【R-18】一夜の奇跡は仮面舞踏会から

ゆきむらさり

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本編

〈閑話〉アラナの事情と伯爵家当主の最期・中

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※R描写や一部不快な表現があります。苦手な方はご注意下さい。




* * * * * * * * * *


いつもの如く、美しいアラナを伴い商用へと向かう伯爵家当主ヘンリー。

久しぶりの大口の商談とあって浮き立つ伯爵家当主ヘンリーとは違い、唯一の心の支えである愛娘セレーナと引き離されたアラナの心も足取りも重い。

加えて、長い旅路となるおかげで客亭かくていに泊まりながら、幾つも辻馬車を乗り継ぎ、その商用先へと向かう。

案の定。

相変わらず美しいアラナに執着する伯爵家当主ヘンリー。もはや狂気じみた異常な程の執着は増すばかり。

客亭かくていに泊まる度に、裸体に晒したアラナを縛り上げ、欲情で膨れあがる肉杭にくくいで、アラナの蜜穴をずぶずぶと激しく犯す伯爵家当主ヘンリー。

「私のせいではない。いつまでも女神のように美しいアラナが悪い……そのなまめかしい肢体したいで私を惑わす妖婦アラナ。美しい美しい私のアラナ、おまえは私のものだ。忘れるな! 絶対におまえを離しはしない……!」

アラナを犯す度に、そう告げる伯爵家当主ヘンリーは、最後には「孕め……!」とアラナのはらへと子種混じる白濁汁はくだくじるをどくどくと注ぎ込む。

(あっ……あっ……もう嫌っ……嗚呼っ、レナルド様……!)

涙を流すアラナ。

不意に思い出されたのは、幼い頃に婚姻の約束を交わしたブレイディ王国の嫡太子ちゃくたいしレナルド。

燃えるようなあかい髪に、若葉のように鮮やな緑翠の瞳。

(……伯爵に穢された私には、彼を想う事すら許されない。その価値すらない……それがこれ程に哀しいなんて……)

伯爵家当主ヘンリーに犯されながらも、遠い昔の記憶が今頃になってアラナの頭をかすめたのは、おそらくこれから向かう先がブレイディ王国だからとも。

そのアラナに興奮しては、余計によろこび露わに犯す伯爵家当主ヘンリーの愛情は歪でいる。

馬車で移動する時は決まって手枷をめ、更には叫び声を上げさせない為に、あらかじめ用意した口枷までアラナへとませる周到な伯爵家当主ヘンリー。

すでに打ち込まれている肉杭にくくいの上へとまたがされているアラナは、下穿そたばきさえ取り払われている。

ぎしぎしと揺れる馬車のおかげで、その中で何が行われているのかは一目瞭然。

しかし、御者台に座る御者が、その事にあえて水を差す事はしない。事前に、伯爵家当主ヘンリーから必要以上に代金を支払われている御者には、貴族のたわむれはよくある事と認識する。

まさか美しい夫人アラナが、伯爵家当主ヘンリーに無理やりに犯されているとは思わず、ひたすらに黙認する。


伯爵家当主ヘンリーの歪な情愛は増すばかり。




* * * * * * * * * *


ルーカニア帝国から遥か南方に位置する緑豊かなブレイディ王国。一国の国王ともする者が、今だに王妃を迎えていないと云う。

今回はブレイディ王国からのまさかの商談。

しかも、王家の封蝋ふうろうが押印された封書には、国王が直々に会いたいとの旨が記されているも極秘との事。

国王からの招待ともなれば、いくら内密と云えども粗相は許されない。

いよいよ国境付近に差し掛かる頃になれば、伯爵家当主ヘンリーもアラナを犯す事をさすがに止める。そして自らがアラナの衣装を整え、全ての枷を外そうとしたまさにその時。

けたたましく馬車馬がいななき、急に辻馬車が停車する。

この時、すでに御者はされているも怪我を負わされる事なく、安全な場所へと送り届けられている。

急に辻馬車が停車したせいで、無防備な状態の伯爵家当主ヘンリーとアラナは、勢いあまり椅子から投げ出される。

そのアラナは……と言えば、投げ出された拍子に向かいの台座へと頭をぶつけたのか最早もはや気を失っている。

「アラナっ……!!」

叫ぶ伯爵家当主ヘンリー。

まさにアラナへと手を伸ばそうとしたその瞬間。

突如、辻馬車の扉が開け放たれる。

「……っ!!」

まさかの突然の出来事に、驚愕する伯爵家当主ヘンリー。

叫び声を上げようとしたその矢先、全身を黒い装束に覆われた男が現れ、手に持つつるぎつかで伯爵家当主ヘンリーの後頭部を容赦なく打てば、すぐさま気絶する。

更に蹴り上げる黒装束の男。

次には、その視線は気を失うアラナへと向けられる。

そっと抱き上げる黒装束の男は、アラナの存在を認めれば、今度はしかと抱き締め、「アラナ……」と思わず涙を零す。

大切に大切に胸へと抱きかかえ、辻馬車の外へと出れば、迎えに現れた瀟洒しょうしゃな馬車へと乗り込む。

いとしいアラナ……やっとこの手に……お帰り、いとしいアラナ……」

甘く優しく囁き、その柔らかな額へと口付けを落とす。


もうアラナを穢す者はいない。



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