ファクト ~真実~

華ノ月

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第六章 飛べない鳥は深い穴に落ちる

第14話

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「……わざわざご連絡、ありがとうございます」

 奏がそう言って電話を終える。

「なんだったの?」

 冴子がそう尋ねる。

「その……、たいしたことではないのですが、静木さんの話だと裕二君が右足の裏に痣を作っているみたいなんです。恐らく、事件の時に物が散乱していたのでそれの何かを踏みつけただけだと思うのですが、念のため、連絡をくださったそうです」

 奏が先程の静木との電話の内容を冴子たちに伝える。

「ちなみにどんな痣なんだ?」

 透がその痣の事を尋ねる。

「えっと……、右足の土踏まずのところに長方形のような形の痣だそうです」

「まぁ、何かを踏んづけただけでしょうね」

 奏の言葉に冴子がそう答える。

 その時だった。


 ――――ガチャ……。


 特殊捜査室の扉が開き、本山と杉原が入ってくる。

「どうだ?捜査は進んでいるか?」

 本山が部屋に入ってきて開口一番にそう声を発する。

「特に事件に直接繋がるようなことは見つかっていないわ……。難航中と言えば難航中よ……」

 冴子がため息を漏らしながらそう言葉を綴る。

「俺たちは別件でもう一つ捜査をしなきゃならなくなったから、この捜査はお前たちに任せる。だが、何か分かったら連絡はしろ」

「了解」

 本山の言葉に冴子がそう返事をすると、本山は特殊捜査室を出て行った。

 そして、奏たちは一度事件を整理してみようという事になり、捜査会議を始めた。



 ――――カリカリカリ……。

 瑠香がノートに文章を綴る音が響く。

 ――――カリカリカリ……カリカリカリ……カリ……。

 文章を書いている手を止めて、瑠香がスマートフォンを開く。そして、奏に教わったサイトを出して、奏が書いた物語を読み始める。近くで裕二は画用紙に何かを集中しながら書いている。その表情からとても楽しんでいることが伝わってくる。

 ――――コンコンコン……ガチャ……。

「調子はどう?瑠香ちゃん、裕二君」

 そこへ部屋に静木がやって来て二人にそう声を掛ける。

「はい、少しずつ落ち着いてきています」

 瑠香がそう答える。

「そう、良かったわ。瑠香ちゃん、ちょっと食堂に来てくれるかしら?」

 静木がそう言って瑠香を食堂に連れていった。



「……他に何か方法がないかな?」

 紅蓮がそう呟く。

 特殊捜査室で奏たちが写真とにらめっこしながら、元樹の遺体にここまで深く包丁を刺せる方法を考えていた。

「なんだか、どれもこれも怪しく見えてくるな」

 槙が写真を見ながらそう言葉を綴る。

「……あれ?」

 奏が一枚の写真を手に取り声を出す。

「どうした?」

 その声に透が反応する。

「これ、見てください」

 奏がそう言って写真に写っているあるものに指を差す。

「ハンカチがどうかしたの?」

 冴子が指さしたものにそう声を発する。

「これ……、なんだか気になります……」

「どう気になるんだ?」

 奏の言葉に透がそう尋ねる。

「ハンカチの一部に皺が寄っています。その皺の寄り方なんですが……」

 奏がそう言って自分の着ている服についているポケットからハンカチを出す。そして、傍にあった筒状の棒を持ち、それにハンカチを被せて手で握る。そして、皺が付いたハンカチをみんなに見せる。

「……見てください。皺の付き方が同じじゃありませんか?」

 奏がハンカチを広げてそう言葉を綴る。

「……確かに似ているな」

 写真と見比べながら槙がそう言葉を綴る。

「もしかしたら、包丁で刺すときに指紋が付かないようにこのハンカチを使った可能性は無いですか?」

「……あり得る話だな。よし、そのハンカチを調べてみようぜ!」

 紅蓮がそう言葉を発する。

 そして、本山にその事を伝えてハンカチを鑑識に見てもらう。しばらく鑑識の結果が出るまで特殊捜査室で待機することになった。

「……どうですかね?」

 奏が不安そうにそう言葉を綴る。

「とりあえず、連絡を待ちましょう……」

 冴子が奏にコーヒーを手渡しながらそう言葉を綴る。

 時間が流れる。

 誰も特に言葉を発することなく、鑑識の結果を待つ。

「……んん~……ポン!ポン!ポン!!」

 奏がその静寂を破るように両手をあげながら声を上げる。

「どうしたの?!奏ちゃん?!」

 突然の奏の行動に冴子が慌てたように声を出す。

「す……すみません!なんだかドキドキしてしまってつい……」

 奏が目をくるくると回しながら早口でそう言葉を綴る。

「とりあえず落ち着け!奏ちゃん!!」

 紅蓮まで慌てながらそう言葉を綴る。

「……緊張がピークに達するとああなるみたいだな」
「だな」

 その様子に透と槙は全く動じずにコーヒーを優雅に啜っている。

「これは何かのコントか?」

 奏がおかしな動きをしていて冴子が落ち着くように何かを言っていて紅蓮は一緒に慌てふためいている。

「ある意味平和な光景だな」
「そうだな」

 透と槙がそう言いながら奏たちの様子を眺めている。

 その時だった。


 ――――ガチャ……。


「鑑識の結果が出たぞ。……って、何やっているんだ?」

 特殊捜査室に入ってきた本山が奏と冴子と紅蓮のコントみたいな光景を目撃してそう言葉を発する。

「奏、鑑識の結果が出たぞ」


 ――――ピタッ!!


 透の言葉に奏の変な動きが止まる。

「どうでしたか?!」

 奏が通常の状態に戻り、本山に顔を向けてそう声を発する。

「あぁ、確かに文代の指紋がはっきり出た。お前さんが言ったようにどのように指紋が付いているかも調べて貰ったら確かにそうやって指紋が付いていたそうだ」

「……じゃあ……」

「あぁ、指紋が付かないようにハンカチを使って包丁を刺したのは間違いないだろう」

 本山が奏の言葉にそう言葉を綴る。

「だが、一つ疑問が残る」

 槙がそう声を出す。

「あぁ……、並の女性ではこんなに深くはさせない」

 その言葉に透が補足するようにそう言葉を綴る。

「別の何かで更に深く刺した……という事になる」

 透が更にそう言葉を綴る。

 そして、現場の写真を見ながら他のもので何か深く刺せるものがないかを探す。

「ちなみに、文代さんを殴打したものが何かは分からないの?」

「あぁ……、文代の頭を殴打したものはこれだ」

 本山がそう言って写真に写っているあるものに指をあてる。そこには石でできたすり鉢が写っていた。

「これが頭に落ちてきたのか、これを使って殴打されたのかは分からない。元々部屋のどこに置いてあったかが分からないからな」

 本山がそう言葉を綴る。

「なら、何処に置いてあったか聞いてみようぜ!」

 紅蓮がそう言葉を綴る。

「奏ちゃん!施設に電話だ!!」

 紅蓮が愉快そうにそう言葉を綴る。

「え?え?」

 紅蓮の言葉がよく分からなくて奏の頭の中ではてなマークが飛び交う。

「瑠香ちゃんに聞いてみるんだよ!」

「あっ……!」

 紅蓮の言葉に奏が声を出し、冴子に許可を貰って施設に電話を掛けた。



「……ここに来てから裕二も症状が落ち着いてきてだいぶ笑顔が増えました」


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