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第二章 沼に足を取られた鳥は愛を知る
第20話&エピローグ
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「もし、佐崎がそれを本当に使ったらどうするつもりだったんだ?」
「その時は鼻で笑い飛ばしてやろうと思ってたさ……。『お前の足を洗いたい気持ちはその程度か!』ってな……」
神明が徳治に麻薬を渡した理由……。それは、徳二がヤクザから足を洗いまっとうに生きたいと言っているのを知っていたので、その気持ちがどこまで本気かを見極めるためだったらしい。軽い気持ちで足を洗うと言ってヤクザを辞めても、結局はまたその道に足を踏み入れる可能性がある。なら、その気持ちがどれだけ強いかを計るために神明はああいう事を言ったということだった。
これで、麻薬を使わずに警察に届けたら「立派だ」と誉めてやろうという気持ちでいたらしく、これで組が解散になってもそれで良かったらしい。ただ、その前に残りの手下には捕まらないように屋敷から出して、自分一人で罪を被ることを決めていたという。予想外だったのは、新形が甥っ子である政明に麻薬を渡していたことだ。そのことに気付かなかったため、新形と一部の手下が捕まってしまったことが神明にとって悔やまれる出来事だった。
こうして、麻薬絡みの事件は幕を閉じた……。
~エピローグ~
「それでは♪無事事件解決を祝って♪」
「「「お疲れまでした~!!!」」」
奏たちがいつもの居酒屋で乾杯をする。
「へい!鶏のから揚げ大盛りと串焼き盛り合わせだよ!!」
難波がてんこ盛りのから揚げと串焼きが乗っている大皿を手にテーブルに運んできた。
「いや~、今回の事件も凄かったな!」
紅蓮がハイボールで喉を「くぅ~!」と唸らせながら満面の笑みで言う。
「なんだか、今回の事件はいろんな愛情の交じり合った事件でしたね……」
奏がマンゴーサワーを握り締めながら今回の事件をしみじみと言う。
「そうだな……。愛情故に起こった事件と言っても過言ではないかもな……」
奏の言葉に透がハイボールを片手にそう言葉を綴る。
「だからといって繋ぎ止めておくために麻薬を使うのはどうかと思うがな……」
槙がレモンチューハイを飲みながら言う。
その時だった。
――――ガラガラ……。
店の引き戸が開いて誰かが入ってくる。
「奏!見つけた!!」
一人の男性客が奏を見つけると大きく手を振って合図をする。
「ひ……広斗さん?!」
突然の広斗の登場に奏が驚きの声を上げる。
広斗は奏たちがいるテーブル近くまで来ると、お辞儀をした。
「初めまして、奏の恋人の大宮 広斗です」
「へぇ~♪あなたが奏ちゃんの彼氏なのね♪」
冴子が愉快そうに言葉を綴る。そして、広斗にも座るように勧めて、奏の隣に腰を掛けた。
「……あれ?奏はジュース?」
広斗が奏の飲んでいる飲み物を見てそう声を出す。
「えっと……その……」
広斗の問いにどう答えようか奏が迷う。
「奏ちゃんはマンゴーサワーよ♪可愛いわよね♪」
冴子がビールを飲みながら言う。
「……日本酒派なのに?」
「「「……え?」」」
広斗の言葉に冴子たちが声を出す。
「あ……う……その……」
奏はどう説明しようか迷うにもどう答えていいか分からなくてしどろもどろになりながらうまく言葉が出ないでいる。
「奏ちゃん……日本酒飲めるの?」
紅蓮が「意外だ……」と言った感じで奏に問う。
「……はい……」
奏が観念して日本酒が飲めること、一番好きなのが日本酒なのを認める。
「なんかイメージ無いな……」
透も奏が日本酒好きなことに意外そうな顔をしながら言葉を綴る。
「じゃ♪折角だし、日本酒を頼んだらどうかしら♪難波さーん!ちょっといい?!」
冴子がそう言って店の厨房にいる難波を呼ぶ。
「へいよ!どうしたんだい?」
難波がやってきてそう声を出す。
「確か日本酒の飲み比べセットってあったわよね?」
「あぁ、あるよ。今来た兄ちゃんが飲むのかい?」
難波が広斗に顔を向けながらそう言葉を綴る。
「いいえ♪飲むのは奏ちゃんよ♪」
「へ?」
冴子の言葉にやはり難波も意外だったのか難波の口から変な声が出る。奏は恥ずかしいのか顔をずっと俯けたまま少し顔を赤くしている。
「……すみません。私、本当は日本酒が好きで飲み比べがあるならぜひ飲んでみたい……です……」
顔を真っ赤にしながら奏が恥ずかしそうに言葉を綴る。
「日本酒がいける口なのはいいね!よっしゃ!いくつか見繕ってくるよ!!」
難波がそう言って厨房の奥に行き、日本酒を取りに行く。
「……日本酒って酔いやすいって聞くが、大丈夫なのか?」
槙がどことなく奏を心配してそう言葉を綴る。
「あぁ、それは大丈夫だよ。奏はアルコールには強いし、時には酒蔵を巡る事もあるんだよ♪」
「「「えぇっ?!!」」」
広斗の更なる言葉に冴子たちが声を上げる。
「モノホンの日本酒好きだな……」
紅蓮が半ば感心したように言う。
「へい!お待ちどうさん!!」
難波が三本の日本酒を手に席にやってくる。
「右から『八海山』『鈿女』『鈴鹿川』だよ!その時その時で日本酒は変わるから気にいったらまた注文してくれや!」
難波が嬉しそうに説明しながら奏の前に日本酒を並べる。
「あ……ありがとうございます……」
奏が日本酒を目の前に目がキラキラとなる。
「嬉しそうね♪」
「うん、めっちゃ嬉しそう♪」
奏の表情を見て冴子と紅蓮が言葉を綴る。
そして、広斗は車だからと言ってノンアルコールビールを注文し、今回の事件の話を聞いていた。今回の事件の事を聞いて、広斗が驚くと同時に、「麻薬は絶対いけない」ということを熱っぽく語る。
やがて、打ち上げも終わり、奏は広斗の車に乗って家に帰ることになった。帰り道の車の中で広斗が奏の家に少しお邪魔していいかということだったので、奏は「いいよ」と言って、奏の家にお邪魔することになった。
「そういえば、広斗さん。なんで私があの店にいることを知っていたの?」
奏の部屋で広斗に膝枕をしてもらいながらそう問いかける。
「あぁ。今日は仕事が終わってちょっと奏の顔を見に行こうと思って奏の家に行ったら、おばさんが「事件解決していつものところに飲みに行ってくる」という連絡が来ていたって言うから、その店の名前を教えてもらったんだよ。なんか、悪い虫がいるということを聞いたから心配になってね……」
広斗の言葉に奏が「恐らく紅蓮の事だろうな」と推測する。
「びっくりしたよ……。でも、すごく嬉しい……。会いに来てくれて……」
膝枕をしてもらいながら広斗に頭を撫でてもらっているのが心地よいのか幸せそうな顔をしながら言葉を綴る。
「……今回の事件も大変だったね。……大丈夫?」
「……うん」
奏が少し悲しそうな顔で小さく頷く。
「なんだか、考えさせられる事件です……。戸籍が無いということでああいった仕事しかできなかったことや、親が事件を起こしたせいでその子供まで被害が出る……。何だか複雑な気持ちです……」
「……そっか」
広斗が奏の頭を撫でながらそっと呟く。
「それに、麻薬はダメです……。麻薬は人の心を壊すだけでなく、周りの人も壊す……。人を狂わせ、狂気に走らせる危険なもの……」
奏が悲しみの表情で言葉を綴る。
「子供の頃だっけ……?麻薬の特集番組を見て胸が張り裂ける思いだったって言ってたもんね……」
広斗の言葉に奏が頷く。
「どうして、あんな恐ろしいものがあるのかな?何のためにあんな恐ろしいものを作ったんだろうって思う……。世の中からなくなってしまえばいいのに……」
「そうだね……」
『麻薬』という恐ろしいものが使われたこと……。
戸籍が無いということでまっとうな仕事に就けないということ……。
親が事件を起こしたために何の関係も無い子供にまで影響が出てまっとうな仕事に就けなくなったこと……。
今回の事件は愛情故の事件でもあるが、その事が浮き彫りになった事件でもある。この事件は一体誰が悪いのか……?本当の『悪』は何なのか……?いろんなことを考えさせられる事件だった……。
「……なんで?なんで私ばっかりこんな目に遭うのよ……」
一人の女性が割れた食器を片付けながら小さく言葉を吐く。
「おい!さっさと片付けろよ!あのババァもどうにかしろ!」
そこに一人の男の怒声が響く。
「……もう嫌……もう嫌よ……こんな生活……」
女性が呻くように涙を流しながら言葉を綴る。
「もう……解放されたい……」
(第三章に続く)
「その時は鼻で笑い飛ばしてやろうと思ってたさ……。『お前の足を洗いたい気持ちはその程度か!』ってな……」
神明が徳治に麻薬を渡した理由……。それは、徳二がヤクザから足を洗いまっとうに生きたいと言っているのを知っていたので、その気持ちがどこまで本気かを見極めるためだったらしい。軽い気持ちで足を洗うと言ってヤクザを辞めても、結局はまたその道に足を踏み入れる可能性がある。なら、その気持ちがどれだけ強いかを計るために神明はああいう事を言ったということだった。
これで、麻薬を使わずに警察に届けたら「立派だ」と誉めてやろうという気持ちでいたらしく、これで組が解散になってもそれで良かったらしい。ただ、その前に残りの手下には捕まらないように屋敷から出して、自分一人で罪を被ることを決めていたという。予想外だったのは、新形が甥っ子である政明に麻薬を渡していたことだ。そのことに気付かなかったため、新形と一部の手下が捕まってしまったことが神明にとって悔やまれる出来事だった。
こうして、麻薬絡みの事件は幕を閉じた……。
~エピローグ~
「それでは♪無事事件解決を祝って♪」
「「「お疲れまでした~!!!」」」
奏たちがいつもの居酒屋で乾杯をする。
「へい!鶏のから揚げ大盛りと串焼き盛り合わせだよ!!」
難波がてんこ盛りのから揚げと串焼きが乗っている大皿を手にテーブルに運んできた。
「いや~、今回の事件も凄かったな!」
紅蓮がハイボールで喉を「くぅ~!」と唸らせながら満面の笑みで言う。
「なんだか、今回の事件はいろんな愛情の交じり合った事件でしたね……」
奏がマンゴーサワーを握り締めながら今回の事件をしみじみと言う。
「そうだな……。愛情故に起こった事件と言っても過言ではないかもな……」
奏の言葉に透がハイボールを片手にそう言葉を綴る。
「だからといって繋ぎ止めておくために麻薬を使うのはどうかと思うがな……」
槙がレモンチューハイを飲みながら言う。
その時だった。
――――ガラガラ……。
店の引き戸が開いて誰かが入ってくる。
「奏!見つけた!!」
一人の男性客が奏を見つけると大きく手を振って合図をする。
「ひ……広斗さん?!」
突然の広斗の登場に奏が驚きの声を上げる。
広斗は奏たちがいるテーブル近くまで来ると、お辞儀をした。
「初めまして、奏の恋人の大宮 広斗です」
「へぇ~♪あなたが奏ちゃんの彼氏なのね♪」
冴子が愉快そうに言葉を綴る。そして、広斗にも座るように勧めて、奏の隣に腰を掛けた。
「……あれ?奏はジュース?」
広斗が奏の飲んでいる飲み物を見てそう声を出す。
「えっと……その……」
広斗の問いにどう答えようか奏が迷う。
「奏ちゃんはマンゴーサワーよ♪可愛いわよね♪」
冴子がビールを飲みながら言う。
「……日本酒派なのに?」
「「「……え?」」」
広斗の言葉に冴子たちが声を出す。
「あ……う……その……」
奏はどう説明しようか迷うにもどう答えていいか分からなくてしどろもどろになりながらうまく言葉が出ないでいる。
「奏ちゃん……日本酒飲めるの?」
紅蓮が「意外だ……」と言った感じで奏に問う。
「……はい……」
奏が観念して日本酒が飲めること、一番好きなのが日本酒なのを認める。
「なんかイメージ無いな……」
透も奏が日本酒好きなことに意外そうな顔をしながら言葉を綴る。
「じゃ♪折角だし、日本酒を頼んだらどうかしら♪難波さーん!ちょっといい?!」
冴子がそう言って店の厨房にいる難波を呼ぶ。
「へいよ!どうしたんだい?」
難波がやってきてそう声を出す。
「確か日本酒の飲み比べセットってあったわよね?」
「あぁ、あるよ。今来た兄ちゃんが飲むのかい?」
難波が広斗に顔を向けながらそう言葉を綴る。
「いいえ♪飲むのは奏ちゃんよ♪」
「へ?」
冴子の言葉にやはり難波も意外だったのか難波の口から変な声が出る。奏は恥ずかしいのか顔をずっと俯けたまま少し顔を赤くしている。
「……すみません。私、本当は日本酒が好きで飲み比べがあるならぜひ飲んでみたい……です……」
顔を真っ赤にしながら奏が恥ずかしそうに言葉を綴る。
「日本酒がいける口なのはいいね!よっしゃ!いくつか見繕ってくるよ!!」
難波がそう言って厨房の奥に行き、日本酒を取りに行く。
「……日本酒って酔いやすいって聞くが、大丈夫なのか?」
槙がどことなく奏を心配してそう言葉を綴る。
「あぁ、それは大丈夫だよ。奏はアルコールには強いし、時には酒蔵を巡る事もあるんだよ♪」
「「「えぇっ?!!」」」
広斗の更なる言葉に冴子たちが声を上げる。
「モノホンの日本酒好きだな……」
紅蓮が半ば感心したように言う。
「へい!お待ちどうさん!!」
難波が三本の日本酒を手に席にやってくる。
「右から『八海山』『鈿女』『鈴鹿川』だよ!その時その時で日本酒は変わるから気にいったらまた注文してくれや!」
難波が嬉しそうに説明しながら奏の前に日本酒を並べる。
「あ……ありがとうございます……」
奏が日本酒を目の前に目がキラキラとなる。
「嬉しそうね♪」
「うん、めっちゃ嬉しそう♪」
奏の表情を見て冴子と紅蓮が言葉を綴る。
そして、広斗は車だからと言ってノンアルコールビールを注文し、今回の事件の話を聞いていた。今回の事件の事を聞いて、広斗が驚くと同時に、「麻薬は絶対いけない」ということを熱っぽく語る。
やがて、打ち上げも終わり、奏は広斗の車に乗って家に帰ることになった。帰り道の車の中で広斗が奏の家に少しお邪魔していいかということだったので、奏は「いいよ」と言って、奏の家にお邪魔することになった。
「そういえば、広斗さん。なんで私があの店にいることを知っていたの?」
奏の部屋で広斗に膝枕をしてもらいながらそう問いかける。
「あぁ。今日は仕事が終わってちょっと奏の顔を見に行こうと思って奏の家に行ったら、おばさんが「事件解決していつものところに飲みに行ってくる」という連絡が来ていたって言うから、その店の名前を教えてもらったんだよ。なんか、悪い虫がいるということを聞いたから心配になってね……」
広斗の言葉に奏が「恐らく紅蓮の事だろうな」と推測する。
「びっくりしたよ……。でも、すごく嬉しい……。会いに来てくれて……」
膝枕をしてもらいながら広斗に頭を撫でてもらっているのが心地よいのか幸せそうな顔をしながら言葉を綴る。
「……今回の事件も大変だったね。……大丈夫?」
「……うん」
奏が少し悲しそうな顔で小さく頷く。
「なんだか、考えさせられる事件です……。戸籍が無いということでああいった仕事しかできなかったことや、親が事件を起こしたせいでその子供まで被害が出る……。何だか複雑な気持ちです……」
「……そっか」
広斗が奏の頭を撫でながらそっと呟く。
「それに、麻薬はダメです……。麻薬は人の心を壊すだけでなく、周りの人も壊す……。人を狂わせ、狂気に走らせる危険なもの……」
奏が悲しみの表情で言葉を綴る。
「子供の頃だっけ……?麻薬の特集番組を見て胸が張り裂ける思いだったって言ってたもんね……」
広斗の言葉に奏が頷く。
「どうして、あんな恐ろしいものがあるのかな?何のためにあんな恐ろしいものを作ったんだろうって思う……。世の中からなくなってしまえばいいのに……」
「そうだね……」
『麻薬』という恐ろしいものが使われたこと……。
戸籍が無いということでまっとうな仕事に就けないということ……。
親が事件を起こしたために何の関係も無い子供にまで影響が出てまっとうな仕事に就けなくなったこと……。
今回の事件は愛情故の事件でもあるが、その事が浮き彫りになった事件でもある。この事件は一体誰が悪いのか……?本当の『悪』は何なのか……?いろんなことを考えさせられる事件だった……。
「……なんで?なんで私ばっかりこんな目に遭うのよ……」
一人の女性が割れた食器を片付けながら小さく言葉を吐く。
「おい!さっさと片付けろよ!あのババァもどうにかしろ!」
そこに一人の男の怒声が響く。
「……もう嫌……もう嫌よ……こんな生活……」
女性が呻くように涙を流しながら言葉を綴る。
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(第三章に続く)
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