死因は刃物で心臓を刺されたことによるショック死。他にも斬りつけられた傷があるので刺される前に斬りつけられたと思われます。免許証から被害者の身元が分かりました。小川おがわ 達治たつじ、三十五歳です」

 鑑識官の男がそう説明する。

「刃物は見つかったのか?」

「いえ。犯人が持ち去ったものだと思われます」

 本山の言葉に鑑識官がそう言葉を綴る。

「とりあえず、この仏さんの部屋を捜索だな……」

 本山がそう言葉を綴った。



「……殺人事件?」

 玄の率いる捜査室に何か手伝えることが聞きに来た冴子が、そう言葉を返す。

「あぁ……。遺体は桜町の田んぼのところで発見されたそうだよ。現場の状況から殺人事件だとみて間違いないそうだ。全く……、あんなところで何をしていたんだろうな……?」

 玄がお茶を啜りながらそう言葉を綴る。

「その事件の担当は本山さんと杉原さんかしら?」

「あぁ、そうだよ。今現場に向かっているんじゃないかな?」

 冴子の言葉に玄がそう言葉を発する。

 その言葉に冴子はお礼を言うと、その捜査室を出て行った。



「……え?殺人事件ですか……?」

 特殊捜査室に戻って来た冴子が玄から聞いた話をして奏が驚きの声を上げる。

「えぇ。場所は桜町だそうよ」

「え……?それって……」

 冴子の言葉に奏が声を発する。

「そう……、奏ちゃんの住んでいるところよ……」

 冴子の言葉に奏が驚きの顔をする。

「ちなみに場所はどの辺りなのですか?」

 奏がそう尋ねる。

「田んぼ道って聞いているけど……」

「あの道……で……?」

 その言葉に奏が声を詰まらす。

「奏ちゃん?大丈夫?」

「あ……はい……」

 紅蓮が心配そうな声でそう言葉を掛ける。

(あの道で事件が起こったなんて……)

 奏が心でそう呟いた。



「……これは?!」

 本山と杉原が被害者である小川の部屋を見て愕然となる。

 その部屋には奏を隠し撮りしたであろう写真が壁を埋め尽くすように貼られていた。その異様な光景に本山と杉原が口を開けたまま放心している。

「と……とにかく、何か事件の手掛かりになるものを探すぞ……」

 本山が我に返り、そう口を開く。

 そして、何か事件に繋がるものがないかを調べていく。すると、ある箱に目が留まり、その箱の中身を確認するために箱を開ける。

「うわ……」

 箱の中に入っていたものを見て杉原が声を出す。

 その箱の中にはストローや使用済みのティッシュ、その他にもハンカチやコンビニの飲み終わったカップなどが一つ一つ袋に入っていた。それを、手に入れた時の状況や日付も袋に一つ一つ付箋が貼られている。

「ストーカー……ですよね?これ……」

 杉原が唖然としながら声を絞るように言う。

「あぁ……。完璧にストーカーだな……」

 本山がそう言葉を綴る。

「他にも何か事件に繋がるのもがないかを探してみよう……」

「はい……」

 本山と杉原はそう言って部屋の中を捜索する。すると、部屋に置かれたパソコンを手袋をはめた手で起動のスイッチを押す。


 ――――ウィィィィン……。


 パソコンが音を出して立ち上がる。

 そして、何かそこに手掛かりがないかを探っていく。

 すると、一つのサイトに目が留まった。そのサイトがすぐに観られるように設定してあるのか、ホーム画面にそのサイトのアイコンがある。それをクリックしてどういったサイトか確認する。するとそこには『女神たちの集い』というサイト名が書かれており、そのサイトを開く。そのサイトの一人の女神に何度もアクセスしていたことが分かり、その部屋に入ってみる。

「……これは?!」

 その部屋の女神の写真と投稿されているコメントを見て本山と杉原が言葉を失った。



「……なかなかいい作品だな」

 一人の男がネットで小説を読んでいる。

「ペンネームは……『結音ゆいね』……か……」

 そして、その結音と名乗る作家の作品を他にも読んでみる。

(どんな人が書いているんだろうな……)

 男はそう心で呟くと、煙草を取り出し、吸い始める。

 そして、昨日の夜の事を思い返していた。

(殺人を犯した事……後悔はない……)

 そう心で呟く。

「守ることが出来て良かったよ……奏……」

 男がそう呟くと、おもむろに立ち上がり、部屋に飾ってある一つの写真を手に取る。

「もうすぐ誕生日か……」

 男は微笑みながら写真に向ってそう声を発する。

 そして、その写真を置き、再度『結音』の作品を読み始めた。



「え……?ストーカー……?」

 奏たちが書類整理をしていると、そこへ本山と杉原がやって来て、奏がストーカーをされていたことを話す。

「ちなみに小川達治と言う男に心当たりはないか?」

「いえ……、全く……」

 本山の言葉に奏がそう答える。

 そして、小川が昨日の夜に何者かに殺された事、小川の部屋を調べてみたら奏の写真が部屋中に貼られていた事、他にも奏が使用したものを拾っていたことなどを話す。

「……そんな」

 本山と杉原が話す言葉に奏が愕然とする。

「それと……」

 本山がそう言って口を開く。そして、『女神たちの集い』と言うサイトの事を話した。

「……じゃあ、私がそのサイトのある部屋の女神ってことなのですか?」

 奏が「信じられない」と言う表情でそう言葉を綴る。

「そのサイトを確認してみようぜ!」

 紅蓮がそう言葉を発する。

「じゃあ、俺のパソコンからそのサイトを探ってやるよ」

 槙がそう言ってパソコンを開き、そのサイトを検索する。

「……これ、裏サイトみたいだな……」

 槙がそう言葉を綴る。

 正規の検索で『女神たちの集い』と検索をかけたがそのサイトは出てこない。裏サイトの可能性があるとみて、槙があるソフトを使い、そのサイトを探し出していく。


 ――――カタカタカタカタ……カタカタカタカタ……。


 リズムよくキーボードを叩き、そのサイトを探っていく。


 ――――カタカタカタカタ……カタカタカタカタ……カタン……。


「あった。これだ」

 槙がそのサイトを見つけて声を出す。

 そのサイトを全員で確認する。その中の「癒しの女神」と書かれている部屋に入ると、そこに出てきたのは奏の隠し撮りのような写真といくつかの投稿が出てきた。

「……この「タツ」と言うユーザーがその殺された小川の事だ。そのタツの投稿を見ると……」

 本山の言葉に槙がタツのアカウントを開ける。

「「「……これは?!」」」

 その投稿を見てその場にいた全員が凍り付いた。

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