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第二章 沼に足を取られた鳥は愛を知る
第6話
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「絵梨佳、水を持ってこい……」
政明が絵梨佳に命令するような口調で言う。
「う……うん……」
絵梨佳が台所に水を汲みに行く。そして、その水を政明に渡した。政明は受け取った水に麻薬を溶かす。量的に多いような気もするが、それが対処法なのかもしれないと思い、絵梨佳は黙ってその様子を見ていた。
「これくらいでいいだろう……」
政明がそう言って、リナにその水を飲むように勧める。
「これを飲めば楽になれる……。ほら……飲め……」
政明がそう言いながらリナにその水を勧める。リナはその水を受け取ると、一気に飲み干した。
リナがその水を飲んでどこかホッとした表情を見せる。
次の瞬間……。
「あ……か……あ……あ……」
リナが苦しむような声を上げる。次第に体が痙攣していき、呼吸困難になっているような状態に陥る。
「リ……リナ?!」
リナの様子に驚いた絵梨佳がリナに近付こうとする。
「近付くな!!」
政明が声を上げて絵梨佳を制する。
――――ドサッ……。
急に糸が切れたみたいにリナがその場に倒れる。口からは泡を吹いており、目は見開いたままだ。
「リ……ナ……?」
絵梨佳がその様子を見て呆然とする。
「あっ……あっ……やぁぁぁぁぁぁ!!!」
――――バターンっ!!!
絵梨佳が恐怖のあまり叫び声をあげながらその部屋を飛び出す。
「おい?!絵梨佳?!!」
絵梨佳が飛び出したことに驚き、政明が声を掛けるが絵梨佳はそのままその場を走り去っていった。
「……この人を知っているのですか?」
街で聞き込みをしていた奏たちは亡くなった女性を知っているという一人の女性に話を聞いていた。シオンと名乗る女性は身なりからして『売り』をしているのだろう。亡くなった女性とも雰囲気が似ている。シオンの話では亡くなった女性はリコという名前らしい。それが本名かどうかは分からないのだが、そう呼んでいたという事だった。話によるとシオンもリコも戸籍がなく、まっとうな仕事に就けなかったのだという。
「……事件の事は知っています。リコが死んだってわかった時は驚きました……」
シオンが悲しそうにそう言葉を綴る。
「ちなみに、このリコさんと仲良かった方は他にいますか……?」
奏の言葉にシオンが考える。
「……仲が良いかどうかは分からないけど、他にいるとしたら絵梨佳とリナ……じゃないかな?」
「ちなみにこの人は知っている?」
透が防犯カメラに写っていた逃げた女性の写真を見せる。
「……あぁ、この子が絵梨佳ですよ」
シオンが写真を見てそう答える。
「ちなみにこの子の連絡先や住んでいるところは知っているか?」
槙が少しぶっきらぼうに聞く。
「いえ、そこまでは……。なんていうのかな?私達ってある意味同類なんですけど、連絡先を交換したりとかはしないんですよ。家に行くのも偶然会って呼ばれたら行くけど、基本は慣れ合わないのが暗黙の了解というか……。まぁ、深入りしない感じですね……」
シオンが恐縮しながらそう言葉を綴る。
「そうですか……。ご協力ありがとうございます。もしよろしければ何か思いだしたことや何かあったらこちらにご連絡をいただけませんか?」
奏がそう言って一枚の小さな紙をシオンに渡す。シオンは紙を受け取ると「分かりました」と言って、その場を離れようとした時だった。
「あっ……そうだ。絵梨佳の住んでいる場所は分かりませんが、リナの住んでいる場所なら分かりますよ?二回ほど、部屋に遊びに行ったことがあるので……」
「「「え?!!!」」」
シオンの言葉に奏たちが驚きの声を上げる。
「その……リナは寂しがり屋なところがあって仲良くなった人を部屋に連れてくることがあるんですよ。私もリナに偶然会った時に『遊びに来ない?』って言われて遊びに行ったことがあります……」
シオンの言葉に奏たちが顔を合わせる。
「……もし良かったら、そこに案内して頂いても良いですか?」
奏の言葉にシオンが頷く。
こうして奏たちはシオンの案内でリナの部屋に行くことにした。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
かなり走って息が乱れたのか絵梨佳が呼吸を整える。同じ仲間ともいえる二人を自分が持っていた麻薬によって死に追いやってしまった。
「あっ……」
リナの部屋から飛び出して無我夢中で走ったので、今になって荷物を全部部屋に置いてきたことを思い出す。財布からスマートフォンから全て置いてきたので、何も買うことも出来ないし、連絡を取る事すらできないことに気付く。
「どうしよう……」
部屋に取りに戻ることも考えるが、政明がまだ部屋にいたら自分も殺される可能性がある。ただ、それ以上にあんなことが起こった部屋に戻れるかと言えば戻る事は難しいように感じた……。
とぼとぼと道を歩く。
(これからどうしよ……)
途方に暮れながら道を歩く。
――――ドンっ!!
「ご……ごめんなさい……」
ぼんやりと歩いていたので前を見ていなかったせいか人にぶつかり慌てて謝罪する。
「あれ?君は……」
ぶつかってきた絵梨佳にその人物がそう声を出した。
政明が絵梨佳に命令するような口調で言う。
「う……うん……」
絵梨佳が台所に水を汲みに行く。そして、その水を政明に渡した。政明は受け取った水に麻薬を溶かす。量的に多いような気もするが、それが対処法なのかもしれないと思い、絵梨佳は黙ってその様子を見ていた。
「これくらいでいいだろう……」
政明がそう言って、リナにその水を飲むように勧める。
「これを飲めば楽になれる……。ほら……飲め……」
政明がそう言いながらリナにその水を勧める。リナはその水を受け取ると、一気に飲み干した。
リナがその水を飲んでどこかホッとした表情を見せる。
次の瞬間……。
「あ……か……あ……あ……」
リナが苦しむような声を上げる。次第に体が痙攣していき、呼吸困難になっているような状態に陥る。
「リ……リナ?!」
リナの様子に驚いた絵梨佳がリナに近付こうとする。
「近付くな!!」
政明が声を上げて絵梨佳を制する。
――――ドサッ……。
急に糸が切れたみたいにリナがその場に倒れる。口からは泡を吹いており、目は見開いたままだ。
「リ……ナ……?」
絵梨佳がその様子を見て呆然とする。
「あっ……あっ……やぁぁぁぁぁぁ!!!」
――――バターンっ!!!
絵梨佳が恐怖のあまり叫び声をあげながらその部屋を飛び出す。
「おい?!絵梨佳?!!」
絵梨佳が飛び出したことに驚き、政明が声を掛けるが絵梨佳はそのままその場を走り去っていった。
「……この人を知っているのですか?」
街で聞き込みをしていた奏たちは亡くなった女性を知っているという一人の女性に話を聞いていた。シオンと名乗る女性は身なりからして『売り』をしているのだろう。亡くなった女性とも雰囲気が似ている。シオンの話では亡くなった女性はリコという名前らしい。それが本名かどうかは分からないのだが、そう呼んでいたという事だった。話によるとシオンもリコも戸籍がなく、まっとうな仕事に就けなかったのだという。
「……事件の事は知っています。リコが死んだってわかった時は驚きました……」
シオンが悲しそうにそう言葉を綴る。
「ちなみに、このリコさんと仲良かった方は他にいますか……?」
奏の言葉にシオンが考える。
「……仲が良いかどうかは分からないけど、他にいるとしたら絵梨佳とリナ……じゃないかな?」
「ちなみにこの人は知っている?」
透が防犯カメラに写っていた逃げた女性の写真を見せる。
「……あぁ、この子が絵梨佳ですよ」
シオンが写真を見てそう答える。
「ちなみにこの子の連絡先や住んでいるところは知っているか?」
槙が少しぶっきらぼうに聞く。
「いえ、そこまでは……。なんていうのかな?私達ってある意味同類なんですけど、連絡先を交換したりとかはしないんですよ。家に行くのも偶然会って呼ばれたら行くけど、基本は慣れ合わないのが暗黙の了解というか……。まぁ、深入りしない感じですね……」
シオンが恐縮しながらそう言葉を綴る。
「そうですか……。ご協力ありがとうございます。もしよろしければ何か思いだしたことや何かあったらこちらにご連絡をいただけませんか?」
奏がそう言って一枚の小さな紙をシオンに渡す。シオンは紙を受け取ると「分かりました」と言って、その場を離れようとした時だった。
「あっ……そうだ。絵梨佳の住んでいる場所は分かりませんが、リナの住んでいる場所なら分かりますよ?二回ほど、部屋に遊びに行ったことがあるので……」
「「「え?!!!」」」
シオンの言葉に奏たちが驚きの声を上げる。
「その……リナは寂しがり屋なところがあって仲良くなった人を部屋に連れてくることがあるんですよ。私もリナに偶然会った時に『遊びに来ない?』って言われて遊びに行ったことがあります……」
シオンの言葉に奏たちが顔を合わせる。
「……もし良かったら、そこに案内して頂いても良いですか?」
奏の言葉にシオンが頷く。
こうして奏たちはシオンの案内でリナの部屋に行くことにした。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
かなり走って息が乱れたのか絵梨佳が呼吸を整える。同じ仲間ともいえる二人を自分が持っていた麻薬によって死に追いやってしまった。
「あっ……」
リナの部屋から飛び出して無我夢中で走ったので、今になって荷物を全部部屋に置いてきたことを思い出す。財布からスマートフォンから全て置いてきたので、何も買うことも出来ないし、連絡を取る事すらできないことに気付く。
「どうしよう……」
部屋に取りに戻ることも考えるが、政明がまだ部屋にいたら自分も殺される可能性がある。ただ、それ以上にあんなことが起こった部屋に戻れるかと言えば戻る事は難しいように感じた……。
とぼとぼと道を歩く。
(これからどうしよ……)
途方に暮れながら道を歩く。
――――ドンっ!!
「ご……ごめんなさい……」
ぼんやりと歩いていたので前を見ていなかったせいか人にぶつかり慌てて謝罪する。
「あれ?君は……」
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