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本編
〈閑話〉アラナの事情と伯爵家当主の最期・後
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※断罪回の為、残酷な描写や不快な表現があります。苦手な方はご注意下さい。
* * * * * * * * * *
気が付けば。
自らの頬に伝わる冷たい感触と何かが顔を齧るような痛みに目を覚ます伯爵家当主ヘンリー。
ゆっくりと顔を起こせば、一瞬だが視界を横切る物体が、大きな鼠だと知る。どうやら気を失っている間に、薄汚い鼠の群れによって顔を齧られていたせいで、幾つもの噛み跡が出来ては、そこから血が流れている。
先ず、その事に恐怖する伯爵家当主ヘンリー。
不衛生な環境下に蔓延る鼠は、恐ろしい病引き起こす。
「わっ、私の顔が……薄汚いの鼠に……?!」
そっと頬を触れば、どろりと指先に血が滴る。
「いったい私は……此処は何処なんだ……?」
ゆっくりと視界を凝らし、辺りを見回せば薄暗い石牢の中。ーしかも、壁に埋め込まれた鉄製の重い鎖が伸びては、伯爵家当主ヘンリーの両足首に巻かれ、動きを封じている。
窓一つない石牢の入り口には太い鉄格子が嵌まり、およそ逃げ道がない事を物語る。その事に、ようやくあの時に捕えられた事を知る伯爵家当主ヘンリー。
「……どうして私がこのような目に遭う?! それにアラナは……私のアラナは無事なのか! アラナっ……!!」
叫ぶ伯爵家当主ヘンリーの声が石牢の中へと反響する。
「アラナなら無事だ。今は私の寝所にて介抱され、深く眠っている。おまえが心配する必要はない……どうせ此処で潰える命だ。それにおまえ如き虫螻が、高貴なアラナの名を気安く呼ぶな。不敬も甚だしい」
いつの間に現れたのか。
伯爵家当主ヘンリーの目の前、石牢の鉄格子の向こう側には、澄んだ声音に優美な佇まいの長身の男が一人。
伯爵家当主ヘンリーが詰め寄ろうにも、重い足枷が邪魔をするせいで、その男に近付く事すら出来ない。
ただ、不意に見えた男の身に付ける豪華な衣装の裾や上物の履き物が、男が只者ではない事を知らしめている。
「貴様っ……! 私をこの様な目に遭わせておきながら、ただで済むと思っているのか! 私はブレイディ王国の国王からも招待されている身だ。その私をよくも……! 私の美しいアラナを返せ! あれは私のものだ! 貴様にとやかく言われる筋合いはない!」
敵意をむける相手が「誰か」も知らず、それでも怒りを露わに叫ぶ伯爵家当主ヘンリー。この後に何が待ち受けているかなど知る由もない。
「愚かな……」
捕えられているにもかかわらず、あまりにも尊大な態度で噛み付く伯爵家当主ヘンリーを嘲る優美な男。
救いようがないな……と吐息を付く優美な男は、伯爵家当主ヘンリーへと告げる。
「此度は内々の商談の為に他言は無用……そう書かれてはいなかったか?」
ブレイディ王国国王からの案件まで平然と持ち出すあたり、もはや愚かとしか言いようがない。
伯爵家当主ヘンリーに至っても、目の前に佇む身なりの良い男が、まさかこの国の最高位の身分の者とは思わず。
ましてや、ブレイディ王国の国王レナルドが野党紛いに辻馬車を襲い、自らアラナを救いに来るとは考えも及ばず。
優美な男からは、嘲りの笑みが零れる。
「この様な卑しくも愚鈍な者に、私の愛しい人が嬲られ続けてきたかと思えば……私の血は煮えたぎる程に憤っている。大切な花を奪われ、その花が穢され踏み躙られていると云うのに、救い出す事さえ出来なかった苦しみが、おまえなどにわかるはずもない……だからこそ、今の私に出来る事をする」
その言葉が合図となったのか、伯爵家当主ヘンリーの石牢内へと入る二人の執行官。或いは、拷問官とも。
「なっ、何を……やめっ……」
云うが早いか、鉄製の口枷が嵌め込まれ、沈黙を余儀なくされる伯爵家当主ヘンリーは、身に付ける衣装さえも全て剥がされる。
「おまえとて? 嫌がるアラナへと無情にも枷を嵌めたのだ。己れも口枷をされてみるが良い」
僅かな抵抗を試みるも、幾度も顔を殴打され、ついで無理やり石の台座へと横たえられる伯爵家当主ヘンリーは、両手両足を鎖で固定され、身動きさえも封じられる。
「この様な牢獄で国王まで持ち出すとは不敬も甚だしい。国王直々の商談などは、最初からあるはずもない。所詮おまえは愚かな卑怯者。無論、交渉は決裂だ」
「ううっ……! うーうー……ううっ!」
伯爵家当主ヘンリーは、何事かを叫ぼうにも出来るはずがない。
「ーやれ」
優美な男が軽く手を挙げれば、二人の執行官がすぐさま刑の執行へと取りかかる。
もはや石牢から去り行く優美な男は国王レナルド本人。
執行官は、国王レナルドが遠のくのを見計らい口枷を外す。
高貴な国王レナルドの耳に、罪人の不快な音を入れない為の配慮ともするが、口枷が取り除かれた途端、伯爵家当主ヘンリーの叫び声が止む事はない。
恐ろしい拷問刑が執行されている為、石牢内は阿鼻叫喚の凄まじい光景が広がる。伯爵家当主ヘンリーの断末魔の声は、その命が尽きるまで響き渡る。
次第に刑も過酷さを増せば、伯爵家当主ヘンリーは、石牢内にて絶命し果てる。そして、その顔は誰とも身元がわからない程に潰され、無惨な屍を晒したまま元の場所へと戻される。
やがて横転する馬車の傍らには、かつては人間であった者の屍が一つ、通りすがりの者に発見される。
腹が喰い千切られ、腑が喰い荒らされた無惨な屍を見た者達は、「野盗や獣の仕業に違いない……」と口々に言い、その過程に何があったかなどは誰も疑わない。
損壊の激しい屍はすぐに焼かれ、完全に消された伯爵家当主ヘンリー。
ブレイディ王国の国王レナルドの怒りを買い、秘密裏に「報い」を受ける。
* * * * * * * * * *
遡れば。
愚かで自分本位な伯爵にはわかるはずもない。
ブレイディ王国からの商談の話は全てが偽りで、伯爵家当主ヘンリーを誘き出す為の仕組まれた罠。そして、ようやく見つけ出したアラナを保護する為とも。
しかし、今の伯爵家当主ヘンリーには、最早どうでも良い事かもしれない。
死ぬ程の激しい痛みの最中、すでに命は風前の灯。その伯爵家当主ヘンリーは、アラナが味わった苦痛の「報い」を受けている。
先ずは最初に、アラナを穢した肉杭を振り下ろされた鈍器で容赦なく潰される。
「ぎゃあああああっーーー!!」
絶叫の後に悶絶し、口から泡を吹いたまま気絶する伯爵家当主ヘンリーを更なる責苦が襲う。
伯爵家当主ヘンリーの腹には、鉄製の網目状の釜が被せられ、その釜は外側から火で炙られている。
釜の中では、何かが苦しみ蠢き、やがて静かになったかと思えば、気絶していたはずの伯爵家当主ヘンリーが、突如として目を見開き、絶叫を上げる。
「ぎゃぁああああっ! うぐぁああああーーー!」
身体を激しく痙させ、やがて次第に動きを止める伯爵家当主ヘンリー。
そして釜を開ければ、伯爵家当主ヘンリーの腹は喰い破られ、そこから一斉に這い出す血に塗れた数匹の鼠。
惨い刑を課された伯爵家当主ヘンリー。
憤怒に湧く王族の惨忍さを身をもって知る。
雑食な鼠は、炙られた鉄釜の熱さから逃れる為に、伯爵家当主ヘンリーの腹を掘り、腹の中へと逃げ込む。
無垢なアラナを手折り、その胎へと存分に子種を注ぎ犯した伯爵家当主ヘンリーは、皮肉にも、今度は自分の腹を鼠により荒らされ、喰い千切られる。
今こそ「報い」を受けた伯爵家当主ヘンリー。
それでも「報い」を受ける意味さえわからず、死に絶えた伯爵家当主ヘンリーは、やはり歪だ情の持ち主とも。
* * * * * * * * * *
余談だが。
遥か以前。
ブレイディ王国の隣国ともする友好国ブラッド王国。アラナの生国とも。
その先代国王の正妃ともする王妃デラニー。嫉妬心から幼いアラナを人買いへと下げ渡した無情な王妃デラニー。
まさに大元の首謀者。
諸悪の根源ともされる王妃デラニー。
嫡太子レナルドが国王となった暁には、密かに隣国へと暗躍部隊を送り王妃デラニーを捕縛させる。
加えて、ブラッド王国の王位を継いだ側妃腹の王太子カーティスも、高慢で非情な先代王妃デラニーの捕縛を敢えて黙認する。
現ブラッド王国国王カーティスに至っても、義妹アラナを貶めた先代王妃デラニーの仕打ちには憤りしか感じ得ない。
美しい義妹アラナを慈しんでいた王太子カーティス。まだ幼い身にもかかわらず、その義妹を人買いへと下げ渡した非情な先代王妃デラニーを赦せるわけがない。
まさしく双方の想いが一致する。
隣国の王族ゆえに、公な刑の執行は成されないまでも、その後の王妃デラニーの行方は知れない。
それもそのはず。
隣国ブラッド王国の先代国王の王妃デラニーは、枷で拘束されては、足指に生える爪の全てと、歯という歯の全てを抜かれ、血みどろの状態のまま手当てなどはされず、光りの届かない真っ暗闇の石牢の壁の中へと生きたまま閉じ籠められる。
隣国の石牢の中へと生き埋めとされた王妃デラニー。彼女の叫び声は、誰にも届かない。
その後の消息は定かではない。
時の国王レナルドは、王妃となるはずであった愛しいアラナを奪った者は、誰一人として赦しはしない。
例え、それが隣国の王妃であろうとも関係はない。
罪は罪。罰は罰。
裁かれるのは当然の事と心得る。
* * * * * * * * * *
気が付けば。
自らの頬に伝わる冷たい感触と何かが顔を齧るような痛みに目を覚ます伯爵家当主ヘンリー。
ゆっくりと顔を起こせば、一瞬だが視界を横切る物体が、大きな鼠だと知る。どうやら気を失っている間に、薄汚い鼠の群れによって顔を齧られていたせいで、幾つもの噛み跡が出来ては、そこから血が流れている。
先ず、その事に恐怖する伯爵家当主ヘンリー。
不衛生な環境下に蔓延る鼠は、恐ろしい病引き起こす。
「わっ、私の顔が……薄汚いの鼠に……?!」
そっと頬を触れば、どろりと指先に血が滴る。
「いったい私は……此処は何処なんだ……?」
ゆっくりと視界を凝らし、辺りを見回せば薄暗い石牢の中。ーしかも、壁に埋め込まれた鉄製の重い鎖が伸びては、伯爵家当主ヘンリーの両足首に巻かれ、動きを封じている。
窓一つない石牢の入り口には太い鉄格子が嵌まり、およそ逃げ道がない事を物語る。その事に、ようやくあの時に捕えられた事を知る伯爵家当主ヘンリー。
「……どうして私がこのような目に遭う?! それにアラナは……私のアラナは無事なのか! アラナっ……!!」
叫ぶ伯爵家当主ヘンリーの声が石牢の中へと反響する。
「アラナなら無事だ。今は私の寝所にて介抱され、深く眠っている。おまえが心配する必要はない……どうせ此処で潰える命だ。それにおまえ如き虫螻が、高貴なアラナの名を気安く呼ぶな。不敬も甚だしい」
いつの間に現れたのか。
伯爵家当主ヘンリーの目の前、石牢の鉄格子の向こう側には、澄んだ声音に優美な佇まいの長身の男が一人。
伯爵家当主ヘンリーが詰め寄ろうにも、重い足枷が邪魔をするせいで、その男に近付く事すら出来ない。
ただ、不意に見えた男の身に付ける豪華な衣装の裾や上物の履き物が、男が只者ではない事を知らしめている。
「貴様っ……! 私をこの様な目に遭わせておきながら、ただで済むと思っているのか! 私はブレイディ王国の国王からも招待されている身だ。その私をよくも……! 私の美しいアラナを返せ! あれは私のものだ! 貴様にとやかく言われる筋合いはない!」
敵意をむける相手が「誰か」も知らず、それでも怒りを露わに叫ぶ伯爵家当主ヘンリー。この後に何が待ち受けているかなど知る由もない。
「愚かな……」
捕えられているにもかかわらず、あまりにも尊大な態度で噛み付く伯爵家当主ヘンリーを嘲る優美な男。
救いようがないな……と吐息を付く優美な男は、伯爵家当主ヘンリーへと告げる。
「此度は内々の商談の為に他言は無用……そう書かれてはいなかったか?」
ブレイディ王国国王からの案件まで平然と持ち出すあたり、もはや愚かとしか言いようがない。
伯爵家当主ヘンリーに至っても、目の前に佇む身なりの良い男が、まさかこの国の最高位の身分の者とは思わず。
ましてや、ブレイディ王国の国王レナルドが野党紛いに辻馬車を襲い、自らアラナを救いに来るとは考えも及ばず。
優美な男からは、嘲りの笑みが零れる。
「この様な卑しくも愚鈍な者に、私の愛しい人が嬲られ続けてきたかと思えば……私の血は煮えたぎる程に憤っている。大切な花を奪われ、その花が穢され踏み躙られていると云うのに、救い出す事さえ出来なかった苦しみが、おまえなどにわかるはずもない……だからこそ、今の私に出来る事をする」
その言葉が合図となったのか、伯爵家当主ヘンリーの石牢内へと入る二人の執行官。或いは、拷問官とも。
「なっ、何を……やめっ……」
云うが早いか、鉄製の口枷が嵌め込まれ、沈黙を余儀なくされる伯爵家当主ヘンリーは、身に付ける衣装さえも全て剥がされる。
「おまえとて? 嫌がるアラナへと無情にも枷を嵌めたのだ。己れも口枷をされてみるが良い」
僅かな抵抗を試みるも、幾度も顔を殴打され、ついで無理やり石の台座へと横たえられる伯爵家当主ヘンリーは、両手両足を鎖で固定され、身動きさえも封じられる。
「この様な牢獄で国王まで持ち出すとは不敬も甚だしい。国王直々の商談などは、最初からあるはずもない。所詮おまえは愚かな卑怯者。無論、交渉は決裂だ」
「ううっ……! うーうー……ううっ!」
伯爵家当主ヘンリーは、何事かを叫ぼうにも出来るはずがない。
「ーやれ」
優美な男が軽く手を挙げれば、二人の執行官がすぐさま刑の執行へと取りかかる。
もはや石牢から去り行く優美な男は国王レナルド本人。
執行官は、国王レナルドが遠のくのを見計らい口枷を外す。
高貴な国王レナルドの耳に、罪人の不快な音を入れない為の配慮ともするが、口枷が取り除かれた途端、伯爵家当主ヘンリーの叫び声が止む事はない。
恐ろしい拷問刑が執行されている為、石牢内は阿鼻叫喚の凄まじい光景が広がる。伯爵家当主ヘンリーの断末魔の声は、その命が尽きるまで響き渡る。
次第に刑も過酷さを増せば、伯爵家当主ヘンリーは、石牢内にて絶命し果てる。そして、その顔は誰とも身元がわからない程に潰され、無惨な屍を晒したまま元の場所へと戻される。
やがて横転する馬車の傍らには、かつては人間であった者の屍が一つ、通りすがりの者に発見される。
腹が喰い千切られ、腑が喰い荒らされた無惨な屍を見た者達は、「野盗や獣の仕業に違いない……」と口々に言い、その過程に何があったかなどは誰も疑わない。
損壊の激しい屍はすぐに焼かれ、完全に消された伯爵家当主ヘンリー。
ブレイディ王国の国王レナルドの怒りを買い、秘密裏に「報い」を受ける。
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遡れば。
愚かで自分本位な伯爵にはわかるはずもない。
ブレイディ王国からの商談の話は全てが偽りで、伯爵家当主ヘンリーを誘き出す為の仕組まれた罠。そして、ようやく見つけ出したアラナを保護する為とも。
しかし、今の伯爵家当主ヘンリーには、最早どうでも良い事かもしれない。
死ぬ程の激しい痛みの最中、すでに命は風前の灯。その伯爵家当主ヘンリーは、アラナが味わった苦痛の「報い」を受けている。
先ずは最初に、アラナを穢した肉杭を振り下ろされた鈍器で容赦なく潰される。
「ぎゃあああああっーーー!!」
絶叫の後に悶絶し、口から泡を吹いたまま気絶する伯爵家当主ヘンリーを更なる責苦が襲う。
伯爵家当主ヘンリーの腹には、鉄製の網目状の釜が被せられ、その釜は外側から火で炙られている。
釜の中では、何かが苦しみ蠢き、やがて静かになったかと思えば、気絶していたはずの伯爵家当主ヘンリーが、突如として目を見開き、絶叫を上げる。
「ぎゃぁああああっ! うぐぁああああーーー!」
身体を激しく痙させ、やがて次第に動きを止める伯爵家当主ヘンリー。
そして釜を開ければ、伯爵家当主ヘンリーの腹は喰い破られ、そこから一斉に這い出す血に塗れた数匹の鼠。
惨い刑を課された伯爵家当主ヘンリー。
憤怒に湧く王族の惨忍さを身をもって知る。
雑食な鼠は、炙られた鉄釜の熱さから逃れる為に、伯爵家当主ヘンリーの腹を掘り、腹の中へと逃げ込む。
無垢なアラナを手折り、その胎へと存分に子種を注ぎ犯した伯爵家当主ヘンリーは、皮肉にも、今度は自分の腹を鼠により荒らされ、喰い千切られる。
今こそ「報い」を受けた伯爵家当主ヘンリー。
それでも「報い」を受ける意味さえわからず、死に絶えた伯爵家当主ヘンリーは、やはり歪だ情の持ち主とも。
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余談だが。
遥か以前。
ブレイディ王国の隣国ともする友好国ブラッド王国。アラナの生国とも。
その先代国王の正妃ともする王妃デラニー。嫉妬心から幼いアラナを人買いへと下げ渡した無情な王妃デラニー。
まさに大元の首謀者。
諸悪の根源ともされる王妃デラニー。
嫡太子レナルドが国王となった暁には、密かに隣国へと暗躍部隊を送り王妃デラニーを捕縛させる。
加えて、ブラッド王国の王位を継いだ側妃腹の王太子カーティスも、高慢で非情な先代王妃デラニーの捕縛を敢えて黙認する。
現ブラッド王国国王カーティスに至っても、義妹アラナを貶めた先代王妃デラニーの仕打ちには憤りしか感じ得ない。
美しい義妹アラナを慈しんでいた王太子カーティス。まだ幼い身にもかかわらず、その義妹を人買いへと下げ渡した非情な先代王妃デラニーを赦せるわけがない。
まさしく双方の想いが一致する。
隣国の王族ゆえに、公な刑の執行は成されないまでも、その後の王妃デラニーの行方は知れない。
それもそのはず。
隣国ブラッド王国の先代国王の王妃デラニーは、枷で拘束されては、足指に生える爪の全てと、歯という歯の全てを抜かれ、血みどろの状態のまま手当てなどはされず、光りの届かない真っ暗闇の石牢の壁の中へと生きたまま閉じ籠められる。
隣国の石牢の中へと生き埋めとされた王妃デラニー。彼女の叫び声は、誰にも届かない。
その後の消息は定かではない。
時の国王レナルドは、王妃となるはずであった愛しいアラナを奪った者は、誰一人として赦しはしない。
例え、それが隣国の王妃であろうとも関係はない。
罪は罪。罰は罰。
裁かれるのは当然の事と心得る。
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