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地上の大華国 篇

〈閑話・天上の華界〉咎人と無慈悲な最高神・後

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(どうしてー……どうして、わたくしがこのような目にー……)

全ては浅ましい心根こころねが生んだとも。そして、そのむくいとも。

うつろになる頭でいくら考えようが、どれほど悔い改めようが、今更どのみち手遅れ。

最早もはや華妃かひ富貴ふうき未来さきはない。

傀儡かいらいの妃として大人しくあれば、愛されないにしても、他の華界人かかいじんからは、最高神華王かおうの妃としてうやまわれはする。

ーしかし、そうは言っても

心無い人形でもない限りは、愛をい、求め、愛し愛されたいと願うもの。

華界人かかいじんを造り、“情”と云う感情を芽吹かせたのは、他でもない創造主そうぞうしゅたる華王かおう自身。

華界かかいべる美しい最高神に求められれば、やはりその情愛じょうあいの全ても欲しくなるのは至極当然しごくとうぜん

ーだからこそ、最高神華王かおうに“無償むしょうの愛”を注がれる女神彩華さいか嫉妬しっとし、「消えて欲しい……!」との浅ましい心根こころねに突き動かされ、はかった華妃かひ富貴ふうき


さかのぼること。

あの時、女神彩華さいかに「ー逃して欲しい」となげき乞われた華妃かひ富貴ふうき

「そなたの願いを叶えてやらない事もないー……ふふっ」

思わずほくそ笑む。

(ーならば、いっそうのことー……!)

女神彩華さいか嘆願たんがん好機こうきとらえた華妃かひ富貴ふうき

それに乗じて、すぐさま女神彩華さいかから華界かかいでの記憶ともする「最高神華王かおうから寵愛ちょうあいされる記憶」や「女神としてる全ての記憶」を根こそぎ奪う。

記憶を奪われ、おぼろげにふらつく女神彩華さいかを有無を言わさず、下界へと通じる泉から突き落とした華妃かひ富貴ふうき

人の世界の何処どこへと落ちるかなどは気にもせず、ただただ憎いがゆえの行為。そこには、女神彩華さいかを手助けする想いはない。

女神彩華さいかを突き落とすと同時に、声高こわだかに叫ぶ華妃かひ富貴ふうきには笑みがー。

「憎いそなたー……わたくしいとしい御方おかたたぶらかす妖婦ようふなど、下界のけがれた瘴気しょうきまみれ、赤子諸共もろともに消滅すれば良い……!」

嫉妬しっとに狂う浅ましい女神は、実にみにくい。

そして、華妃かひ富貴ふうきは最高神華王かおうの怒りを買う。

最高神華王かおうの「珠玉しゅぎょくはな」を下界へ落としたとがからは、のがれようがない。

天上の華界かかいでは、最高位の兄妹けいまい神を畏敬いけいねんもってうやまいこそすれ、機嫌を損ねる事はもってのほか


捕らわれた華妃かひ富貴ふうき

最高神華王かおうが住まう御殿ごてんからは、かなり離れた場所に建つ〈いましめの塔〉。

華界人かかいじんが増長すれば、それをいましめる為に造られた牢獄は、いまだ使われることなく放置されるも、そこにまさかの最高神華王かおうの妃が入獄。

最高神華王かおうに囚われた華妃かひ富貴ふうきは、即座に華妃かひ封号ほうごう剥奪はくだつされ、女神の力のすべても奪われる。

そこにるのは、ただの「咎人とがびと富貴ふうき」。ついで責苦せめくが待ち受ける。

牢獄の壁へと荊棘いばらくいで両手足を貫ぬかれ、激痛に堪える咎人とがびと富貴ふうき

「あががががががっ、ぐがぁあああああっーーー!!」

がたい痛みにもだえ絶叫し、苦しみに堪える日々。

最後は〈天刑台てんけいだい〉での公開の裁きが待つのみ。


かたや、下界へ落とされた女神彩華さいか

しくも、落ちた先は美しい芍薬しゃくやくが咲き誇る〈帝宮庭園ていぐうていえん〉。まるで、そこへと引き寄せられるように落ちた女神彩華さいか

栄誉ある「華妃かひ」の封号ほうごう剥奪はくだつされた咎人とがびと富貴ふうきと入れ替わるように、人界をべる皇帝王華おうかから過分に寵愛ちょうあいされ、ついで「華妃かひ」に封じられる栄誉を受ける女神彩華さいか

まさに、めいあんを分ける二人の女神。


女神彩華さいかは、生まれながらに恩寵おんちょうを持つ稀有けうな女神ゆえに、やはり何をもってしても越える事はできない。
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