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2章
38-1. 受胎告知 アルカ
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目を覚ましたら全て解決していました。まる。
わたしが気絶したのは、中出しが気持よすぎたドラゴンの上げた歓喜の遠吠えが原因だったみたいです。
そのときの遠吠えは、横穴の外にいた義兄さんやゴブさんたちを竦ませるくらいの大ボリュームで、そんな大音量を間近で浴びたせいで、わたしは気絶したのだろう――ということでした。
「音響兵器を食らうと鼓膜が破裂したりすることもある、とウィキに書いてあったけど、なんともないようだな」
義兄さんは目を覚ましたわたしに話しかけたり、目の前で指を左右に動かして「何本だ? 目で追ってみろ。両耳とも聞こえているか?」と映画に出てくる救急隊員みたいなことをしてきましたけど、わたしの身体に問題はありませんでした。
「……って、あれれ? 肩とかお腹とか、ドラゴンの鉤爪ざっくり入っちゃってたと思ってたんですけど……あっ、それにま○こ裂けてない!」
かけてもらっていた毛皮を脱いで、自分で自分の身体に色んなところを触ってみましたけど、痛かったところがどこも綺麗に治っていました。皮膚が不自然に盛り上がっていたり、押してみて痼りを感じたりすることもありません。怪我をしたのが夢だったかのようです。
「……って、むしろお肌すべすべなんですが……ここ、エステ?」
わたしの身体は怪我しているどころか、かつてないほどのすべすべ卵肌になっていました。髪も天井からの光を浴びて艶々に輝いています。
「……って、そういえば明るいですね」
気絶から目を覚まして初めて辺りを気にしたわけですが、ここは出入り口がひとつ空いているだけの洞穴内みたいです。小さなコンサートホールって感じです。出入り口の向こうは夜みたいですけど、天井近くに照明が灯っていたおかげで視界は良好です。
たぶん、わたしがドラゴンに犯されていた場所なのでしょう。で、義兄さんとゴブさんたちが助けに来てくれて、ドラゴンと和解した……という感じなのでしょう。だってドラゴンが普通にちょこんとお座りしてますし。戦ったような雰囲気がないですし。もっとも、戦士さんも忍者さんもドラゴンを怖い目で睨んでいて、何かあれば躊躇なく突撃していきそうな雰囲気はありますけれど。
『吾が魔術ぞ』
「えっ、誰です!?」
義兄さんのでも、ゴブさんたちのでもない、変な声です。スマホのスピーカー機能で電話しているときのような……え? まさか電話の声なの?
『竜ぞ。汝らは吾をそう呼ぶ』
「え、竜……ドラゴン?」
ドラゴンを見上げたら、ドラゴンはわたしを見下ろしてゆっくり頷きました。
それから義兄さんとドラゴンからもう少し詳しい説明を受けて、わたしもだいたいの経緯を把握しました。
「なるほど……わたしはドラゴンさんの朝立ちオナニーのおかず兼オナホにされたわけですかー。しかも、中出しで妊娠したとー……なるほどなるほどー」
「納得なのか……」
うんうんと頷いているわたしに、義兄さんが不満げな顔で呟きました。
「――なわけあるかッ!!」
誰かが叫びました。
義兄さんが驚いた顔をしています。ずっとドラゴンを睨んでいたゴブさんたちも、目を丸くしています。爬虫類の表情は分かりませんけど、何も言わず身動ぎもせずにいるところから、身を縮こまらせているのでしょう。
わたしも驚きました。だって、いまのは誰かの声じゃなくて、わたしの声だったから。
叫んだのはわたしでした。
気がつけば心臓が暴れています。頭に血が上っているのでしょう、頭痛がします。熱いのに身体が震えてきます。目がちかちかして、呼吸の仕方が分からなくなります。息を吸うのと吐くのと、交互にするのってどうやるんだっけ?
「……っ……っは……!」
遠くで義兄さんたちが叫んでいるみたいです。でも、声が遠すぎて聞き取れませんよ。それに、灯りが弱くなってます。ドラゴンの魔術でしたっけ? もっと光を強めてくださいよ。ああほら、また真っ暗になっちゃったじゃないですか。
見えないんですよ、何も。
何も――見たくない。聞きたくない。知りたくない。要らない。知らない。ない。何も、ない。
わたしが気絶したのは、中出しが気持よすぎたドラゴンの上げた歓喜の遠吠えが原因だったみたいです。
そのときの遠吠えは、横穴の外にいた義兄さんやゴブさんたちを竦ませるくらいの大ボリュームで、そんな大音量を間近で浴びたせいで、わたしは気絶したのだろう――ということでした。
「音響兵器を食らうと鼓膜が破裂したりすることもある、とウィキに書いてあったけど、なんともないようだな」
義兄さんは目を覚ましたわたしに話しかけたり、目の前で指を左右に動かして「何本だ? 目で追ってみろ。両耳とも聞こえているか?」と映画に出てくる救急隊員みたいなことをしてきましたけど、わたしの身体に問題はありませんでした。
「……って、あれれ? 肩とかお腹とか、ドラゴンの鉤爪ざっくり入っちゃってたと思ってたんですけど……あっ、それにま○こ裂けてない!」
かけてもらっていた毛皮を脱いで、自分で自分の身体に色んなところを触ってみましたけど、痛かったところがどこも綺麗に治っていました。皮膚が不自然に盛り上がっていたり、押してみて痼りを感じたりすることもありません。怪我をしたのが夢だったかのようです。
「……って、むしろお肌すべすべなんですが……ここ、エステ?」
わたしの身体は怪我しているどころか、かつてないほどのすべすべ卵肌になっていました。髪も天井からの光を浴びて艶々に輝いています。
「……って、そういえば明るいですね」
気絶から目を覚まして初めて辺りを気にしたわけですが、ここは出入り口がひとつ空いているだけの洞穴内みたいです。小さなコンサートホールって感じです。出入り口の向こうは夜みたいですけど、天井近くに照明が灯っていたおかげで視界は良好です。
たぶん、わたしがドラゴンに犯されていた場所なのでしょう。で、義兄さんとゴブさんたちが助けに来てくれて、ドラゴンと和解した……という感じなのでしょう。だってドラゴンが普通にちょこんとお座りしてますし。戦ったような雰囲気がないですし。もっとも、戦士さんも忍者さんもドラゴンを怖い目で睨んでいて、何かあれば躊躇なく突撃していきそうな雰囲気はありますけれど。
『吾が魔術ぞ』
「えっ、誰です!?」
義兄さんのでも、ゴブさんたちのでもない、変な声です。スマホのスピーカー機能で電話しているときのような……え? まさか電話の声なの?
『竜ぞ。汝らは吾をそう呼ぶ』
「え、竜……ドラゴン?」
ドラゴンを見上げたら、ドラゴンはわたしを見下ろしてゆっくり頷きました。
それから義兄さんとドラゴンからもう少し詳しい説明を受けて、わたしもだいたいの経緯を把握しました。
「なるほど……わたしはドラゴンさんの朝立ちオナニーのおかず兼オナホにされたわけですかー。しかも、中出しで妊娠したとー……なるほどなるほどー」
「納得なのか……」
うんうんと頷いているわたしに、義兄さんが不満げな顔で呟きました。
「――なわけあるかッ!!」
誰かが叫びました。
義兄さんが驚いた顔をしています。ずっとドラゴンを睨んでいたゴブさんたちも、目を丸くしています。爬虫類の表情は分かりませんけど、何も言わず身動ぎもせずにいるところから、身を縮こまらせているのでしょう。
わたしも驚きました。だって、いまのは誰かの声じゃなくて、わたしの声だったから。
叫んだのはわたしでした。
気がつけば心臓が暴れています。頭に血が上っているのでしょう、頭痛がします。熱いのに身体が震えてきます。目がちかちかして、呼吸の仕方が分からなくなります。息を吸うのと吐くのと、交互にするのってどうやるんだっけ?
「……っ……っは……!」
遠くで義兄さんたちが叫んでいるみたいです。でも、声が遠すぎて聞き取れませんよ。それに、灯りが弱くなってます。ドラゴンの魔術でしたっけ? もっと光を強めてくださいよ。ああほら、また真っ暗になっちゃったじゃないですか。
見えないんですよ、何も。
何も――見たくない。聞きたくない。知りたくない。要らない。知らない。ない。何も、ない。
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