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●その4. ロリ爆乳二人がTPSでネット対戦
4-1.
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「はい――っというわけで、今回はネトゲでー」
「てぃーぴーえーっす!」
動画が始まってすぐ、画面に映った女子二人は名乗りも上げずに歓声を上げた。
「……とテンション上げてみたところでー、自己紹介。桜井千黒と、」
「佐塚鈴だっ」
今回の二人はごくごく普通の部屋着コーデだ。
千黒はオフホワイトのキャミに、ライトグレーの短パンだ。素手に素足、腋に胸元と露出多めなのに健全感が強いのは、パステルカラーの力だろうか。なお、煌めく黒髪は一本の緩い三つ編みに結われて、肩口から前に垂らされている。
鈴の装いは、薄茶色のだぼっとした薄手パーカーだ。前立てのファスナーは完全に上がりきってはおらず、胸の谷間がちら見えしている。パーカーの裾で隠れているため、ボトムスがどうなっているのかは不明だ。きらきらピンクのふわふわ髪は、左耳のところで横尻尾にまとめられている。
「はい、改めてー……今回はオンライン対戦をやってきまー」
「ちーの相手はもー飽きたっ」
「うっせ。それ、あーしの台詞だっつの! ……ま、実際、あーしら二人でやってるだけだとマンネリしそーだしーってことで、ね」
「とりまネトゲでやってみて、動画的に良さげかどーか確かめてみよーってことー♡」
「そゆことでー♡」
雑な説明が終わったところで、配信画面の中央下側に、ぱっとゲーム画面がポップアップ。
ゲームの製作会社名だとかがつらつら表示されていくのを見ながら、千黒が説明を加えていく。
「今回選んだタイトルについてなんだけど、なんでこれを選んだのかって話。まず大前提として、あーしらエロ配信じゃん。だから、エロ絶対禁止って感じのはまず駄目ぇ。で、そう決めたわけじゃねーけど、たぶんエロい縛りプレイするじゃん。でも、それで味方に迷惑かけんのは駄目だから、個人戦かタッグ戦ができるやつじゃないとー……ってことで探した結果、このタイトルになりまーしたー」
ゲーム画面に映し出されたのは、『メビウスナイツ』というタイトルだ。同時に英語で『Mebius Knights』と出ていて、背景には∞を意匠化したものが描かれている。
「メビウスナイツ……って、なにゲー?」
可愛らしく小首を傾げた鈴に、千黒はいったんゲーム画面を非表示にして、ログイン作業などを進めながら答える。
「さっき鈴も言ってたけど、TPSだね。ま、要するに、自キャラの尻を見ながら操作するシューティングよ」
「あ、銃で撃ち合うやつー」
「そ、そ。あーでも、このゲームは剣とか弓とかも使えるっぽかったよーなー?」
「ほほぅ?」
「えーとね……確か、プレイヤーはタイムパトロールって設定なんよ」
「時空警察!」
「それそれ。んで、時間犯罪者とか、謎の異次元インベーダーとかと三つの時代で戦うんだけど、そのときの制約として“その時代に即した装備しかNG”ってなってるわけ」
「……つまり?」
「つまり、中世・現代・未来の三ステージがあって、中世なら剣と弓、現代なら銃と爆弾、未来なら超能力で戦うんだってさ」
「ほーん」
「あ、すげー理解を放棄した顔!」
「だってー、いきなし言葉だけズラズラ並べられてもー」
「それもそーな」
「納得すんのかっ」
……などと益体もないトークをしているうちに、ログインも終わって、ゲーム画面が復帰。そこには、いかにも初期装備ですって感じの地味な貫頭衣と膝丈パンツを身に着けた女性アバターが、こちらに背中を向けて立っていた。
「はい、これがチュートリアル終了直後のガチ新規キャラでーす」
千黒の操作に合わせて、アバターがくるくる回って画面こちらに振り返った。カメラが操作アバターの背中に追従するのがTPSだけど、ロビーエリアではラジコン方式の操作もできるようだ。
「ちゃんとやるんだったら、鈴も一緒にネットできるようにゲーム機もう一個用意すんだけどー……今日はまだお試しってことで、あーしだけでやってきまー」
「うちは応援してっだけー」
「あと、コスプレもお休みね」
「この初期服でコスってもねー」
くるくる回ったり跳ねたりしているアバターは黒髪ロングで、たぶん千黒そのままの見た目をイメージしているのだろう。
「そんじゃまー、とりま対戦やってみっかー」
「おーっ!」
アバターは画面に尻を向けて走り出すと、ロビー空間にいくつも点在している地下街への入り口みたいな、あるいはプレハブの物置小屋みたいな構造物のひとつに近づいていく。
ちなみに、このロビー空間は時間警察の拠点という設定の、未来的なデザインをした広場だ。そこらに散見される他人のアバターも、特撮ヒーローやアメコミ風の装いをしているのが大半だ。……まあ中には、危険なほどきわど水着姿のマッチョ男性とか、スポーツチームのマスコットみたいな着ぐるみ姿のアバターもいたけれど。
「えっと、これがシューターって言うんだっけ。これでプレイルームとかチャットルームとかに移動できるわけ」
「どこへでも行けるドアー」
「そう、どこへでもドア……って、危ねーな! ま、とにかく、これで入れそーな対戦部屋を探しまー……ん、これかな」
リスト表示された部屋の中から千黒が選んだのは、「現代ステージ、PvP、個人スコア戦」という部屋だった。
このゲームは対人戦の他に、敵性NPCと戦うストーリー戦が用意されている。世界観としては、対人戦は“任務のための演習”、ということになっているらしい。
それはともかく、千黒のアバターがしばしのロード画面と出撃準備画面を挟んで、演習フィールドに降り立った。
「あ、カウントあんね。これがゼロになったら戦闘開始?」
千黒の横でゲーム画面を観ているらしい鈴が、こちらを指差して言う。
「だろーね。ちょうど、あーしが入って定員になったぽいしー」
ゲーム画面には戦闘開始までのカウントの他、端のほうにチャット画面も表示されていて、そこには「よろしくお願いします」「よろ」「にゃー」だとかの挨拶がずらずらと並んでは流れていっている。
でも、千黒に挨拶のチャットを打ち込む余裕はないみたいだ。
「えーと、いちおう装備このままで大丈夫なはず……まー最悪ぐだぐだでも個人戦だし、味方に迷惑とかはねーし……あっ、そだ。えーと、このゲームは武器は色々あって性能がそれぞれ違うっぽいんだけど、防具ってかコスは見た目が変わるだけで、防御力とかは全部設定されてないっぽいんでー、この初期コスでも問題ねー……はずっ」
「ふむー。でも、武器も初期装備よね? そっちは問題なくないん?」
「いちおー、チュートリアルやったときに最大まで強化してっから、戦えなくはない? 的な?」
「微っ妙」
「ま、やってみりゃ分かるっしょー。ってか、もう始まっしー」
カウントダウンが終了したと同時に、千黒のアバターはシュッと消しゴムを掛けたように消えて、演習フィールド内のランダム地点に瞬間移動。音楽が切り替わって、戦闘開始になった。
「てぃーぴーえーっす!」
動画が始まってすぐ、画面に映った女子二人は名乗りも上げずに歓声を上げた。
「……とテンション上げてみたところでー、自己紹介。桜井千黒と、」
「佐塚鈴だっ」
今回の二人はごくごく普通の部屋着コーデだ。
千黒はオフホワイトのキャミに、ライトグレーの短パンだ。素手に素足、腋に胸元と露出多めなのに健全感が強いのは、パステルカラーの力だろうか。なお、煌めく黒髪は一本の緩い三つ編みに結われて、肩口から前に垂らされている。
鈴の装いは、薄茶色のだぼっとした薄手パーカーだ。前立てのファスナーは完全に上がりきってはおらず、胸の谷間がちら見えしている。パーカーの裾で隠れているため、ボトムスがどうなっているのかは不明だ。きらきらピンクのふわふわ髪は、左耳のところで横尻尾にまとめられている。
「はい、改めてー……今回はオンライン対戦をやってきまー」
「ちーの相手はもー飽きたっ」
「うっせ。それ、あーしの台詞だっつの! ……ま、実際、あーしら二人でやってるだけだとマンネリしそーだしーってことで、ね」
「とりまネトゲでやってみて、動画的に良さげかどーか確かめてみよーってことー♡」
「そゆことでー♡」
雑な説明が終わったところで、配信画面の中央下側に、ぱっとゲーム画面がポップアップ。
ゲームの製作会社名だとかがつらつら表示されていくのを見ながら、千黒が説明を加えていく。
「今回選んだタイトルについてなんだけど、なんでこれを選んだのかって話。まず大前提として、あーしらエロ配信じゃん。だから、エロ絶対禁止って感じのはまず駄目ぇ。で、そう決めたわけじゃねーけど、たぶんエロい縛りプレイするじゃん。でも、それで味方に迷惑かけんのは駄目だから、個人戦かタッグ戦ができるやつじゃないとー……ってことで探した結果、このタイトルになりまーしたー」
ゲーム画面に映し出されたのは、『メビウスナイツ』というタイトルだ。同時に英語で『Mebius Knights』と出ていて、背景には∞を意匠化したものが描かれている。
「メビウスナイツ……って、なにゲー?」
可愛らしく小首を傾げた鈴に、千黒はいったんゲーム画面を非表示にして、ログイン作業などを進めながら答える。
「さっき鈴も言ってたけど、TPSだね。ま、要するに、自キャラの尻を見ながら操作するシューティングよ」
「あ、銃で撃ち合うやつー」
「そ、そ。あーでも、このゲームは剣とか弓とかも使えるっぽかったよーなー?」
「ほほぅ?」
「えーとね……確か、プレイヤーはタイムパトロールって設定なんよ」
「時空警察!」
「それそれ。んで、時間犯罪者とか、謎の異次元インベーダーとかと三つの時代で戦うんだけど、そのときの制約として“その時代に即した装備しかNG”ってなってるわけ」
「……つまり?」
「つまり、中世・現代・未来の三ステージがあって、中世なら剣と弓、現代なら銃と爆弾、未来なら超能力で戦うんだってさ」
「ほーん」
「あ、すげー理解を放棄した顔!」
「だってー、いきなし言葉だけズラズラ並べられてもー」
「それもそーな」
「納得すんのかっ」
……などと益体もないトークをしているうちに、ログインも終わって、ゲーム画面が復帰。そこには、いかにも初期装備ですって感じの地味な貫頭衣と膝丈パンツを身に着けた女性アバターが、こちらに背中を向けて立っていた。
「はい、これがチュートリアル終了直後のガチ新規キャラでーす」
千黒の操作に合わせて、アバターがくるくる回って画面こちらに振り返った。カメラが操作アバターの背中に追従するのがTPSだけど、ロビーエリアではラジコン方式の操作もできるようだ。
「ちゃんとやるんだったら、鈴も一緒にネットできるようにゲーム機もう一個用意すんだけどー……今日はまだお試しってことで、あーしだけでやってきまー」
「うちは応援してっだけー」
「あと、コスプレもお休みね」
「この初期服でコスってもねー」
くるくる回ったり跳ねたりしているアバターは黒髪ロングで、たぶん千黒そのままの見た目をイメージしているのだろう。
「そんじゃまー、とりま対戦やってみっかー」
「おーっ!」
アバターは画面に尻を向けて走り出すと、ロビー空間にいくつも点在している地下街への入り口みたいな、あるいはプレハブの物置小屋みたいな構造物のひとつに近づいていく。
ちなみに、このロビー空間は時間警察の拠点という設定の、未来的なデザインをした広場だ。そこらに散見される他人のアバターも、特撮ヒーローやアメコミ風の装いをしているのが大半だ。……まあ中には、危険なほどきわど水着姿のマッチョ男性とか、スポーツチームのマスコットみたいな着ぐるみ姿のアバターもいたけれど。
「えっと、これがシューターって言うんだっけ。これでプレイルームとかチャットルームとかに移動できるわけ」
「どこへでも行けるドアー」
「そう、どこへでもドア……って、危ねーな! ま、とにかく、これで入れそーな対戦部屋を探しまー……ん、これかな」
リスト表示された部屋の中から千黒が選んだのは、「現代ステージ、PvP、個人スコア戦」という部屋だった。
このゲームは対人戦の他に、敵性NPCと戦うストーリー戦が用意されている。世界観としては、対人戦は“任務のための演習”、ということになっているらしい。
それはともかく、千黒のアバターがしばしのロード画面と出撃準備画面を挟んで、演習フィールドに降り立った。
「あ、カウントあんね。これがゼロになったら戦闘開始?」
千黒の横でゲーム画面を観ているらしい鈴が、こちらを指差して言う。
「だろーね。ちょうど、あーしが入って定員になったぽいしー」
ゲーム画面には戦闘開始までのカウントの他、端のほうにチャット画面も表示されていて、そこには「よろしくお願いします」「よろ」「にゃー」だとかの挨拶がずらずらと並んでは流れていっている。
でも、千黒に挨拶のチャットを打ち込む余裕はないみたいだ。
「えーと、いちおう装備このままで大丈夫なはず……まー最悪ぐだぐだでも個人戦だし、味方に迷惑とかはねーし……あっ、そだ。えーと、このゲームは武器は色々あって性能がそれぞれ違うっぽいんだけど、防具ってかコスは見た目が変わるだけで、防御力とかは全部設定されてないっぽいんでー、この初期コスでも問題ねー……はずっ」
「ふむー。でも、武器も初期装備よね? そっちは問題なくないん?」
「いちおー、チュートリアルやったときに最大まで強化してっから、戦えなくはない? 的な?」
「微っ妙」
「ま、やってみりゃ分かるっしょー。ってか、もう始まっしー」
カウントダウンが終了したと同時に、千黒のアバターはシュッと消しゴムを掛けたように消えて、演習フィールド内のランダム地点に瞬間移動。音楽が切り替わって、戦闘開始になった。
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